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21 反撃

本日も2話投稿します。こちらは1話目です。この後すぐに2話目を投稿します。

「どうせみんな死ぬから教えてあげる。僕の名はスティルノフ。『異界人』だよ」


 街の警護兵と、王城や城門から兵士たちが続々と集まって来る。


「どれだけ集まろうと無駄だよ?」


 そう言ったスティルノフの頭上に、四つの光の環が出現する。


「『光雨ライトレイン』」


 スティルノフが、腕の形に戻った左手を上に向かって掲げる。頭上の光の環が眩しく輝く。次の瞬間、天から「光の雨」が降り注ぐ。その光の雨は、一粒一粒が人間の身体を貫通した。


 百人以上集まっていた兵士たちは、身体中から血を流して一人残らず絶命した。


 アイナとネネ、そしてヒューイは『天翼ガーディアン』で守られている。しかし、そのあまりの威力と数の多さに、アイナの魔力が尽きてしまう。三人と、そしてキュイックまでもが「光の雨」に晒される。


 ヒューイ、ネネ、キュイックが受けたダメージは全てアイナが肩代わりした。アイナは全身から血を噴き出して絶命するが、すぐに黒と青の炎に包まれる。


 スティルノフの頭上にあった四つの環は、輝きを失って灰色になっていた。


「うーん。どうやったらその子死ぬのかな?」


 スティルノフがその言葉を言い終わると同時に、それまで立っていた場所に三本の矢が突き刺さる。


「遅くなってごめんっ!」


 モニカが大弓「ダンテ」を手に、建物の陰から一歩踏み出す。


「ヤツは転移するぞっ!」


 ヒューイが叫ぶ。それと同時にモニカの背後にスティルノフが現れる。両腕と背中の腕で同時に攻撃しようとしたその時、アレスの大剣「ヒュンデベルク」がスティルノフの横っ腹を捉える。それを片腕と背中の腕でガードするが、衝撃で横ざまに吹っ飛ぶ。


 飛んだ先にヒューイが待ち構えて短剣をバツの字に振る。四本の腕でガードするが、スティルノフはたまらず後退る。


 その間、銀獅子団の「五人」は一か所に集まった。アイナは全身血塗れだが、すでに復活している。その頭にはキュイックが乗っていた。


「アイナ、大丈夫かっ!?」

「アレスお兄ちゃん! うん、大丈夫」

「よし、作戦を伝える。全員聞け!」





(なるほど。この街で一番強いオーラを持ったヤツが四人。それに、あの不思議な能力を持った子供。これがこの街の最大戦力か)


 四つの光の環は、気力オーラ充填にもう少し時間がかかる。それまでに、あの子供を細切れに切り刻んでみよう。どうやら仲間が死んでも身代わりになって、その上生き返るようだ。どれくらい細かく切り刻めばいいか……なんならすり潰して地中深くに埋めてみるか。


 スティルノフは、両腕を再び剣の姿に変えた。背中から更に二本、合計で四本の腕を生やす。六本全てが伸縮自在の超高硬度の剣。この世界の物質では、この剣を破壊することは不可能だ。そしてこの六本を超高速で扱う。一対多でも敵を殲滅する能力がある。


(まぁ、この世界にも多少は楽しめる相手がいることが分かったよ。それだけで十分だ)





 ネネは、スティルノフと対峙してからずっと魔術を使わず、奴の闘い方を見ていた。未知の敵、それも今まで出会ったことのない強敵。だからこそ、相手を冷静に分析する必要がある。


 そのスピード、固さ、全体攻撃の威力、そして転移。どれか一つだけでも十分脅威なのに、それが全部揃ってるときたもんだ。甚だ迷惑である。


 それでも、奴の闘い方の特徴は分かってきた。まず、あの赤黒い刃の攻撃。あれは何本あっても一度に二か所までしか攻撃できない。そして攻撃と防御は同時に行えない。あのスピードは厄介だが、ヒューイとアレスならギリギリついて行ける。


 全体攻撃は、あの輪っかによるのだろう。最初光っていたあの輪っかは、攻撃後に輝きを失っていた。今は輪っかの半分くらいまで輝いている。あれが溜まると再びあの攻撃を出せるのだろう。


 そして最大の難関、転移。しかしこれは、アレスの『心眼マインドアイ』が既に突破口を開いた。オーラが視える『心眼マインドアイ』は、転移先に揺らめく奴のオーラを捉えていた。


 と言うことで、反撃開始だ。





ことわりを成す者よ、我が盾となれ。白盾テイホス!」


 モニカが詠唱し、ネネとアイナ、モニカを護る魔法陣を展開する。こちらに悠々と歩いて来ていたスティルノフだったが、「ちっ!」と舌打ちして六本の刃全てをアイナに向けて揮って来る。それらが魔法陣に当たって弾かれるが、魔法陣にもヒビが入る。


 それを見てニヤリとするスティルノフの左側からアレスが大剣を横薙ぎに払う。スティルノフは六本の伸ばした刃で自分の身体を包むように防御する。アレスの攻撃を耐えて刃が緩んだ瞬間、ヒューイがその隙間に短剣を突き込む。


「くっ!」

「『死神の鎌(グリム・リーパー)』っ!」


 バックステップで後退ったスティルノフを囲むように、六つの魔法陣が現れる。


ことわりを成す者よ、我が槍となり敵を滅ぼせ。雷撃槍ライオット!」


 ネネの中級雷魔術が、六つの魔法陣から同時に放たれる。


 アイナの隣には、『心眼マインドアイ』を使ったアレス。発動に時間がかかる『死神の鎌(グリム・リーパー)』を、ネネの魔術より先に発動させた。


 雷撃槍ライオットから逃れるため、スティルノフは転移した。オーラの揺らめきを捉えるため、アレスは全神経を研ぎ澄ます。


 アイナの『死神の鎌(グリム・リーパー)』は、既に地面からその全貌を現わしていた。その姿は黒いフードを被った死神。フードの奥で赤い目が光っているが、その他はぼやけた黒い霞のようだ。ただ、その手に握られている、人の背丈ほどある刃のついた真っ黒な大鎌だけは、妙にはっきりと見えていた。


「そこだ! ヒューイの右後ろ!」


 アレスの声に、ヒューイが全力でその場から離脱する。


斬撃スラッシュ


 アイナの呟きとともに、死神がゆっくりと大鎌を振る。そして丁度そこにスティルノフが現れる。


 『死神の鎌(グリム・リーパー)』の斬撃は「防御無効」。そこにあるのが何であれ、「空間ごと」断絶する。それは、あらゆる結び付きを拒絶するかの如く。


 伏兵の攻撃に片側の三本の腕で防御しようとしたスティルノフだったが、その身体が防御ごと何の抵抗もなく両断される。


「えっ?」


 胴体を真っ二つにされたスティルノフは驚きに目を丸くし、そのまま絶命した。


(ふむ。スティルノフ君がやられましたか。まぁ、彼はバカだから仕方ないですね)


 その場から三百メートルほど離れた建物の屋根から、『銀獅子団』とスティルノフの闘いを見ていた「別の異界人」が独り言ちる。


(とりあえず、あのニンゲンたちは脅威のようですから、今のうちに排除しておきましょうか)


 その異界人の頭上に、六つの光の環が出現する。


「跡形も消えてなくなれ――」


 異界人が言い終える前に、その胸を一筋の光が貫いた。直後に上半身は頭と両肘から先を除いて殆どが消失した。


 その光はゆっくりと上昇し、周囲を警戒するように一周する。そして満足すると直径五センチほどの光の玉になり、アイナの元へゆっくりと戻る。


 アイナたちはその光の玉を呆然と見ていた。スティルノフが倒れたと思ったら、突然キュイックが今まで見せたことのないような怖い顔で唸り声を上げたのだ。そして眩しい光を発したかと思うと北西に向かって光の筋が一瞬見えた気がした。


 アイナは頭の上にキュイックが乗っていないことに気付き、「キュイック?」と辺りをキョロキョロ探しているうちに、妙な光の玉が近付いて来た。それはフワフワとアイナの頭の上まで来ると、徐々に光が収まってキュイックの姿に戻ったのだ。


 アイナはもちろん、他の四人も盛大に「?」を顔に貼り付けていた。その面々を見て、キュイックは「キューイィィっ!」と得意げに鳴いた。





 その日、カルデ王国王都カルディアナは、「イカイジン」と名乗る謎の生命体の襲撃を受けた。西区と東区の境い目にある噴水広場付近を中心に、数百人に及ぶ犠牲と数十軒の建物の被害を出したものの、『銀獅子団』がその「イカイジン」を撃退したのだった。


 後から駆け付けた多くの兵士が目撃したところによると、銀獅子団のうち一人の少女は全身血塗れになっており、黒いシャツの男がそのシャツを脱いで少女に着せ、一言も発することなくその場を後にしたらしい。その出血量の割に少女の足取りは元気そうだったと言う。


 幸か不幸か、アイナのスキルを見た者で生き残った者は一人もいなかった。

本日もお読み下さりありがとうございます!


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