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わらしべ聖女様 〜TS転生放逐令嬢の奮闘記〜  作者: 何某さん
メイワクなGood-bye presents
66/66

人材募集とField work:1


 翌日。

 エレノア達は、レミリアと一緒に朝食の場で、今日以降の動きを話し合った。

 昨日の夕食で、会議で話し合われたおおよその内容はすでに伝えられていたため、レミリアも最初から踏み込んだ内容で話をエレノア達に振った。

「とりあえず、まず必要だと思われる人材はオートマタの技師と、魔導計算尺の技術に明るい魔道具技師だったわよね」

「そうですね」

「なら、それらに関しては私に任せてちょうだい。公爵として、初めての大きなお仕事ですもの。私もできる限りのことは自分でやりたいわ。……でも、王宮などに掛け合うなどして、各方面にお触れを出すとして……それでも、それなりに時間はかかりそうかしら」

「商業ギルドのここの支部と、本部への働きかけは私達の方で掛け合ってみましょう。その方が早いかもしれません」

「あ、それなら私は一旦王都に行って、あの女性スミスさんに話を振ってみようかな。知り合いの職人さんかだれか、紹介してくれるかもしれないし」

「女性スミスさん……あぁ、話に聞いていた、あなたがアレを売った相手ね。魔法鍛冶の腕前だけで叙爵されるくらいだから、職人たちとの横のつながりも結構ありそうだし……あたってみない手はないわね」

 それじゃあ、王都へはあなた達でお願いね、とレミリアはエレノア達にそう伝え、それから自分は自分にしかできない方法で募集を掛けると言った。

 具体的には、先に行った、王宮などへの嘆願書の提出と、職人ギルドへの声掛けなど、エレノア達とはつながりが薄い方面への働きかけだ。

「それから、魔石に関しては……」

「それに関しては、私の方で冒険者ギルドに掛け合いましょう」

 それから、最後に試作品を作るにあたって使うことになる魔石の件について。

 これに関しては、コーネリアが名乗りを上げた。

「そうですね……いろいろ試すでしょうし、一回の受注につき目安に、そうですね……4等級は一個と、6ないし7等級くらいの魔石十個程度を獲ってきてもらうように、それぞれ何回分か、まとめて依頼を出してみます」

「そう……ちなみに、7等級だと質は最低ランク一歩手前だったわよね。それだと心配だから、一応6等級にしておきましょう」

「かしこまりました。そのようにいたします」

 これに関しては、王都へと向かう道すがら、領都の冒険者ギルドに立ち寄れば問題ないだろうとコーネリアは自身の考えを話す。

 これにより、駅に向かうまでの行動は、エレノアとコーネリア達侍女の主従と、商業ギルド勢2名+ハイ・サキュバスという二手に分かれることになった。


 その後、朝食を終えたエレノア達は早速行動に移った。

 コーネリアとともに冒険者ギルド担当となったエレノアは、この際にこっそりと冒険者ギルドにも登録しておこうと画策していたのだが――目を光らせていた侍女ミルファによって、華麗に阻止されてしまった。

「ご当主様の実姉ともあろうお方が、冒険者として活動するなど論外です。もし大怪我などされたらどうするのです。それに、よからぬ輩によって拐かされたらどうなるとお思いなのですか。復縁がかなったのですから、お立場というものをお考え下さい」

「面倒くさいなぁ…………」

 だから復縁などしたくはなかったのだ、とエレノアは心の中で独り言ちる。

 そんなことは侍女たちの手前言えるわけもなかったが、そう思わずにはいられなかった。

 とかく、コーネリアに任せたそもそもの用件が済むまで、エレノアは冒険者たちに紛れて依頼掲示板を確認することに。

 冒険者として活動することが難しくなったとしても、依頼掲示板から情報を読み取ることができなくなったわけではない。

 しばらくは公爵家の本邸で寝泊まりすることになった以上、こうしてこの辺り一帯の現在の状況を把握しておくことは、決して無駄ではなかった。

 ともすれば、こうした情報からさらに新しい産業を発掘できないとも限らないのだ。

「ん…………イネムリダケ(?)の討伐依頼? もしかして、ジュクスイダケのことかしらね……」

 エレノアはとっさに、ツイントに登場するボスクラスの強モブモンスターを討伐するサブイベントのことを思い浮かべる。

 確かに、そのクエストは今回エレノアが公爵家の領都に戻ってきたきっかけでもある借金返済クエストと、ほぼ同時に受けることができた依頼だったはずだ。

 厳密には、借金返済クエストを達成すると、そこに私兵の一人が駆けつけてきて、イネムリダケの変異種が現れたとエレノアに通達を持ってくるといった形だ。

 現実では、ゲームとは違った流れをしているために、公爵家には一応通達が行ったものの、冒険者ギルドにそのまま討伐依頼が流れていったという形になったのだろう。

 とはいえ――どちらにせよ、このままでは王都へは行くことができないのも確か。

 なぜなら、ジュクスイダケの出没した場所が、ちょうど鉄道の通っているあたりで、安全が確保されるまで鉄道魔導船は運休になるからである。

「参ったわね、これは……」

「いかがなさいましたか?」

「あぁ、うん。あの、イネムリダケ(?)の討伐依頼なんだけど……出没場所がまずかったら、鉄道魔導船の運航にも影響が出そうじゃない?」

「まぁ、緊急依頼というのは得てして、そうした重要性の高い施設付近での活動になりやすい傾向にありますからね……。可能性がないというわけでもありませんが……」

 さすがにそれは偶然が過ぎるでしょう、とフィアットはエレノアの懸念を払しょくするようにそう励ました。

 しかし、戻ってきたコーネリアが顔を曇らせていたことで、その懸念は現実のものとなってしまったことが判明した。

「お嬢様。公爵家からの依頼は受付を済ませることができたのですが……この後の流れについて、一つだけ大きな障害があることが判明しました……」

「そう……それは、もしかしなくても、イネムリダケの変異種のことかしら?」

「ご存じでしたか」

「いえ。厳密には、緊急、とあったから場所が悪かった場合もしかしたら、と思っただけなのだけれど」

「そうでしたか…………。ですが、その悪い予感は、的中してしまっております」

 コーネリアは、イネムリダケの変異種は間違いなく鉄道魔導船の運航の妨げになるような場所に居座っており、さらにその場所は盛り土による立体交差で街道と交差している場所にもあたるという。

 つまり、どうにかしなければ鉄道魔導船はもちろんのこと、街道を行きかう魔導車や馬車などの交通にも影響が出るということになる。

「そんな……コーネリア様、それは本当なのですか?」

 フィアットが、絶望したような顔でコーネリアに問いかける。

 立場としても、エレノアの側付き侍女たちを取りまとめる侍女長であるため、弁えた態度ではあった――が、動揺は隠せていなかった。

「その、延期をするわけには……」

「可能といえば可能ですが……お嬢様は、いかがされますか?」

 コーネリアは、フィアットの提案にはあえて答えず、エレノアにその判断をゆだねた。

 エレノアは、考えるまでもなくその答えを決めていた。

「コーネリアはどう思う?」

「相手がどのような変異種であるかはわかりませんから、一人では少々手に余ります……が、アネット様や、あのハイ・サキュバスがいればどうとでもなる相手でしょう。エレノア様が後衛に立ってくださるなら、こちらの勝機はさらにゆるぎないものとなるかと存じます」

「そう。なら、魔導車で行っても問題はなさそうね」

「エレノア様!?」

 コーネリアと、そしてエレノアの会話を見て、フィアットは、そしてカレンとミルファは顔を真っ青にしながら正気か、と視線で二人になおも問いかける。

 しかし、エレノアの意を汲んだコーネリアは、それを覆すつもりはないらしく、

「では、受付嬢にはそのように返答をしてきます。どちらにしろ、緊急の依頼を持ち掛けられたので返答しないわけにはいきませんでしたから」

「そう。それでは、よろしく頼むわね。アネットさん達には、合流してから伝えれば大丈夫そうね」

「問題ないでしょう。では、再度行ってきます」

 そう言い残して、緊急依頼の受注手続きへと向かってしまった。

「本当に、大丈夫なのですか……?」

 憂鬱な心境を隠そうともせずに、侍女たちを代表してミルファがエレノアにそう聞いてくる。

 エレノアは、

「胞子対策さえできれば、特に問題ないはずよ。イネムリダケと戦う場合は眠り対策が必須とは言うけれど、厳密には催眠作用のある胞子への対策になるから、毒対策でも場合によっては問題ないのよ」

「毒、ですか……」

「そう。厳密には、毒耐性や毒無効など、ね。私やコーネリア、それにアネットさんも、サキュバスの一件で毒対策は万全だから、イネムリダケやその変異種はむしろ臨時収入にしかならないわね」

「そうなのですね…………」

 それなら安心なんでしょうか、とやや不安の残る顔ではあったものの、一応の納得をしたらしいミルファ達を見て、問題はとりあえずなくなったかな、とエレノアは一つ頷いて、依頼受注手続きを終えて戻ってきたコーネリアを迎えた。


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