↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/110

46 激闘

2話投稿の2話目になります。

 アレスの逃げろという声は、アイナも聞こえていた。しかし、今から逃げても避けきれるとは思えない。


 アイナの十メートルほど先で、キュクロプスが顔を上げた。その目玉からは縁が赤く、中心が真っ白な眩い光が溢れていた。


 アイナは眩しさに目を細めながら呟く。


「『反射《リフレクト》』」


 アイナは、目玉のすぐ前に『反射《リフレクト》』を展開するようイメージした。前回、森林陸亀《フォレスト・トータス》のブレス攻撃の反省から、射出点のすぐ傍で反射すれば周囲へのダメージを減らせるのではないかと思ったのだ。


 そして、縦横二メートルの正八角形をしたオレンジ色に光る板が、キュクロプスの目玉の前一メートルの所に展開された。


 その直後に、キュクロプスの最大攻撃「灼熱波」がアイナに向けて放たれる。


「ぐっ……」


 両手を前にかざしたアイナの額に玉の汗が噴き出す。「灼熱波」は目玉の一メートル先で反射し、その全エネルギーがキュクロプスに跳ね返された。


 「灼熱波」の攻撃はものの三秒ほどで収まった。


 後には、首から上が完全に消失し、四つん這いになったままのキュクロプスだったものが残された。その背後の森は、かなり後方まで木々の上半分が焼失している。


(やった……?)


「キューイっ! キューイっ!」


 キュイックが頭の上で嬉しそうな鳴き声を上げる。その後、防壁の傍に取り残された兵や冒険者から「うぉおおおー!」と歓声が上がった。


「アイナっち! やったっすねっ!」

「すげーぞ、アイナ!」


 気付けば、ペネドラとヒューイがアイナのすぐ傍に来ていた。


「アイナ。素晴らしい判断だった。よくやったな!」


 遅れて来たアレスも、アイナに賞賛の言葉を贈る。その時だった。


「アレスーっ! まだいるわ!」


 左後方の二階建ての建物の屋根から、モニカが大声で叫んだ。その直後に「ズゥン!」という地響きが届く。


 森の切れ目から、さっき倒したキュクロプスより一回りデカい奴が現れる。そいつは両手に人間より大きな戦斧を持っていた。


「ふん。デカけりゃいいってもんじゃねぇっつーんだよ!」

「ヒューイっち、たまにはいいこと言うっすね!」


 ヒューイとペネドラがそう言いながら飛び出して行く。高所からは、モニカとネネが牽制のため矢と雷の槍を二体目のキュクロプスに向けて雨のように降らせていた。


「二体目か。何体でもかかって来いっ」


 アレスが気合と共に走り出した。


「よーし! 私もっ」


 アイナも気合を入れ直して前に進む。


 二体目のキュクロプスは、一体目よりスピード・パワー共に上回っているようだ。ペネドラとヒューイが簡単には近付かせてもらえない。キュクロプスが縦横無尽に戦斧を揮っている。アレスが大剣でそれを受け流す。


(足止め、足止め……動きさえ止めちゃえば、あとはみんなが何とかしてくれる)


 防壁の所まで来たアイナが、アレスたち三人に向かって叫んだ。


「三人とも! 少しだけ下がって! 『地獄の炎(ゲヘナ)』」


 アイナがスキルを唱えた瞬間、キュクロプスの両脚が黒と赤の炎に包み込まれた。クルディス伯爵の屋敷裏で見せた、ピンポイントの『地獄の炎(ゲヘナ)』だ。


「ギュルオォォォォオオオ!」


 キュクロプスが苦しみの咆哮を上げ、一瞬動きが止まる。そこにモニカとネネが攻撃を飛ばす。


 しかし、『地獄の炎(ゲヘナ)』の苦しみから逃れようとキュクロプスが後退ったため、目玉には当たらない。


(だめか! だったらこうだ)


「『死神の鎌(グリム・リーパー)』」


 黒と赤の炎に包まれたキュクロプスの脚の近くに、黒い靄が発生する。


「も一つ!『死神の鎌(グリム・リーパー)』」


 反対の脚の傍に、別の靄が発生した。


 黒い靄はすぐにマントを纏った人型に変わる。


「斬撃《スラッシュ》」


 後退るキュクロプスを追いかけながら、二体の死神が左右の脚に大鎌を揮った。それは、黒と赤の炎ごとキュクロプスの両脚を断絶する。


「ズウゥゥゥン!」


 後退っていたキュクロプスはそのまま後ろ向きに倒れた。その隙をモニカとネネが見逃すはずがない。三本の矢がキュクロプスの目玉に直撃する。さらに雷の槍が降り注ぎ、目玉を中心にキュクロプスの顔の周りに突き刺さった。


 キュクロプスは完全に動きを止めた。切断された両脚も再生しない。


「ふうー……」


 アイナはその場にぺたんと座り込んだ。


「キュイっ! キュイっ!」


 アイナの頭から飛び上がったキュイックが、何度か羽ばたいて鳴き声を上げ、アイナの両腕の中に収まる。


「やった…」「やったぞ」「俺たち生きてる」「キュクロプスを倒したぞ!」


 防壁の上に残っていた兵や冒険者が口々に言葉にし、やがて「うぉおおおおー!」という歓声が広がっていった。


 アレスとヒューイ、ペネドラが座り込んだアイナの元に駆け寄って来る。


「アイナっち!? 大丈夫っすか?」

「う、うん! 気が抜けただけ」

「そうっすか!」


 ペネドラが安心した顔をする。


「アイナ、立てるか?」

「うん」


 ヒューイがアイナに手を貸して立たせた。アイナは片腕でキュイックを抱いている。


「アイナ、さっきのは凄かったな! いつの間にあんなこと出来るようになったんだ?」


 アレスがアイナの頭を撫でながら聞いた。


「えっと、なんか出来るかな? って思ってやってみたら出来た」


 アイナのとびきりフワフワした答えにアレスも苦笑いする。そこに、建物の屋根に登っていたモニカとネネも駆け寄って来た。モニカはアイナをぎゅっと抱きしめる。


「アイナっ! やったわね!」

「むぎゅぅ……」

「ギュイィィ……」


 モニカの胸で窒息しそうなアイナと、間に挟まれたキュイックが苦し気な声を出す。


「わっ! ごめんごめん!」


 モニカが慌ててアイナから離れる。ネネが横から優しくアイナを抱きしめる。


「ネネお姉ちゃん」

「ん。アイナ、よくやった」


 ひと固まりになっている『銀獅子団』に、冒険者ギルドの職員が駆け寄って来る。よく見ると、宿まで依頼を伝えに来た男性だった。


「みなさん! ありがとうございました! おかげで街が救われました」

「いいのよぅ、依頼なんだから! もちろん報酬は二体分、出るわよね?」


 モニカはちゃっかりしていた。





 ネネが土魔法で防壁の応急処置をした後、『銀獅子団』は祝杯を上げるために店に来ていた。奇しくも、今日の明け方まで飲んでいた店である。時刻はもう夕方近く。早めの夕食を兼ねてやって来た。


「 「 「 「 「 「 かんぱーーいっ!」 」 」 」 」 」


 六人が木製のジョッキを打ち合わせる。今日は、ヒューイとペネドラが「麦酒」を飲むということで、アイナも挑戦してみることにした。


 葡萄酒と全く違う琥珀色。それに表面には泡が乗っている。ヒューイとペネドラは、乾杯直後にぐびぐびと飲んだ。


「 「 ぷっはー!」 」


 二人が物凄く美味しそうに飲むものだから、アイナもぐびっと飲んでみた。


「っ!? ……にっがーっ!」


 アイナは思わず目を瞑ってベロを出した。


「うわっはっはー! 苦かったか?」

「アイナっちにはまだ早かったっす?」


 ヒューイとペネドラが両側からアイナの肩をバンバン叩きながら囃し立てる。


「うっ! べ、別にぃ。お、美味しいよ?」


 アイナが負けず嫌いを発揮し、麦酒をぐびぐびと飲んだ。


「ぷはーっ! ……(にがっ)」


 そんな様子をアレスとモニカ、ネネは微笑ましく見ている。


 五年前には一体で苦戦したキュクロプスを、危な気なく二体連続で倒した。自分たちの成長を実感するとともに、アイナの強さが誇らしかった。


 『銀獅子団』のテーブルには、冒険者や兵士、ギルド職員、街の人々がひっきりなしに声を掛けに来た。感謝と賞賛の言葉を伝えずにいられなかったからだ。


 いちいち相手するのは面倒臭いが悪い気分はしない。


 絶体絶命の危機が去り、街全体が浮かれているようだった。たまにはそんな日があってもいい。


 店は大盛況。そうやって、『銀獅子団』は二日連続で明け方まで羽目を外すのであった。

本日もお読み下さりありがとうございます!


【五月からのお願い】

少しでも面白い・先が気になると思っていただければ、評価・ブックマークをお願いします!

評価とブックマークが執筆の大きなモチベーションになります。


↓の広告の下に☆☆☆☆☆がございます。★★★★★(五つ星)の評価を頂けると震えます。

「面白いよ!」「気に入ったよ!」と思ったら、ぜひ評価して教えてくださいね!


応援よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。