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計算すべき距離2 side 颯真

学会のスタイルはさまざまだが、対面で行うものはそう多くはなく、ここで認められるか否かは研究者にとって大きな意味を持つ。

スクリーンを活用しつつ、持ち時間の中でいかに自分たちの研究の有用性を感じさせられるか、それによって得られる支援に差がある。聴衆にはライバルともなりうる研究者ももちろんいるが、意識すべきはかつて優れた研究を成し遂げた者として現在はネモフィラの中枢機関に所属し、ネモフィラの研究者たちを統べる人たちだ。その人たちに気に入ってもらえれば研究を進めていく上で充分な援助が受けられるし、中枢機関で働くことも夢じゃない。

僕は研究さえできれば権力には一切興味はなかったが、舞香などはそれも狙っているようなことは学生時代から公言していた。その頃は、随分な野心家だとしか思っていなかったが、現在の彼女の実力であれば、近い未来、現実となっていそうである。何事にも貪欲な人はその思いで何事も成し遂げる力があるのだろう。それほどの情熱を抱けることは一種の才能なのかもしれない。

自分にはもうそんな熱は残っていないと思っていたが、今回の研究にはかつてないほど打ち込めた。目標があるということは人にとってとても大事なことのようだ。



無事発表を終えた僕たちは、確かな手応えを感じていた。それぞれいろんな思いを抱えて始まった共同研究。ここで終わりじゃない。これからがむしろ本番。そう分かってはいるが、一段落したのも事実だ。

なかなか良い感触を得られたことに改めてほっとしていると、


「何、終わった感出してんの、颯。これから、ジイさんどもにダメ押しで売り込みに行かなきゃでしょ」


「そうそう、ついでに顔と名前もしっかりと覚えて帰ってもらわないとね、今後のためにも!」


「いや、舞香は十分有名だから知られてるでしょ。それに、そういうのは知ってのとおり僕と八雲は専門外だよ」


僕は、やる気満々な舞香と宙良から逃げるように後退る。隣の八雲も僕の言葉に大きく首を縦に振っている。


学会の後には、懇親会のようなものがある。飲み物片手にいろんな研究者と自由に話せる貴重な機会だ。もっとも、社交性が欠如している者も多いため、早々に帰る者もいる。僕と八雲も残念ながら社交性はほとんど持ち合わせていないため、帰るつもりだった。


「俺は、筋肉との対話があるから失礼する」


「いや待って待って、今は人との対話の方が大事よ?」


「そうよ、てか、人はみんな筋肉でできてるんだから、問題ないじゃない。行くわよ」


舞香と宙良は、謎の理由をつけて帰ろうとした八雲の行く手を阻み、普段何かにつけて言い争っている間柄とは思えないほど息ぴったりの連携で華麗に八雲を引き連れて談笑する人たちの輪に入っていった。

こうなれば僕もついて行かざるを得ない。

これは帰るのが更に遅くなりそうだが、仕方ない。家に帰ればいつでも亜実さんとは話せる。そう思い直し、僕は重たい足取りで、3人を追った。


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