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3話「何も知らない僕ら──ネットカフェで密会③」

3話「何も知らない僕ら──ネットカフェで密会③」


 マチコは「そうだそうだ」と何かを思い出して今日履いてきたパンツの尻ポケットからメモ帳を取り出して、


「私も本の内容をメモしてきたんだ。人間の記憶力ってかなり曖昧で面白かったアニメも登場キャラの名前とかシーンの順番とか覚えてないよね? 視聴者はそこまで考えてアニメを見ないんだけどどこがどう良かったかとか話せないと人と会話するとき「すごく良かったよ」としか伝えられないし現代人は説明する能力がガバガバ過ぎる気がするからメモは大事だよね。


 本を読んだ労力に対して何となく覚えていることしか発言できないのはあんまり賢くないよね。真似したわけではないんだけど人間の記憶力ってお昼に何を食べたか思い出せないくらいにゆるゆるなような気がして私も10頁置きに内容をメモしたんだ♡私の読んだ本は経済学の本だよ☆」


 と言ってマチコはメモを広げると語り出した。


「〈サンクコスト効果〉って知ってる。回収できないコストにかけるお金──例えば隔週で刊行される分冊百科の本を始めて刊行された週から購入していたら刊行の終わる週まで買いそろえたくなる気持ちになるよね?


 人間はお金をつぎ込むと元を取れるまでそれにお金をかけ続けるんだって。パチンコとかもサンクコスト効果を狙った賭博商品で一回味を知っちゃうとやめられなくなる習性を利用しているんだ。元を取りたい──って思っているまるで男みたいな性格をした人間って簡単に○○中毒になってしまうだろうからこう言う商品に引っかかる人間は男女の区別なく男みたいな性格をしていることになるよね。


 LGBTQが騒がれるようになって私たちって気付いてないけど女の中にも男のように元を取りたい復讐者のような強烈なエゴを持った性格の人間が今主流になりつつあってそれって言ってみれば情緒の不安定な人間がとても多く世界規模で活動を始めたことになるよね。


 百合や同性愛って言ってみれば現状を不快に思う若者がとても多くなってきたことの証だから今騒がれている「多様性」の根本にあるものって物凄く深く強い人間嫌いが原動力になっている──と推理することも出来るよね。


 私たちはお互いを信頼すべきだけどお互いに傷つけられすぎて情緒がバラバラになっているんだね。良識のある人間って言うのは一種の幻想でアリストテレスの言う中庸の精神=対話によって開かれた共同体ってビックリするほど現実ではあり得ないんだよね。某探偵漫画がブームになっていたのはありえないくらいに当時の子供達も世の中の空気感が大嫌いでその先にある限界点(=○人)について見てみたい気持ちが原動力となっていた──ということになるのかな?


 世の中って考えてみると凄く歪んでるし昏いね。実際のところ漫画の主人公みたいに心地よく明るく元気と良識を持って生きている人間っていなくて本当はドストエフスキーの小説の主人公みたいなヤバくて暗い固定観念に支配された危険人物しか今この世にはいないのかも? 歪んだ認知を持った若者が四五十代になるころのrealって想像してみると怖いね。魔女狩りみたいなジェノサイドも起こりえないかも?


 貸した1万円が金利がついて1万千円になって帰ってくるのは、返してもらうことを待っているからと言う理由と、もしかしたらお金は帰ってこないと思うからと言う二つの理由からそう言う制約がついたんだって。この金利の考え方は「ロビンソン漂流記」の記述の中にも残っていて、何かマルクスもマックス・ヴェーバーもこの物語を高く評価してるんだって。ロビンソン漂流記の主人公のロビンソンはプロテスタントだったそうだよ。


 プロテスタントはルターの始めた宗教改革だけどルターの享年って1546年でロビンソン漂流記の初版が1719年なんだ。マックス・ヴェーバーは主人公の合理的な精神をプロテスタントに由来していると評価しているけどマックス・ヴェーバーの享年が1920年でマルクスは1883年に逝ってるんだ。何か時代の意識ってあると思うんだけどルターとこれらはプロテスタントつながりで統一された時代の精神を持っていることになるよね。


 何か過去の偉人の生年月日や歴史的な惨事のあった日にちってつながりがあったと思うし何かホロスコープで調べてみるとその当時の人間の思考態度とか分かって面白いかも。社会的な課題や問題意識を背負って人間が生まれてくることを思うと北欧神話のジークフリートと同じ構図が歴史の中で繰り返されているんだよね。


 ちょっと横道をそれたように感じるかも知れないけどホロスコープを調べることも社会とお金、経済システムを考えるときにも必要な概念ではあるのかも知れない。ケンゴはどう思った?」


 と言ってマチコはメモ帳を閉じた。ケンゴは右手を頬に当ててフーン……と息を漏らして言った。


「サンクコスト効果と元を取りたい男のような人間の増加……ってつながりがあるのかも知れないね。何か見ていると現代の女の子ってジャージ着て生活したり化粧っ気が薄かったりとかあって男見たいかも。ゴーストシティーとか過疎化の村とかは共同体での心から満たされた体験がなかったことに由来するから今世界規模でLGBTQが騒がれてるのは同じ構図だね。

 女の子が元を取るために百合=Lに走る気持ちも分からなくはないけど、男も女も社会も目指すべき方向性のない現代は怖い時代だよね。出生率増加の見込めない現実からは再生医療や義体化によって不老不死を目指すしか社会問題を解決する道筋はないのかも? あーでもないこーでもないって言ってなあなあで政府も国民も動かなかったら若者も高齢者も気付いたときには認知症のゾンビになってましたって洒落にならないオチがついてきそうだよね。


 推理漫画の根底には江戸川乱歩の社会や現実に対する強烈な絶望感のミームを気付いていなかったけど当時も現代も小学生や中高生は感じ続けていたんだろうね。人生のドロップアウトの究極奥義が○人であることは季節を巡る偏西風のようにずーっと変わらないんだし現代は仏敵である鬼や人外に遭いやすい怖い時代だね。ガチで怖ぇえな……。


 金利のつく話がロビンソン漂流記に由来していたって言う話は聞いたことがなかったな。お金が返ってくるのを待っているのと戻ってくるかどうか分からないことから銀行や株式債券や消費者金融で利子や利息が付いてくるんだね。お金と社会主義の目指す理想の共同体にまつわる問題意識がルターのいた16世紀から21世紀まで続いているよね。


 現代はソ連が崩壊したことで高所得者の階級に対する税金がガバガバになっているそうでタックスヘイブンとか株式証券の横行とか国力はどんどん減っていくから一般市民が社会に対してNo! を突きつけないとおかしいよね。娯楽に行き過ぎた社会を教育や社会保障に戻して不穏な動きをする国家には弁護団が国際法で目を光らせないと際限なく社会は戦争を続けないといけなくなる……。


 考えてみるとお金持ってる人とか権力者の方が一般市民よりも厳しめに法で規制しないと共同体で良い体験の出来なかった若者が認知や同性愛や精神疾患で国を支える労働者にさえなれなくなる──って芥川や太宰の頃から延々と続く地獄絵図だよね。時代は今働く気の感じられない若者の増加を加えて明治や大正時代のリバイバルである共同体における疎外感の勃興によるLGBTQの性における倒錯と言う退廃的な末法の世のような感じになっているね。


 労働者を使い捨ての駒のように扱うことをやめないと私たちに安心して学力を向上させたり共同体で楽しい思い出も作れずに生産性0の人間として首をくくったり一日2000円のムショ暮らしをせねばならないんだね。声を上げないとおかしいよね。時が未来に進まないザンス♪──マルクスの亡霊が地球のあちこちから顔を出し始めているね。こぇー」


 と言ってケンゴは二杯目のドリンクバーのコーラを飲んだ。マチコはそれだけ話すともう満足したのか、


「私から話せるのはこれくらいかな? メモは取ったけど私からはネタに出来るほどの情報はあんまりなかったからケンゴの話の続きを聞かせてよ♡バニラアイスが溶けちゃうよ☆」


 と言ってバニラアイスをすくって柔らかく笑って「美味しいな」と言った。ケンゴは再びメモを広げて語り始めた。


……(続く♡)

何か話を膨らませるのに苦労しました≧n≦)∠ガンバッタ☆

何か今時代は芥川や太宰の生きていた時代に似て

来ているような気がします。

共同体における疎外感を当時の男色に走った学生と

同じ構図が女子の中に広がっているような

感じがします。

乱歩と某推理漫画が流行った構図は似ています(;´Д`)

絶望感や倦怠感は現代だけの問題ではない

「少年探偵団」に見る広く小学生にもまたがる

厭世ミームの深さは世界共通なのです(;_;)


では☆♪

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