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わらしべ聖女様 〜TS転生放逐令嬢の奮闘記〜  作者: 何某さん
アキナイ、戦い、Reversible
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Forts of succubusを電撃攻略せよ:1


 戻ってきたルルネに、カイルはこれまでの話し合いの内容をルルネに伝えた。

 ルルネは、最初はうんうんと理解しているのかいないのか頷き続けるばかりであったが、一頻り彼の話を聞き終えると、なるほどね、と呟いて、

「まぁ、連中を放っておけないって言うのには私も賛同できるしね。まぁ、連中に片っ端からマーキングしといたから、エリスさんの案内なんてぶっちゃけいらないんだけど」

 と宣った。

 この発言に、エレノア達は目を白黒させて首を傾げ、ルルネと付き合いが深いカイルのみが、訳知り顔でそういえばその手があったな、と頷きを返す。

「ルルネさん、なにかいい手があるの?」

 事情を知らないエレノア達を代表して、エレノアがルルネに詳細を聞と、ルルネは待ってましたと言わんばかりに口を開いた。

「いい手と言うか……まぁ、繰り返しになるけど、エリスさんの道案内は必要ないんだよね、私がいれば」

「どういうこと?」

「うーんと、私が祝福で授かった魔法の中に、『時空魔法』って言うのがあるんだけどね」

「『時空魔法』……時間と空間に作用する魔法、だったかしら」

 エレノアは、いいながらゲーム知識から該当する魔法をいくつかピックアップした。

 ゲーム『ツイント』においては、時空魔法という分類は設定の端っこの方に存在するのみで、ゲーム自体にはほとんど絡むことはなく。

 あったとしても、いくつかの魔法――素早さを上げる『クロノスブレス』や逆に低下させる『スロウスタイム』、そしてRPGおなじみの移動に関する魔法として『テレポート』くらいである。

 しかし、ゲーム設定として存在するなら、それが現実となれば『時空魔法』というくくりに収まる魔法は他にもいくらでも存在する可能性があるだろう。

「私が知ってる範囲だと、『テレポート』と『クロノスブレス』、『スロウスタイム』くらいなのだけど……」

「あぁ、うん。そのあたりは有名どころだよね。術式も簡単だし、時空魔法の中では祝福で授からなくても、比較的使える人は多い魔法だし」

「そうなの……」

 言われて、確かにゲーム中でも王太子とシリカ、そしてエレノアルートの魔法使いキャラが覚えていたはずだとエレノアは思い至る。

 いずれも、レベルが低いうちにレベルアップで習得するので、簡単な魔法と言われて納得できるものであった。

「で、私が使おうとしてるのは、『ハイパームーブ』っていう魔法ね」

「『ハイパームーブ』……?」

「そ。離れた二点の間の空間を歪めて超空間を作り出して、近道をする魔法だよ」

「へ、へぇ~、そんな魔法があるの……」

 前世でその手の瞬間移動は見慣れていた話だったため、エレノアはそれだけですぐに理解することができた。

 いまいちイメージを掴めていないコーネリア、エリス、アネットの三人に対して、ルルネはよりかみ砕いた説明をしていった。

 曰く、起点と目的地を地図上に記載して、その地図を折り曲げる。すると、平面状では距離が離れていなくても、立体的に見れば結果的に距離は縮まるという説明に、理解が及ばなかった三人もなんとなくだが、飲み込むことはできたようであった。

 なお、ルルネはその下位互換である『ショートランド』と『ワープウォーク』という魔法も当然使えると言っていたが、これらの魔法と『テレポート』には決定的な違いがあるとも説明した。

「『テレポート』は、あれは『霊脈』って言う、『ショートランド』とかとはちょっと原理が異なる()空間を抜けて目的地に転移する魔法だからね。原理としては全く別物だよ」

 そして、難易度としては難しい計算が必要な『ショートランド』などより、思い浮かべた霊脈に瞬間移動する『テレポート』の方が万倍楽な魔法なので、単純に訪れたことのある離れた街などに移動という意味であれば、『テレポート』の方が圧倒的に有名だとルルネは言う。

「ま、とにかく、私はその『ハイパームーブ』って言う魔法を使えるんだけど……これば、なかなか扱いの難しい魔法でね。普通は打ち込んだマーカー(・・・・)目掛けて跳躍するって言うのがベターな使い方なんだけど……」

「…………あ! もしかして、そのマーカーを……」

「そ。さっきの戦いで、片っ端に連中に向けてマーキング用の魔法を使ってたの」

 だから、サキュバス達の同行は探りたい放題だと、ルルネは得意げに語った。

 それを聞いたエレノア達は、多分ルベルト王国が他国と戦争状態になったとしても、彼女一人いれば敵国の動きは筒抜けになるんだろうな、と思い、背筋が寒くなるような錯覚にとらわれた。




 王都にいくつか点在する、貧民たちの吹き溜まり。

 エレノア達は、話し合いの結果、エリスがサキュバス達に連れ去られた際に連れてこられたというこの地区へと訪れていた。

 今夜中に王都中のサキュバスのアジトを少数人数で壊滅させるとなると、普通なら体力的にも魔力的にも問題が出てきそうなものである。

 が――体力的な問題はともかく、魔力に関しては、やはりエレノアがこの場にいることで簡単に解決策が打ち出された。

 彼女が保管している魔力回復ポーションの量たるや、もはや魔力切れなどあってないようなものとなってしまうのだから。

 単身では回復一辺倒の役立たずだが、パーティ戦力が整えば途端に真価を発揮する。今のエレノアは、まさしく『ツイント』でのエレノアそのものであった。

 かくて、エレノア達はルルネの魔法『ハイパームーブ』による歪曲空間移動により、マーキングされたサキュバスのもとへとワープすることになった。

 メンバーは、エレノア、コーネリア、アネット、カイルにルルネの、戦闘ができる五人。それに加えて、戦闘経験が全くない、エリスもついてくることになった。

 エリスを連れてきたのは、ルルネの報告を受けた冒険者ギルドから派遣されてくるかもしれない冒険者の、無駄な誤解を防ぐためである。

 決して無理強いして戦闘要員として連れてきたわけではない。

 さて、彼女たちが最初に向かったのは、エレノアの店から最も近い場所にある、東地区のスラムにあるサキュバス達のアジト。

 すでに帰投し、傷ついたサキュバス達のもとに、エレノア達は歪曲空間から唐突に現れる形で出現し、地獄の淵から生還したと思っていたサキュバス達を錯乱させることに成功した。

 ――もちろん、手っ取り早い手段を選んだだけで、エレノア達に実際にはそんな意図などなかったのだが。

「なっ……エレノア、レーペンシュルク…………?」

「て、敵襲……!?」

「大変っ、敵襲よ――――――――!」

 ひとまずアジトに帰り着き、治療魔法の使用できるサキュバスの治療を受けていた李、また薬剤や包帯などによる応急処置を受けていたサキュバス達が、声を張り上げて緊急事態を伝える。

「うるさいっ!」

「きゃっ!」

 無論、それを許すほどカイルやルルネ、アネットは冒険者として甘くはない(アネットは元冒険者だが)。

 また、相手は人間や亜人並みに高度な知性を持つ魔族とはいえ、それでも敵対種族であることに違いはない。

 逆奇襲をかけたのはカイル達で、錯乱状態に陥れたのもカイル達だが――それでも、相手が投降していない以上、カイル達に手加減という言葉は思い浮かばなかった。

 無論――サキュバス達にとってはたまったものではない。

 取り乱すサキュバス達に無言で襲い掛かるカイルやルルネ、アネット達に、サキュバス達は非難の声を上げる。

 これに応えたのは、アネットであった。

「いきなり攻め込んできた挙句、問答無用で攻撃してくるなんて、あなた達に心はないの!?」

「そうですよね。普通なら、褒められたことではないでしょう。ですが……あなた達だって、先ほどは同じことを私達にしたでしょう?」

「…………っ」

「なら、やり返されても文句は言えないですよね?」

 もちろん、投降するなら命までは奪いませんが。

 そう言い返しながら、サキュバスに非難されたアネットは容赦なく、その短剣を対話していたサキュバスの首めがけて振り抜いた。

 鋭利な凶刃は、アネットにまるで抵抗を感じさせないまま、サキュバスの首を斬り分け、血の噴水を作り上げた。

 わかりやすい形で己たちの窮地を強制的にわからされたサキュバス達は――青い顔になって、次々と両手を上げて、降参の意思を示していった。

「…………、威勢よく私達のところに攻め込んできた割りに、なんてあっけないのかしら……」

「ふ、普通、敵がいきなり現れて、うろたえないわけがないでしょう……」

「同じことを先にやってきた奴が、なんか言ったかしら?」

「イエ、ナンデモアリマセン……」

「ふんっ」

 これ見よがしに、魔法でサキュバス達を拘束しながら精神的に攻撃するルルネ。

 そして、そんなやり取りが行われていた部屋の外。

 エレノアは、コーネリアとエリスを伴ってカイル達に先立って、超空間で繋げた先の部屋から廊下らしき場所へと飛び出し、彼女も彼女で割とえげつないことをやっていた。

 彼女は、歪曲空間から出て、サキュバス達が大声を張り上げた時点で部屋の外へ飛び出ると、サキュバス達の悲鳴を聞いて駆け付けた別のサキュバス達に対し、『ホーリーウエーブ』で迎撃を行ったのだ。

 それも、追加の増援が駆けつけるごとに、断続的に。

 おかげで、先着したサキュバス達ほど、より多く『ホーリーウエーブ』を浴びることになってしまい、早々に死屍累々の状況を作り上げてしまったのである。

 この光景を見て、エレノアはもはやシリカよりも実力が上なんじゃないか、とうぬぼれかけた者の、それを早々に否定した。

 なにしろ、エレノアは今頃シリカが相対しているであろう強敵のことを、前世知識で誰よりも知っているからだ。

 エレノアが思い浮かべた敵と比べれば、一兵卒がいくら集まったところで、魔力回復ポーションがふんだんにある以上負ける要因がなかった。

「お嬢様、魔力回復ポーションです」

「ん、ありがと……さて。んじゃ、ちょっくら巡回して、残りのサキュバスを駆逐してきますかね……」

「はい。私もお供いたしましょう。いざというとき、前衛がいないのでは困りますからね」

「ありがとう」

 自ら進んで前衛を申し出てくれたコーネリアに、

「あ、そ、それなら……わ、わわ、私も、連れていって、ください。奴らと同じになったせいか、なんとなくですが、相手のいる位置が感じられまして……」

 と、勇気を出して索敵要員を申し出てくれたエリス。

 二人を伴って、エリスは最初のアジトの攻略に乗り出した。

 エリスが行くのならと、アネットもこれに加わる。

 他方、カイルとルルネは歪曲空間の出口となった部屋に拠点を敷くことにしたらしく、その攻略拠点の防衛に回るとエレノアに言った。

 前世で多数のRPGに触れ、回復ポイントが存在するダンジョンにおけるそれの重要性を思い知っているエレノアは、カイル達に最高位の感謝を示して、攻略拠点を後にした。

 ――なお、エレノア達が拠点を確保したことで、その隣にある、補給物資が置いてある倉庫までも勢力圏に置いてしまった。

 このアジトに帰投してきたサキュバス達は、エレノア達の逆奇襲を許した時点で、補給手段すら潰されてしまったのである。

「エレノア様、早速サキュバス達の気配が近づいてきます……」

「そう……数は?」

「多分、五人くらいだと思います」

「なら、やっぱり『ホーリーウエーブ』かなぁ……なんかチーププレーになっちゃってるけど……」

「お嬢様、お遊びではないのですから……」

 コーネリアにたしなめられながら、エレノアは若干離れた状態から魔法を放ち、サキュバス達を無効化する。

 無力化したサキュバス達は、倉庫から拝借した縄で縛り上げ、抵抗できないようにした。

 ルルネとは違い、エレノア達の中には拘束するための魔法を使用できる者はいないのである。

 そうして敵拠点内のサキュバス達を、蹂躙するかのように一方的に下していき、エレノア達は最後に『拠点指令室』と書かれた扉の前で足を止めた。



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