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わらしべ聖女様 〜TS転生放逐令嬢の奮闘記〜  作者: 何某さん
メイワクなGood-bye presents
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ひとまずRepayments:2


 領都の商業ギルドへ到着したエレノア達は、早速総合窓口での受付を済ませ、担当者となった受付嬢でエレノアの個人口座からレーペンシュルク家への口座への振替手続きを始めた。

 ちなみにこの最中、エレノアとレミリアは公爵家の関係者らしく外出用のカジュアルなドレスを着用しており、コーネリアはいつも着用しているメイド服。

 カジュアルなドレスといっても、エレノアが普段着としているような質素なものでもなく、それなりに宝石があしらわれたパリュールをつけているので、人目は十分惹きつけている。

 そしてアネットとエリスは、エレノアの元に出向してきているとはいえ、今は店に携わっているわけではないことを意識してか、商業ギルドの制服を纏っていた。

 なんでも、外部に出向中でも、例えばどこかの店のサポートに回るなどと言った理由でもなければ、基本的に仕事中は商業ギルドの制服を着用するルールなのだとか。

 また、各ギルドの制服は国によって認められた正装にあたるため、これを着用してさえいれば、どこに行っても一応はドレスコードを守っていることにもなる、ともエレノアは説明を受けていた。

「本日は、当ギルドへお越しいただきましてありがとうございます。早速ですが、皆様が本日お越しいただいた理由について、確認させていただきますね」

「はい」

「当ギルドに御用があるのは、エレノア・レーペンシュルク様と……それから、領主様、ですよね…………?」

「はい、間違いありませんわ。本日も、どうぞよろしくお願いいたしますね」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします」

 受付嬢は、エレノア達が総合受付で渡されて記入した受付用紙をざっと流し見、なるほどと一つ頷いてまずはその内容を確認した。

「えっと、その……こういうケースは、余り受け付けたことがないのでお間違いないように確認をしたいのですが……まず、お取引の内容は、エレノア様が、レミリア様の口座に対して、1000万ルメナを振り替える、ということでよろしいのでしょうか」

「はい。それで問題はありません」

「そして、その後私ども立会いのもと、今度はレミリア様がエレノア様に貴族債券の発行を行う、と……つまり、これは、レミリア様が、エレノア様にお金をお借りする、ということになりますが、お間違いないのでしょうか……?」

 受付嬢は、暗に単純な分家からの徴収ではないのか、これは間違いではないのかということをしつこく確認している。

 それもそうだろう、ここへ来る前にエレノア達も言っていたように、今回のような、レミリアがエレノアから臨時徴収を行えないというようなケースは極めて稀有な状態なのだから。

 エレノア達が、それで間違いないと頷くと、受付嬢は顔をひきつらせながら、

「左様でございますか。珍しいこともあったものですね……」

 と、半ば片言になりながら、その処理を始めた。

 事務手続きは、高額ではあったが公爵家当主直々の取引ということもあり、粛々と進められ、それほど時間はかからずに債券の発行まで進められた。

 そうして、公爵家の預金残高が正式に3000万になったところで、レミリアがまずは各工房に対する掛け金の代金を支払っていった。

 また、この時レミリアは、商業ギルドに対する借金について、後日金目の物を売って、その代金から商業ギルドへの借金を返済することをギルドに対して宣言した。

 領主による宣言は重みをもつ。これで、レミリアは後には引けなくなった。


 エレノア達は、これらの取引を終えると外でこれ以上やるべきこともなかったので、以降は本邸へと戻ってそれぞれのやるべきことに着手することになった。

 とはいえ、エレノアがやることはレミリアとそれほど変わるわけではない。

 すなわち、コーネリア他、側付きの侍女たちとともに、本邸内の金目の物をかき集めるという、宝探しのような地道な作業だ。

 公爵家に代々伝わる家宝のうち、手離せるものは大体が倉庫から引っ張り出され、ツボや絵画などの観賞用の家具なども売却予定となった。

 それらは、作業が終了した日の翌日にはギルドから運搬要員を呼んで運搬してもらい、査定にかけたうえで売却をしてもらう予定であった。

 ただ、やはり小城とも呼べる規模なだけあって、探索範囲は非常に広い。

 あらかた探し尽くしたころには、一週間が過ぎようとしていた。

「ふぅ……私がこれなら売れそうかな、と思って目をつけていたのは、こんなものかしらね」

「品目としては、やはり観賞用のツボや、絵画などの芸術品がほとんどを占めるのですね」

「えぇ。あとは……お父様かお爺様か……とにかく、歴代の当主の中でも、比較的近い代の当主が収集していたっぽい、書物の類ね。中身を見てみる限り、考古学に使えそうな資料で、機密情報も書かれていない、売っても問題なさそうなものだったからこれも候補に入れて置いたわ」

「なるほど……まぁ、確かに価値はありそうですよね…………」

 あとは、使っていないアクセサリや、レティシアの遺品のうち、売っても問題ないと判断されたものなどもこれにあてられた。

 しかし、問題なのはそれらが果たして、当初の見込み通りの価格で売れるかどうか、である。

 例えば、管理の仕方や運び方が雑で傷などがついたりなどしていれば当然、買い取り金額は下がるだろう。

 そうなれば、公爵家がエレノアという個人から借りなければならない金額は、さらに増えることになる。

 レミリアからすれば、実妹という近しい存在から借りるということもあり、精神的負担が少なそうに思えなくもないのだが――実際には、実妹からすら借金、という姉としての尊厳が傷つけられ、割とショックが大きいらしいので、どうにかして高く売りたいな、とエレノアは思っていた。

 とはいえ、エレノア達の見立てがどうであれ、最終的にそれを鑑定して買い取り金額を決めるのは、エレノアやレミリアでもなければ、王都の商業ギルド本部の職員であるアネットやエリスでもなし。

 このレーペンシュルク領都に存在する、商業ギルド・レーペンシュルク領都支部の職員たちなのだ。

 エレノア達にはあとは、祈ることしかできなかった。


 結果自体は、それから間もなく出た。

 売却する予定の物を運搬してもらい、査定に賭けた結果、どうやら一種の歴史的価値(プレミア)が付くと認められたものがいくつか散見され、レミリアが予想していたよりも結構高い金額――4200万ルメナの値打ちが着けられた。

 少しでも身軽になりたい公爵家側としては、諸手を上げてその売却額に同意。

 こうして、商業ギルドに対する借金も、無事に返済することができたのであった。

「……ふぅ。ひとまずは、これで一安心、なのかな……」

「まだ、王家に対する借金が4000万ルメナ、残っていますけれどね」

「えぇ。それと、エレノアに対する借金も、ね……どちらかといえば、優先順位はあなたに対する借金の方が先になるのかしらね……」

 エレノアが本家に――レミリアに貸し付けた金額は、1000万ルメナ。

 王家に対する4000万ルメナにしてもそうだが、その額は、近く軍需産業という一大産業から撤退する可能性の高いレーペンシュルク家にとっては、とても非現実的な額であった。

 エレノアに対する借金の1000万ルメナは、商業ギルドに対する借金返済に充てた、その残りの金額ですべて賄える程度は残っているのだが、エレノアがそれを拒否したため、依然と残っている形だ。

「あなたがこの余った1000万ルメナを受け取ってくれれば、あとは王家に対する借金だけで済むのにね……」

「まぁ、それは事実なんだけど……でも、新しく事を始めるって、結構お金がいるでしょう?」

 エレノアは、最初からどデカい建物で、とても恵まれた状態からのスタートを切ることができたわけだが、それは彼女自身が祝福を受けた際に聖女としての力を授かったことと、運よくいわくつきの物件に出会ったからであった。

 全員が全員、そんな激運に恵まれるということは、まずないことだ。

「えぇ、確かにね。でも、それも新しく始める事業の内容にもよるでしょうけど、ね……」

「でも、たった一度のチャンスしか望めないような状態で始めるのと、何回かチャンスを望めそうな状態で始めるのとでは、全然精神的な負担が違いますよね?」

「………………」

 エレノアの指摘を受けて、レミリアはそこで押し黙る。

 確かに、それは事実だったからだ。

 エレノアに残った金銭を払えば、すぐに動かせるお金は本当にわずかなものになってしまう。

 あとは、公爵家が体裁を維持するための諸費用(使用人やお抱え職人などへの賃金・給料や、日々の食費、本邸の維持費、王家に支払う税金など)や、公営事業に協力してもらっている人々への給料などに充てる分なので、手を付けられないのだ。

 事業内容にもよるが、例えばこの世界では比較的に物価が安く、必然初期投資も安くて済む食品関係や、料理関係の事業を起こそうとしたところで、新しく始めるとなれば少なくとも10万ルメナ、店舗を賃貸ではなく購入する場合は100万ルメナ以上は必要になる。

 何かと出費が予想される今、安易に自由に使えるお金を減らすわけにはいかないのだ。

「わかったわ。それなら、あなたから借りているお金は、引き続きありがたく運用させてもらうわね」

「えぇ。私も手伝うから、一刻も早く公爵家の財政を立て直しましょう」

「ありがとう、エレノア……」

 とにもかくにも、まずは新しい事業の指針を探さなければならないだろう。

 エレノアは、とりあえずまずは市場調査からかなぁ、とコーネリア、アネット、エリスとの翌日以降の行動計画を立て始めるのであった。


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