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初心者

なんとか時間に間に合い、乗った遊覧船は語彙力がうっかり喪失するほど楽しかった。

出航後は自由に船内を歩き回れるとのことだったので、デッキに出た。

船のスピードと相まって、潮風は少し強いくらいだったが、水飛沫の混ざった風は、競歩で体温の上昇した体にはとても気持ちよく、太陽を反射して光る水面は、海の青さと黄金にきらめく日光で眩しいくらいで、とてもきれいだった。

私も颯真さんも乗っている間は目の前の景色に夢中でほぼ無言になってしまったが、存分に五感で海を堪能できた。



その後、下船した私たちは、温泉宿に戻った。

仲居さんに案内されて部屋に入ると、これまた海が一望できる窓があった。今日は空だの海だの青いものをよく見る。もっとも、ネモフィラでの生活ではあまり目にしない色彩なため、今のところ何度見ても飽きる気は全くしない。


夕食までは時間があるし、せっかくなので周りの景色が見られる明るいうちに一度温泉に入っておこうという話になった。ちなみに温泉は大浴場だ。

ネモフィラでは基本的にバスルームに入ると全自動で頭から体まですべて機械が勝手に洗ってくれる。もちろん湯船に浸かるといった概念はない。


私は祖母の家ではお風呂に入っているから慣れているが、人間洗濯機以外を経験したことのない颯真さんにはいきなり大浴場はハードルが高いのではないだろうか。そう思った私は、宿の予約をする段階で、


「颯真さん、大浴場じゃなくても、露天風呂がお部屋についているタイプとかもあるみたいですよ」


と、やんわり進言した。


「へえ、いろいろあるんですね。でも、今回は初めてですから王道に大浴場を体験してみたいと思っていたので、それは次の機会にでも」


……。どうやら果敢に挑戦するつもりらしい。


「颯真さんがそれで大丈夫なら、」


「?」



かくして私たちは、少し広めで海を一望できる、露天風呂なしの部屋に泊まることになった。

支度ができ次第、宿の最上階にある大浴場へ向かおうということで、それぞれタオルや衣類、貴重品など、必要なものを巾着に詰め始めた。

一般的に女性の方がこういう準備は手間取る。案の定、先に準備を終えた颯真さんは、窓際にあるソファーに座って待っていてくれた。


「すみません、お待たせしてしまって」


私が声をかけると、颯真さんは手にしていたタブレットから顔をあげる。


「いえ、いいんですよ。ではいきましょうか」


「何か見ている途中でしたか?」


「お気になさらず、ただの予習ですから」


予習?何の?

不思議そうな顔をしてしまっていたのか、颯真さんはタブレットの画面を私に見せてきた。


温泉の極意〜1000の掟〜

ーこれさえ守ればキミも今日から温泉マスターの仲間入りさっ!ー


……。なんだこの書籍。

確かに温泉に入るときは、かけ湯をするとか桶や椅子は使用後は元あった場所に洗って返すとか、マナーはいろいろある。

けど、1000ってさすがにちょっと多くない?“これさえ”って量じゃない。ていうか、温泉マスターってなに…。


「とても、さ、参考になりそうな本ですね、、?」


「ええ、これで安心して温泉に入れます」


どうやら颯真さんはあの書籍に全幅の信頼を寄せているらしい。

まあ、仮にも書籍化されているものだ。明らかな嘘などは書いていないはずだ。それに、掟が1000個も書いてあれば大抵のマナーは抑えられるはず。たとえ若干細かすぎたとしても。



「では、ここで」


「はい、また後で」


少し心配だったが、まさか男湯までついて行って旅行先で捕まるわけにもいかないので、待ち合わせ場所を決め、私は颯真さんと別れて女湯に向かった。


1週間ほど、とか言っておいて、気づけば3週間も経ってしまいました。

お待たせしてしまい、本当に申し訳ないです。

しばらくは不定期になってしまうかもしれませんが、これからも投稿は続けていくので、気長にお付き合いいただけたら嬉しいです。

よろしくお願いします!

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