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空中都市・ネモフィラ(2)

空中都市・ネモフィラ。

それは、科学技術を駆使して宙に浮かぶ人工都市だ。そこでは日々、新しい技術を生み出すための研究がなされている。


そして、そのための人材を育成する機関、ネモフィラ学園。

義務教育課程で一定程度の能力があると判断された子どもは、13歳になると強制的に入学することになる。

それから5年かけて研究者としての素質を磨く。クラスは成績が良い順からS、A、B、C、Dの5つに分かれる。卒業後は最低でも10年間、つまりは28歳までは都市で働かなければならない決まりである。

これは、ネモフィラ学園が未来の研究者を育成する特別な教育機関として、その費用がほとんど公金でまかなわれているため、卒業後に労働で還元するという仕組みらしい。


正直、私のような万年Dクラスの者からすると、ありがた迷惑な話だ。研究者として一人立ちできるほどの実力のない者にとっての10年間というのは軽く地獄である。

Cクラスの一部や、Dクラスの大半の人たちにできることといえば、研究者たちの助手など、しかもほぼ雑用係であり、さらに短期雇用ばかり。とにかく生活が安定しない。


私も卒業から2年間、いろんな研究室や都市の運営などを担うさまざまな機関をたらい回しにされていた。

毎日が新しい職場、毎日が変化の連続な日々だ。変わり映えのない毎日で嫌になっちゃう!とか、たまには日々に刺激が欲しい!とか言う人もいるけど、その状態を続けられているのって案外すごいことですよって言ってあげたい。刺激なんて足ツボに与えるくらいでちょうどいいですよ。


短期の助手の仕事が終わりそうで、また新しい仕事探さなくちゃ、などと思っていたある日、両親に呼び出された。

「お前に縁談がある」

「え、縁談……?」

「ええんだんではなく、縁談だ」

久しぶりに訪れた実家で、リビングのソファに腰掛けた途端、父からいきなり爆弾発言が投下された。

ええと?久しぶりに会ったんだし、最初は近況報告とか、世間話とか、そういうのないの…?ていうか、ええんだんってなんだよ!言ってないわ!いや、一応言ったのか?ちゃんと単語としては聞き取れましたよ!意味はまったくわからないが。縁談?えんだん?エンダン?エーン、ダーン…?


混乱の渦中にいる娘の様子に気づいているのかいないのか、父は勝手に話を先に進めた。昔からそうだ。頭の中は常に研究のことばかり。人間の心の機微なんてまるでお構いなし。


まあ、それはさておき、父の話によると、父の昔からの友人が、成人まで後見人をしていた人の結婚相手を探しているらしい。父、友人なんていたんだ…。

その後見していた人は、来栖颯真といい、今年27歳になるそうだ。ネモフィラでは、優秀な遺伝子を後世に残すため、30歳になるまでに結婚しなければ、都市が勝手にマッチングして結婚をさせるという恐ろしくお節介なシステムがある。まあ、それくらいしないと父のような研究バカたちは一生を研究に注いでしまうでしょうからね。

来栖颯真という人は大変優秀で、周りの人たちが放っておかないらしく、勝手にマッチングされるくらいならうちの娘と、などと縁談が殺到しており、非常にうっとうしく、迷惑しているそうだ。わからなくもないけど、素直すぎない?


父の友人は、彼の平穏のため、ギラギラした大人たちとは無縁な人と結婚させてあげたいと思い、父に相談をしてきたらしい。


「それであなたがいることを思い出したの」

それまで黙って父の隣に座っていた母も説明に加わってきた。

……。母の中で、娘はわざわざ思い出さなければならない存在なんですか?さすがに薄情というものではありませんか、お母さん。

「あなたもそろそろ20代だと思って、結婚にはいい歳でしょ」

アバウトに言って誤魔化してますね、今年21歳ですよ、あなたの娘は。

「悪い話じゃないと思うわよ。ほんとは必要ないらしいんだけど、結婚すれば颯真くんの助手扱いにしてくれるそうよ。どうせ、あなた仕事長続きしなくて困ってるんでしょ」

なんと、一言余計だが、確かにそれは魅力的だ。


短期雇用をまた見つけるか、結婚か。


私が悩んでいると、父は、

「時間だ。そろそろ研究室に戻る。返事は3日以内にしてくれ」

と言ってリビングを出て行ってしまった。

相変わらずせっかちで研究に魂持ってかれてるような人だな。


そして、私は結局、結婚を選んで、今に至る。

選んでしまったからには仕方がない!

とにかく、1日の始まりは朝ごはん!

白湯を飲み終えた私は、朝食を作るために、キッチンに向かった。何か使えるものがあるか、キッチンを物色するとしよう。


しかし、この時の私は人間inロボットな夫をなめていた。

手始めに冷蔵庫を開けると、

「え、なに、これ……」

そこには信じがたい光景が広がっていた。

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