時は流れて
「そっかー、亜実ちゃんもマイのアプリのユーザーだったか〜」
「はい、外出のときとか、あと、祖母の家が地上にあるので帰省のときとかはめちゃくちゃお世話になってますね」
そうなんだ!などと、私の話に相槌を打っていた宙良さんだが、突然「わっ!」大声を上げる。
何事かと思ったら、八雲さんが先ほどのようにいきなりぬっと現れた。
「帰る」
「もう、くもっちいつのまにか背後にいるのやめてよぉー!でもそうだね、そろそろ俺も帰ろうかなあ。じゃ、また明日っ、亜実ちゃん、颯!」
「お気をつけて」
舞香さんは話し足りなさそうにしていたが、宙良さんに促されて、3人で連れ立って出て行った。
ちなみに、その日から私は舞香さんの服装を意識的に見るようになった。
さすが、コーディネートを提案するアプリの開発者といった着こなしを毎日している。むしろ、これが崩れるって一体どんな服装になっていくのだろう。悪趣味かもしれないが、興味がある。
宙良さんも舞香さんに引けを取らないくらい、自分をよく見せる方法を熟知した着こなしだ。
その2人にいろいろ言われていたが、颯真さんと八雲さんも元が良いので、シンプルな服装でも決して悪くはない。素材がいいだけに無頓着さが勿体ない気はするが。
まだ余裕がある方だとはいえ、4人とも長時間研究に没頭していて大変そうだ。体調を崩さないか心配になる。
私は、栄養価の高い物を美味しく食べてもらえるように、工夫をすることにした。
手軽にワンハンドで食べられるおにぎりやサンドイッチは、具材を変えつつよく出しているが、ほかのレパートリーも欲しい。
そこで、「これでみんなの心はあなたの手中に!魔法のように一瞬で胃袋に納まる99のレシピ」という本を購入して片っ端から作っては、みんなの反応を見て、試行錯誤してみた。
そうこうしているうちに、徐々に研究が進み、余裕がなくなってきたようだ。朝方帰っては昼前にはまた来たりというのはまだかわいい方で、2、3日徹夜してから寝に帰ったりと、大変規則正しくない生活になっていった。
舞香さんは、ばっちりフルメイクがポイントメイクになり、最近は辛うじて眉が整っているくらいで、服装はセットアップの服を同じサイクルで着回している。
宙良さんは、綺麗にセットされていた髪は寝癖が直っていれば良い方で、服装もTシャツにズボンといったシンプルなものになり、颯真さんや八雲さんもと大差なくなっていた。
八雲さんは、普段は家に帰ってやっていたらしい筋トレをついには研究室でやり始めた。壁倒立や片手の腕立て伏せなどは日常茶飯事で、よく見るとその最中に目をつぶっており、どうやら睡眠と筋トレを並行しているようだ。
颯真さんはというと、基本的には研究室に籠りきりで、外出といえば、思い出したように不定期にお風呂(人間洗浄機)には入っているくらいのようだ。
先日も、私がお風呂に入ろうとしたら、バスルームから音がしていたので、颯真さんが使用中なのだろうと思い、自室に引き返した。
しばらく時間を潰してから再度バスルームに向かうと、途中の廊下に壁にもたれかかっている何者かがいた。というのも、その人物は壁に体の正面を向けており、顔がよく見えず、瞬時に誰なのかわからない状態だったのだ。
だが、背格好や横顔を観察するに、それは颯真さんらしかった。
「颯真さん⁈」
なんだか様子がおかしい。私は心配になり、私は壁にキスでもするかのように顔をめり込ませている颯真さんに駆け寄った。
「だ、大丈夫ですか、颯真さん?ちょっ、颯真さんっ!」




