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計算すべき距離3 side颯真

最初は宙良や舞香の斜め後ろに立って、相槌を打つ程度だったが、だんだんと僕自身に向けた質問が飛んでくるようになり、対応せざるを得なくなった。その間に宙良たちとははぐれてしまう。たくさんの人と話すのは想像以上に体力も気力も使う。


ついにギブアップし、会話が途切れた一瞬の隙にトイレに行くとの名目でやっと会場から抜け出せた。正直このまま帰ってしまいたい。


戻るか否かの葛藤をしていると、会場とは逆方向から舞香がやってきた。


「こんなとこで何してんの?」


「いや、ちょっと限界で。舞香こそどうしたの」


「化粧直しよ、てか、レディーに向かってそういうこと聞かないでよね!」


「あ、えっと、ごめん」


女性、殊に舞香は難しい。まあ、僕もデリカシーがないのかもしれないけど。


「ま、いいわ、颯真だし。どうせ帰ろうとでもしてたんでしょ。せっかくだからちょっと付き合って」


お見通しだったようだ。

舞香は有無を言わさず僕を連れ立って、少し離れた自動販売機コーナーに向かう。

相変わらず舞香は舞香だなと思う。昔から、強引だ。



自動販売機の前には長椅子が置かれていた。そこに並んで座る。自動販売機は近づくと液晶画面をカラフルに点灯させ、その存在を主張する。



舞香はしばらく無言だった。何か話があるからここに連れてきたのだと思ったのに、一体なんなんだろう。

しびれを切らしてこちらから用件を聞こうとしかけたその時、ようやく舞香が口を開いた。


「何で…、何で結婚したの」


普段のハキハキとした話し方からはかけ離れた、ひどく弱々しい声だった。


「何でって、そういう決まりでしょう?」


質問の意図はよくわからないが、僕はとりあえず答える。


「ていうか、知っての通り、結婚の話は陽平さんが持ってきて…」


「知らない!」


「え?」


「知らなかったの!颯真が結婚してから、やっと知らされたの!」


舞香はこちらに鋭い視線を向けて、叫ぶように言う。


「知ってたら、知ってたら私は!

颯真にとって、私は所詮その程度だったの?」


そうだったのか。てっきり知っていると思い込んでいた。いや、というよりは自分のことで手一杯で気にしていなかったというのが正しい。

舞香とは同じ家で育って、学園でも接点も多かった、1番近しい存在であることは確かだ。それなのに、結婚報告を全くしなかったのは、さすがに失礼なことをしてしまったと思う。怒るのも無理はないかもしれない。

とにかく謝らなければ。


「ええと、ごめん、知ってるものだと思って…」


舞香は俯いたまま何も言わなくなった。どうしよう。


「ほんとごめん……。舞香?」


「…き…ったのに」


「え?」


下を向いたまま絞り出すような声はよく聞こえず、もう一度聞き返そうとして舞香の顔をのぞき込もうとすると、舞香は顔をあげた。至近距離で視線が交わる。

舞香は、こちらをまっすぐ見て、睨みつけるような、それでいて泣きそうな表情をしていた。



「好きだったの、ずっとずっと。私は、颯真、あなたのことが好きだったのよ!」

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