1話「何も知らない僕ら──ネットカフェで密会①」
1話「何も知らない僕ら──ネットカフェで密会①」
高坂ケンゴと水瀬マチコは高校卒業後、就職で失敗した。
何の課題も授業もノートを取る必要もなくなって自由になりお互いフラフラした生活をしていたが何か最近の世の中や世界情勢を見ていると今いる大人達の言動や態度に信頼できるものを感じられなくなり遠くない未来に成人していずれ自活せねばならないことを思うと知識武装して〈人生のマ坂〉に備えるべきではないだろうか? と感じ二人で図書館を利用して学生時代に考えることのなかった「お金と社会の成り立ち」について勉強してから社会に出た方が絶対によいとケンゴもマチコも一緒に考えるようになった。
この日はお互いの勉強した内容を語り合うためにネットカフェのカラオケボックスで勉強会をする予定になっていた。ケンゴは朝十時前に自転車を走らせ市内のネットカフェの入り口前でマチコを待っていた。キラキラと明るく太陽が東方で輝き青い空とスッキリして涼しげな朝の空気のもと学校で仲良くなったマチコを待っているととても明るく元気で開放的な気持ちになった。
もう勉強しなくていいんだ──と思うと肩すかしを食らったような心許ない気分にもなったが何の面白みもなくて大きい声を上げて学校生活を妨害する危険な生徒のいた居心地の悪い環境から抜け出たケンゴは自由という名の安心感を感じていた。最初から最後まで学校側とも危険な生徒とも分かり合うことが出来なかった学校での生活を思うと知識を持たない自分たちは実際はとても危険な生活を続けているのではないだろうか? と感じた。
世の中において自分たちの知らないことは多い──国会運営においていくらぐらいのお金が使われているのかとか道路標識を設置するのにいくらぐらいの税金が使われているのか株式会社の株式とはどのような性質を持っているのか? ……自分たちの普段生活している中で必要な知識など底が知れていてこう言うcoreな情報は知っておいた方がいいはずだが無学な私たちや親世代はテレビのゲストコメンテーターのようにいい加減で笑いを取る程度にしかコメントする力を有していない。なんか今まで主流だった映像媒体に慣れ親しんだ私たち現代人はまるっと思考力=考えて話すこと、が出来なくなっているような感覚がケンゴのなかに芽生えていた。テレビに満面の笑みで話しかける高齢者などに思考力が備わっているようにはケンゴには思えなかった。
(今日は天気がいいな♡)──と青い空と涼しげな空気を心地よく感じていると自転車の呼び鈴を鳴らして「お待たせ!」と言ってマチコが自転車でネットカフェの敷地内に入ってきた。涼しげな瞳の快活な彼女は駐輪所に自転車を入れるとニコニコして、
「物騒な世の中になってきたよね。私たちって考えてみると大人だとしても全然世間に昏いし、今日は一緒に勉強したことを語り合って次の就職の機会とその後の人生につながる学習会にしようね☆!」
と明るくハキハキした声でケンゴに語りかけた。住所や氏名を書き込み会員証を作ってレジで伝票を受け取りカラオケボックスへ移動した。外ではくぐもったような音と声で他人のカラオケで歌う声が聞こえていたが室内照明を付けてドアを閉めると取り立てて何も気にならなくなりケンゴとマチコは静かなボックス内のテーブルの真向かいのベンチと椅子に腰掛けた。
ニコニコしながらセルフでドリンクバーでアイスティーをコップに入れバニラアイスをカップに投入して四角い台に置いて持ってきたマチコは「ケンゴが勉強した内容を教えて♡」と言ってスプーンでバニラアイスをすくい一口食べて柔らかな表情になって「今日は甘いな♡」と笑った。
ケンゴは読んだ本の内容を10頁置きにメモしたメモ帳を持ってきていた。ベルトに通した右腰のポシェットからメモ帳を取り出すと彼はマチコに語り始めた。
「マチコ、デフレとインフレの違いって分かる? 物の値段が下がるのをデフレって言って上がるのがインフレなんだけど会社の儲けが下がるのがデフレでこれって〈値段が下がる→儲けが減る→給料が上がらない→買い控え→値段が下がる〉って言う悪循環のことを言ってて現代の私たちは賃上げとかベースアップとか国際的に見ても労働者の給料が上がってないらしいんだけど全然気付いてなかったけど賃上げで国会とかで騒いでるから物の値段の上がらない状態=デフレが進行していたんだね。今の日本はライジングサンと言われた80年代の好景気時代から見たらそうとう国際的な経済力って落ちているだろうからそう言う意味で大企業のトップとかは賃上げについてあまりいい顔が出来ないんだろうね。もしかするとキチンと働いてくれる社員がいない=五月病で調子を崩して退社する新入社員の増加……とかも賃上げ圧力の要因としては考えられそうだね」
「デフレについては何となく分かったけどインフレって言うのはどう言うものなの?」
「インフレって言うのは物の値段が上がることで自国の通貨が国際的に人気がなくなっても国の物価って上がっていくみたい。昔日本では国ではなくていろいろな会社から紙幣の刷られる時代があったらしくて会社が独自でドンドン印刷したら店舗側が適正な価格で商品を売ってくれなくなったそうでその時日本は軽いハイパーインフレ状態に陥ったんだって。恐らく店舗側はお金を持っていない層の人間から距離を取って、もっと潤沢に資金を持っている人間から確実に利益を得たかったんじゃないかな? あと余談だけど究極的にデフレの行き届いた状態って〈物々交換〉になるんだって。1円よりも下のお金がないように仮にハイパーデフレ状態とでも名称を付けるとその時は自分のしている仕事で出た商品を他の仕事をしている人の商品と交換していたんだ。自分の労働対価と他者の労働対価を交換していたんだね。何か株式って言うのは未来の従業員の労働を商品として販売する行為だから理想社会を実現したい○側の勢力にとってはよく思われてないそうだよ。自分も何か労働力を商品として扱う考え方は好きじゃないかな。働いている人間をぞんざいに扱うのってブラック企業でありディストピアだと思う。究極的には資本が行き過ぎるとそこでは人間=労働者が生きてゆけない社会になるそうだよ。AIとか物のインターネットと言われるIoTが行き届いた社会ってもしかするとある階層にいる人間を根こそぎお金で殺すかも知れないんだ。怖いよね」
マチコはムゥゥ……と腕を組むと、
「それは怖いよね。ソ連は90年代の前に崩壊したけど対話によって開かれた社会革命の必要性は消えてないのかも? カネと命どっちが大事なんだって訊かれたら普通は命だし」
と言って怖がった。マチコは「他にはどんなことを学んだの?」と言って首を可愛らしくかしげて話を聞きたがった。
「1ドル=1○○円とか言われる為替レートの正しい知識ってある? アメリカにはドル以外にセントってお金もあるけど違いを分かってる? セントって言うお金は日本円で表現すると99円までの硬貨=十の位までの単位のことを言っていてドルは百円から上限なしで増えるお金の単位のことなんだ。日本で言うところの五十円硬貨に当たる五十セント硬貨は一時期米国で銀の含有量が少ない硬貨が全国的に出回ってそのことで悪い影響が出て今は製造してないんだって。1ドルに対する円の値が多い方が日本が得するって思う? 実は違うんだよ。例えば1ドル=200円の時に最新の1000ドル=約十万円の最新携帯を買うときに払うお金は何と適正価格の【2倍★!】の20万円☆☆☆!!! むかし円が1ドル=300円台の時に海外旅行に行った富裕層の人と書いたんだけど適正価格の3倍の料金で旅行に行ったことになるね。日本人はやっぱりあんまり物を知らない人が多いよね。ちゃんと勉強しないと馬鹿を見るよね」
ちょっと話し込んだケンゴはフゥ……と息をつくとドリンクバーで購入したコーラを口に含んで「本当に僕たちって知識ないしちょっと恥ずかしいね」と言って笑った。
……(続く♡)
何か自分たち現代人ってものを知らないなぁと言うのを
痛感して社会に興味が出てきたので今回話を書くことにしました♡
自分が知っていることや状況を想像することや対面する異性との
やり取りを楽しんで一緒に現代社会についての知見を
広めましょう(〃∇〃)∠○ワクワクスッゾ♡
おかしいことをおかしいと言える空気を作って先生も生徒も
苛める何の変化もない劣化し続ける学校環境に
No!と言って政府も巻き込みましょう(´・ω・`)∠カチボシ④♡
頑張ります^_^ では☆♪