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プロローグ【世界の敵対者の胎動】

ロボット兵器×テロリストものです

2010年前後に流行ったけど何故か後には続かなかった世界のために戦う系を今のニーズや社会問題に合わせてリテイクしてみた感じです


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

「……こちら、デモンズ・シャイターン。目標地点の上空まで到達。ステルス状態を維持しつつ作戦開始タイミングまで待機行動に入る」


 西暦2222年、世界にある5大勢力のうちの1つ、アメリカ大陸を中心とした自由思想主義の連合勢力「インディア」のレトロヨーク州と呼ばれる都市の軍事演習場では人類という種の歴史を分岐させる研究発表が開始されていた。


 その研究成果は、脳に電子情報を直接インストールすることであらゆる部門への学習時間をほぼ0にするサイボーグ技術がついに実現するというものだった。

 演習場では学も教養もなさそうなインディアの貧困層の子供から大人までが並んでおり、彼らの後頭部には電子情報カードをインストールするための接続装置が取り付けられていた。

 発表が始まり彼らは個々に情報をインストールされる。

 それにより、まるでプロが奏でるような音楽、相当の修練を積まなければならない芸術や工芸技能を披露する。


「手術さえ受ければ誰でも技能や知識がすぐに手に入る、か。ミコノ、これを素晴らしいことだと思うかい?」


 演習場の客席には招待された各国の著名人や軍事企業の関係者が座っている。

 その中で東洋人の身なりのいい中年男性・カンナギ・ソウイチが娘に対してそう質問した。


「いいえ、むしろ人が努力をしなくなる悪いシステムだと思います」


「努力をしてこそ得られる資格がある。それをないがしろにしてしまっては意味がないか」


「はい、お父様だってそれは分かっていますよね?」


「ああ、けれど世の中誰でも十分な教育を受けられる時間があるわけじゃない。貧乏だと子供の時から朝から晩まで働いて寝ての繰り返しなんてよくあることだし、生まれながら知能障害がある子供はそもそも時間があっても覚えが悪い。そういう弱者たちにとってみたらこのシステムはまさに輝いて見えるだろうね」


「だからって認めろというのですか?」


「違うよ、弱者ビジネスとしては強いということだ。2200年を超えた今もなお人類の平均知性はとても低い。その水準を強制的にMAXまで上げられるならどの国も欲しがるだろう。ただそれはシステムの安全性が確立されている場合においてだ」


 一般的な披露が終わり、会場には2体の戦闘ロボットが用意される。

 この世界では信仰機(フェイスギア)と呼ばれる人型の戦闘兵器が軍事的な主力となっている。

 その名の通り、信仰の象徴を模した機体であり、デザインは国や勢力によって異なる。

 自由主義のインディアではスーパーヒーローをネタとしたアイアンズと呼ばれる青と赤のツインカラーで塗装されたスマートな人型機体が量産されており、今回用意された2機もそれにあたる。

 機体に乗るのは先ほどと同じ手術を受けた貧困層の大人たち。

 彼らは機体を起動させてから戦闘を始める。

 その戦いはまるで数年は練度を積んだプロのパイロット同士ともいえるほど模範的なものであり、決して素人がマネできるものではない。


「前座の方も大概ではあったけどこっちはもっととんでもない。軍拡傾向にある情勢において兵士の平均技量はそれこそ大事とされている。ミコノ、彼らに勝てるかい?」


「勝てます。動きは確かに模範的で隙がない。けれどそこに意思や熱意を感じない。だったらいくらでも隙は生み出せます。けれどそれは1対1の話……」


「そう、彼らが大多数となったらどこも誰も勝てないよ。戦争は質も数も両方大事だ」


 模擬戦闘が終了すると次は、招待した各国のパイロットとの模擬戦闘がさらに始まる。

 用意された各国のパイロットは流石にエース級であるため負けることはないがそれでも苦戦する模擬戦闘が何回も繰り返されていく。


「……シン共和国の最新竜人機体シェンロン、ロマリエ帝国の名機体パラディン、どちらもいい勝ち方じゃないな。このままではブレインサイボーグ化への顧客が殺到してしまう」


 ソウイチは煽るようにそう言うとミコノは立ち上がって覚悟を決めた顔を見せる。


「させません、そんなこと」


「ああ、頼んだよ。この圧倒的な状況を新機体アマテラスのお披露目に変えてしまってくれ」


「はい」


 彼女がそういい返事を返した直後、上空から未知の機体が突如として舞い降りる。

 それは信仰するには相応しくない禍々しい悪魔のデザインをしていた。


「おい、あれはどこの所属だ」


「次はニュートラリス勢力のジパングの機体のはずだがあんなデザインじゃ絶対ない」


 会場中が騒ぎ始める中、デモンズ・シャイターンのパイロットは行動を開始する。


「ライズ・サマナール、これより目標を破壊ししばらく注意を引き付ける」


 シャイターンは両腕に装備中のナックルガードから光の波動を発生させつつ、アイアンズを殴りつけようとする。

 単純な直線移動のリーチの短い攻撃だ。

 アイアンズは右にそれるように回避運動を取る。

 しかしナックルガードから発生した光の波動エネルギーは空振りしてもそのまま大気を伝ってアイアンズへと届き、当たった際に特殊な音を辺りに響かせる。

 音が鳴りやむとアイアンズは膝をついて緊急停止状態となったのだった。


「な、なんだあの機体は?」


 会場のだれもが驚かされることとなる。

 同時として沈黙が流れるが、それをライズは自らの声で打ち破る。


『組織名はドーンデモンズ、そしてこの機体はデモンズ・シャイターン』


「若い男の声」


『飛び入り参加だ。ブレインサイボーグ技術、この程度か?』


 言葉の通りに取るなら挑発行為ということだ。

 それに激怒した研究者やインディアの出資者たちは軍より借りていたアイアンズすべてを出撃させてシャイターンを掃討しようとする。

 模擬戦ということで今まではペイント弾であったが、今アイアンズが装備しているライフルには侵入者撃退用の実弾が込められている。

 会場に出撃したアイアンズはシャイターンを囲み一斉射撃を開始する。

 しかしシャイターンは光の防御フィールドを展開しそれらをすべて弾いた。


「高出力のエネルギーフィールド!? 我がカンナギ財閥でもまだ研究段階だというのに」


「お父様、私出ます」


「まて、あの悪魔機体は明らかに1世代以上先だ」


「それでも行きます。確かにあいつがこのままアイアンズを全滅させればこの研究発表で生まれる顧客は減り信用も堕ちます。でもそれは本来私がやるはずだった。役目を奪ってくれた落とし前は付けなきゃ。それに……」


「戦いたいか?」


「はい」


「分かった、だが危険だと判断したらすぐに撤退だ。いいな?」


「分かっています」


 数分後、アイアンズは機能停止という形で全滅していた。

 確かにシャイターンの機体性能は高い。しかし複数に囲まれても問題なく対処できるパイロットの技量も明らかに突出していたのもこれで判明することとなった。


「破壊終了、これ以上は正規軍に包囲される危険性がある。離脱……!」


 そこでミコノが搭乗するジパング製造の新機体アマテラスが薙刀を振るって襲い掛かる。

 アマテラスは女性的な曲線的フォルムと背中の丸いOリングが特徴的で、その名の通り女神のような美しさを兼ね備えている。


「ジパング製機体! 該当データなし、新型か」


『どうも、乱入者さん。あなたの行いを別に咎める気はないわ。あなたがやらなきゃ私がやるつもりだったし』


『若い女の声。ならば問題ないだろう、何故刃を向ける?』


『勝手に人の出番を奪うな。それだけよ』


 薙刀の間合いを考えれば懐に潜り込むのがセオリーだ。

 シャイターンはナックルガードで振り下ろされた薙刀を弾くと同時に急接近して光の波動を直撃させようとする。

 しかしそれを読んだようにアマテラスもこちらに接近し、左拳で先に殴られることとなった。


「なっ!」


「我が娘ながら無茶苦茶だな。リーチが短く接近戦にしたくない相手に接近戦で打ち勝つとは」


「どうよ?」


「この女、シャイターンの武装特性を既に理解している」


 このまま戦うべきかどうか迷っていたところで、ブレインサイボーグを行っている研究所が上空からの極太ビーム攻撃で崩壊した知らせが入る。

 そのビーム攻撃を放ったのはデモンズ・マーラ

 短い手足と股間部分にビームバズーカ砲を装備した下品な悪魔機体だ。


『ライズ、俺だ。良く時間を稼いでくれたな。おかげで被害者をできるだけ出さずに研究所を破壊することに成功した。戻っていいぞ』


「グレイブ、了解。これより帰投する」


 シャイターンは上空へと飛翔しつつ光の屈折を利用した迷彩システムを起動させて透明になる。


『待て!』


「追わなくていいミコノ、研究所まで破壊されたとなればこれは明らかなテロ行為と認定される。それに我々が関わることは国際問題に発展しかねない」


「しかしお父様……くっ、わかりました」


        ◆


 ブレインサイボーグ研究発表に対するテロ事件から3日後。

 カンナギ・ミコノは信仰機パイロットを育成する専門の高等スクールに通っており、そのHR前の早朝のクラス内では彼女が未知の悪魔機体を撃退したことで称賛されているところであった。


「流石ミコノ嬢、各国エースがビビってる中で特攻決めて勝つなんてすげーよ」


「ねー、ミコノちゃんはこの学校の誇りだよ」


「もっと私を誉めなさい」


「はは、そうやって調子に乗る。いやーこれじゃ俺たち男子は肩身狭いわ」


「もっとおしとやかにおねがいしますよ~」


「あんたら~!」


 ミコノが煽った男子たちを追い回しているといつもより教師が早く来る。


「お前らバカやってないで席に着け。今日は留学生の紹介がある」

 

「初めまして、ライズ・サマナール。ロマリエ帝国から来ました」


 そう、彼はデモンズ・シャイターンのパイロットだ。


「カンナギ、もてはやされて調子に乗るのも分かるが委員長として彼の面倒頼むぞ」


「お任せください。よろしくね、ライズ」


「……ああ、よろしく」


心に残る話があれば感想で教えていただけると助かります

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