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わらしべ聖女様 〜TS転生放逐令嬢の奮闘記〜  作者: 何某さん
アキナイ、戦い、Reversible
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Forts of succubusを電撃攻略せよ:3


 その後、エレノア達は狩り拠点に待機していたルルネ達と合流し、サキュバス達を拘束してから次のアジトへと向かった。

 流れとしては一つ目のアジトとほぼ同じで、ルルネの魔法で乗り込んだ部屋をそのまま仮拠点として占拠し、そこを足掛かりに制圧することとなった。

 ただ、一つ目のアジトと違った点として、まず一つ目のアジトを制圧している際に、敵の強さから鑑みて仮拠点の必要性はほぼ必要ないとアネットが判断したため、二つ目のアジトからはカイトとルルネも探索に加わったこと。

 それから、二つ目のアジトはそのアジトの司令官も負傷していたため、一つ目のアジトよりもあっけなく制圧が完了したことが挙げられる。

 このアジトでは効率化を図るために二手に分かれたのだが、どちらかといえば、エレノア達よりもカイル・ルルネペアの方がより広い範囲を制圧していた。

 これにより、エレノアはカイルやルルネ、そしてアネットの実力があれば、王都に潜んでいたサキュバスなど烏合の衆でしかない、という事実をまざまざと見せつけられた思いがした。

 そうして、二つ目のサキュバスのアジトを早々に制圧し終えたエレノア達は、ルルネの導くままに三つ目のアジトへとワープした。

「……ふぅ。さすがに、最後ともなるとちょっと疲れも出てくるな……」

「敵は弱いですが、数は多いですからね……」

「途中で店に戻って物資の補給なんかもしたけど、それしなかったら魔力がちょっと足らなかったかもね」

 カイトとルルネ、アネットは軽口を躱しながら、迫りくるサキュバス達を無力化していく。

 ちなみに抵抗が厳しくない限りは、命までは奪っていない。

 これは、相手に情けをかけたというより、命まで奪うと死体の処理が大変だから、というカイル達の訴えによるものであった。

 王都に潜んでいたサキュバス達は、思いのほか多い。軍隊一部隊分には上るのではないか、というほどであった。

 さすがにそれだけの数となると、冒険者ギルドに頼んでもキャパシティーを超えることになる。

 それよりは、大人しく国に頼んでしかるべき措置を取ってもらうのが一番だろう、という結論に至ったのだ。

「しかし……ここのアジトは他のアジトよりも敵が多いですね」

「マーキングしたサキュバス達も、四割近くはここに戻って来たみたいだからね。敵の気配も前二つよりもかなり多いし――多分、規模としてはここが一番上なんじゃないかな?」

「そうか? それじゃ、前のアジトでは二手に分かれたけど、今回はまとまって動いた方がよさそうだな」

「そうですね……。私も、これだけ数が多いと、さすがに不測の事態が起きた時にお嬢様を守り切れる自信がありません」

 迫ってくる敵の数の多さに、わずかながらコーネリアが顔をしかめれば、ルルネが即座に分析結果を報せる。

 それを聞いたカイルが意見を述べれば、今度はコーネリアがエレノアを守りながら効率の良い戦い方をするのには、それが最適だろうと頷きを返した。

 それほどまでに、これまでの二つとは状況が違った。

 コーネリアの同意を得たカイルは、このやり取りで決まったことをアネットに伝えるべく声を掛けた。

「決まりだな。んじゃ、俺は殿を務めるから、アネットさんは前衛を頼む」

「あ、はい。わかりました」

 戦い慣れていないまま、三つ目のアジトまでついて来てしまったエリスのことを気にかけていたアネットは、しかし話はしっかりと聞いていたのか、前方への警戒をそれまでよりも強めた。

 そして、そのアネットに気にされていたエリスはというと、彼女も彼女なりに、びくびくしながらではあったものの、索敵要員として役に立とうと必死に周囲の様子を探っていた。

 具体的には――

「アネット、あそこの右の部屋、夢の世界から様子をうかがっているサキュバスがいるみたい」

「わかったわ、気を付ける」

「カイルさん、後方からサキュバスが近づいて来てます。夢の世界から、奇襲を仕掛けてくるみたいです」

「マジで? うわぁ、夢の世界からとか、私わかんなかったから助かった」

「エレノア様、この先に集団が夢の世界で待ち構えています。多分、ルルネさんの魔法だと……」

「わかったわ、『シールドバリアー』を張り直しとく」

 と、こんな感じで、夢の世界に潜むサキュバス達を逐次報告し、敵の奇襲攻撃をことごとく防いでいた。

 さすがに夢の世界などという、人にとっては理解できない謎空間のことなど、アネットやルルネであっても察知するのは難しかったようで、急速ながらサキュバスとしての第六感が発達しつつあるエリスはこの場においては斥候として、彼女たちを差し置いて最も活躍している状態だ。

 もっとも、それは先に制圧してきた二つのアジトよりも、敵の練度が高いという事も示しており、相手が単独ならともかくとして、ほとんどが前衛と後衛に分かれた集団陣形を組んでくるため、前衛だけではさばききれないことがほとんどだった。

 ――相手の後衛が持つ武器が、弓ではなく銃であった、というのも大きな問題点の一つだ。

 射出用のマジックポーションが封入された、いわゆる薬莢と弾頭が一つになった『魔弾』。

 当然ながら一度射出してから射出までの時間を鑑みても、ルルネが普通に魔法を撃つより早い時間で、三、四発がエレノア達の者へ到達してしまうことは明らかだった。

 ――サキュバスが持つ銃、一丁当たりのカウントだ。よって、二人いれば迫る魔法弾はさらに増えることになる。

 明らかに、分かれて行動していたら苦戦を強いられていただろう。

 しかし、それはすなわち、このアジトが王都におけるサキュバス達の本拠地であることも示唆している。

「……さすがに、疲れてくるな。エレノアさんの店に奇襲に来ていたサキュバス達、全体のどれくらいだったんだろうな?」

「わからない。けれど、店の前で倒したサキュバスに匹敵するくらいはいるんじゃない?」

 先の奇襲で撃退に成功したことで、逆にサキュバス達には大打撃を与えることができただろうし、もしかしたら放っておいても王都から逃げ出すかもしれない。

 そう考えていたエレノア達であったが、実際はまだそこそこ余力が残っていたのだ。

「多分、今夜の奇襲が失敗に終わった時、ケアをするために残しておいた人員なのかもしれないけれど……」

「これじゃ、サキュバス達も王都からは逃げないだろうな。むしろ、時間が経てば再び好き放題始めるだろう」

「逆奇襲して正解だったね」

「まったくだな」

 無論、サキュバス達の怪我の具合からして、完全に復調するサキュバス達は奇襲に参加した数の半数にも及ばないだろう。

 それでも、後方支援としてはいまだ動けるだろうし、あるいはサキュバス達の本国と連絡を取られ、増援を呼ばれる可能性だってありうる。

 そうなれば、せっかくサキュバス達の奇襲を乗り切ったというのに、事態はむしろ悪化していたことだろう。

 その可能性を鑑みれば、眠いのを承知でアジトに乗り込んだのは英断だったな、とエレノアは自分たちの判断をそう自評した。

 カイル達も、それには全面同意だったようで、カイルのみならず、全員がエレノアに頷きを返した。


 そうして三つ目のアジト内を探索していき、ワープして到着した階の探索を済ませると、探索中に発見した玄関ホールらしき場所で次に探索するべき階層を話し合った。

 探索して分かったのは、このアジトは昔は何らかの形で使われていた屋敷であったという事だった。

 何階建てであるかはまだわからないものの、探索を終えた階の広さを鑑みてもそれなりに大きいことは確か。

 普通に考えれば、誰かが管理していてもおかしくはない規模なのだが――こうしてサキュバス達が占拠している以上、王家はもちろん、貴族たちからも忘れ去られていることだけは確かだろう。

 そして、エレノア達がワープしてきたのは、窓の外を覗いたところ、屋敷の一階であることが分かったのだが――実は、探索中に玄関ホールにある階段とは別に、アジトの隅っこに地下へと向かうくだり階段を発見したのだ。

 他のアジトにはなかったもの。それだけで、このアジトがサキュバスにとっても特別であることがうかがい知れた。

「はてさて……上に行くべきか、下に行くべきか……」

 考えている間にも、上階で異変に気付いたか、夢の世界経由でエレノア達の急襲を報されたサキュバス達が迎撃準備をしていることだろう。

 話をする時間はそれほどなさそうだった。

「…………私、ちょっと地下が気になります……」

 最初に意見を言ったのは、エリスだった。

「地下が……?」

「はい……。他のアジトにはなかったですし……それに、私が監禁されていた場所も、こんな内装じゃなくて……」

「もっと無機質だった、とか……?」

「はい…………」

 もしかしたら、その地下室は、エリスが捕まっていた牢獄なのではないかと彼女は考えたらいい。

 エレノアは、エリスの話を聞いて少し考えたのち、

「……ルルネさん、地下には人の気配は?」

 ルルネに地下の様子を探ってもらった。

「…………少なくとも、生き物らしい魔力反応はこの階と上からしか感じられないかな」

「そう…………それじゃあ、とりあえず地下も後で調べるとして、先に飢えの敵を倒していきましょう」

「そうですね。調査をするのは後でもできますし……今は、とにかくやるべきことをやらなければ」

 そもそも、ここは敵地だ。

 制圧も終わっていないのに、むやみに必要のないところへ向かうのはあまり得策ではないと判断し、エリスの意見は後回しにすることにした。

 エリスも、地下室が気にはなったものの、絶対に調べたいというわけでもなかったのか、大人しくエレノア達の判断に従うことにしたようである。

 そうして一同は、多くのサキュバスが待ち構えている二階へと歩を進めた。


 二階からは、よりサキュバス達の攻勢も激しくなった。

 一階と同じように統率の取れた陣形で襲い掛かってくるというのはもちろんあった。

 だが、それ以上に厄介だったのが、まず二階で待ち構えていたサキュバス達は、前衛は大なり小なり盾を持っており、アタッカーとタンクに分かれていた点。それから、後衛も、魔法銃を二種類持っていた点だ。

 特に後衛が持っている魔法銃は、片方は一階でも見かけた、ライフルタイプの物だったが、もう片方は散弾銃タイプのもので、それも中~近距離戦用としているためか、うかつに近づこうとすると容赦なくゼロ距離での魔法散弾を受けることになるので、ルルネに任せるしかなかった。

 そうして二階、三階の制圧も一階より若干苦戦しながら進めていく。

 とはいえ、カイル達、高ランク冒険者と元高ランク冒険者がいるので、苦戦といっても少し手間取る程度で、順調なことには変わりなかったが。



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