一日目①
覚醒して最初に覚えた感覚は、違和感。
いつもとはなにかが違う、という感じが強くする。
強いて言語化するならば、世界になんらかの劇的な変化が起きた、というような。
フランツ・カフカの『変身』に登場するザムザ青年は、気がかりな夢から覚めたあとで自分が毒虫に変わっていることに気がついたけど、僕は夢を見なかった。少なくとも、記憶に残るような鮮明な夢は。もちろん、毒虫に変身していたわけでもない。手を見て、胸と腹を見下ろして、掛け布団を蹴り飛ばして下半身までこの目で確認したから、それは揺るぎない事実だ。
速やかに着替えを済ませ、机の上のスマホを手にとる。世界に起きた劇的な変化とやらの詳細を把握しておきかったのではない。アカウントを取得しているSNSにアクセスし、フォローしているユーザーの昨夜から今朝にかけての動静を確認するという、毎朝の日課をこなそうと思っただけだ。
アプリを立ち上げると、現在インターネットに接続されていない、という表示が出た。Wi-Fiの調子が悪くなることはたまにある。いつものように、別ルートから接続を試みたものの、どういうわけか繋がらない。
「……おかしいな」
首を捻ったけど、そのときはまだ、「なんらかの劇的な変化」が起きたと本気で信じたわけではなかった。
まあ、たまにはこんなこともあるだろう。心の中でつぶやき、朝食をとるために一階に下りる。
ダイニングには、両親も、妹の真由瑠もいなかった。いるはずの人がいないだけで、空間はどこか寒々しく感じられる。
同時に、違和感も覚えた。朝が弱い真由瑠はともかく、仕事がある両親が僕よりも起床が遅いなんて。
そういえば、今は何時なのだろう。
リビングのアナログ式の掛け時計を見上げると、止まっている。短針も長針も真上を指した状態で、琥珀の中の昆虫のように微動だにしない。
背筋を悪寒が駆け上がり、全身に鳥肌が立った。
時計は今年買い換えたばかりだから、故障だとは考えにくい。壊れたのだとしても、二十四時間の中で最もきりがいい時間に動かなくなったというのは、偶然にしてはできすぎだし、ひどく意味深だ。
インターネットも使い物にならなくなったことを考え合わせると、とても嫌な予感がする。
まるで、世界になんらかの劇的な変化が起きたような――。
落ち着け。落ち着け。落ち着け。
深呼吸を何度かくり返し、下りたばかりの階段を上がる。足が震えているせいで、一段目にかけた右足を踏み外してしまい、脛を打った。痛むその箇所をさすりながら、なおも自らに言い聞かせる。
落ち着け。落ち着くんだ、高柳秀真。世界になんらかの劇的な変化が起きた? そんなこと、あるわけないじゃないか。ゲームやマンガじゃあるまいし。僕が生きているのは、平穏だけど平凡でつまらない世界だ。予告もなく、一瞬にして激変するなんて、そんな非現実的なことが……。
慎重に歩を運ぶことを余儀なくされたせいで、二階に辿り着くまでにひどく時間がかかってしまった。少し足を速めて妹の自室に直行する。
「真由瑠!」
ドアをノックしながら大声で呼びかる。
「真由瑠! 愚図愚図してると遅刻するぞ! 真由瑠!」
返事はない。気配も感じられない。
右手を動かすのをやめる。鈍色に光るドアノブへと視線を落とす。
真由瑠の部屋のドアの鍵は壊れている。詳しい理由は把握していない。今春に中学一年生になったばかりの妹は、腕力はないけどがさつな性格だから、きっと乱暴にドアを開け閉めして壊したのだろう。
「早く直して」という真由瑠の要請に、父親は業者に頼るのではなく、ホームセンターで調達した工具を使って自力で直そうとした。しかし、素人の技術と知識では思うようにいかず、その結果が現在のドアノブの状態だった。
真由瑠に文句を言われながらも、父親が自分の力で解決を図ろうとしているのは、娘にかっこいいところを見せたいからだ。母親も似たようなものだ。かっこをつけないかわりに、過剰なまでの愛情を娘に注いでいる。
父親も、母親も、真由瑠のことが大好きだ。
……僕とは違って。
「真由瑠! 入るぞ!」
不愉快な想念を吹き飛ばすように大声を張り上げ、ノブを回してドアを全開にする。
ベッドはもぬけの殻だった。掛け布団は持ち主の胸のように真っ平らで、小柄な真由瑠といえども中に潜むのは不可能。
どこかへ出かけた? 真由瑠のこれまでの生活パターンと、朝の弱さを考えれば、その可能性は限りなくゼロに近いはずだ。
ならば、どうなった? どこへ行ったというんだ?
……まさか、消えた?
これが、世界に起きた劇的な変化だとでもいうのか?
全身から脂汗が噴き出した。絶叫を張り上げなかったのは、奇跡としか言いようがない。居ても立ってもいられず、同じ階にある両親の寝室へと走る。
「父さん! 母さん!」
ハンマーを打ちつけるように拳でドアを連打する。
「真由瑠が消えた! 起こそうと思って部屋のドアを開けたら、ベッドからいなくなってる! やばいって! 父さん! 母さん!」
父親は神経質な性格だから、僕自身、夜間に不要な物音を立てて叱られたことが何度もある。母親は父親ほどではないけど、決して鈍感ではない。加えて、二人とも真由瑠に対しては甘い。
その両親が、強い力で何度も寝室のドアを叩かれ、真由瑠の危機を知らされたというのに、まったくの無反応。
「父さん! 母さん!」
ドアに血がうっすらと付着しているのに気がつき、ノックをやめる。右手の皮が擦り剥けたのだ。
音がやんだことで、呼吸の荒さを遅まきながら自覚した。息を整え、心を落ち着かせる意味から、その場でゆっくりと十を数える。改めて室内の様子を窺ったけど、人の気配も物音もしない。
ドアに背を向け、階段を下りる。右拳の傷は放っておく。血が滴るほどの大怪我ではないし、処置を施すだけの心のゆとりもない。
……なんだよ、これ。
これはいったい、なんなんだ。
まさか、本当に、「世界になんらかの劇的な変化が起きた」のか?
家族がいなくなったということは、人類が滅亡した? 世界が終焉を迎えた? 僕はまだ生きているのに?
いったい、世界でなにが起きているというんだ?
ジーンズのポケットから、いそぎがちにスマホを取り出す。直後、インターネットは現在不通だと気がつく。
舌打ちをしようとしたけど、できなかった。
無性に泣きたい気持ちになった。
それでも、感情をぐっとこらえる。駄目元でインターネットを観覧しようとしたけど、結果は予想どおりだった。
歯を食いしばり、階段を駆け下りる。なにかをしていないと、頭がおかしくなってしまいそうだった。
自宅を出て真っ先に、天を仰いだ。
憎らしいまでの快晴だ。五月下旬の朝ではあるものの、肌寒さは感じない。
いつもどおりの、いつもとは違う朝。
県道へと続く細道を道なりに進む。家を出てから三分ほどが経っただろうか。犬の散歩やジョギングをする人たちと擦れ違うことも多い道だけど、誰とも出会わない。民家の前を通っても、屋内で人が活動している気配は感じられない。朝にはつきものの鳥のさえずりが聞こえてこないから、怖いくらいに静かだ。
人気がないのは、たまたま。両親と真由瑠はなにか用事があって、朝早くから三人で出かけているだけ。両親は真由瑠贔屓だから、僕のことを軽視して、メッセージを残すひと手間を怠けたのだ。
世界が終わってしまった? そんな馬鹿げたことが起こるはずがない。
県道は交通量が多く、朝から多くの自動車が行き来している。県道に出さえすれば、真実が明らかになる。世界の終わりが僕のくだらない妄想だと、きっと証明してくれる。
そう信じながらも、目的地へ向かう足取りは重たい。アスファルトの地面を踏みしめるたびに、体に小さなダメージを受けているかのようだ。おまけに、軽い腹痛にまで苛まれはじめた。
これらの症状と感覚がなにを意味するのかは、考えたくもない。
だから、ただ足を交互に動かす。心を空にして、完全にまっさらにするのは無理でも、できるだけ空っぽになるように心がけて、道を先へと進む。
九十度近い右曲がりのカーブを曲がり、県道に出た。
ああ、と思う。
片側二車線の道路を通行している自動車は、一台もない。歩道を通行している人間、走行している自転車、どちらも見当たらない。
さらには、信号が点っていない。車両用信号も、歩行者用信号も。それにとどまらず、コンビニの明かりまで。
本当は、もっと早い段階で分かっていた。カーブを曲がりきるまで道の様子は見えなくても、音は聞こえる。カーブを通行している最中、僕は自動車の走行音を聞かなかった。
両脚が震え出した。厳密には、今までも微かに震えていたけど、歩くのに支障はなかった。しかし、もはや一歩も歩けない。
世界が終わった。
みんな消えてしまった。
ただし、僕を除いて。
……なんなんだ。
なんなんだよ、この前代未聞の異常事態は。
「なんらかの劇的な変化が起きた」気がしたのはたしかだ。たしかだけど、それが正解って、紛れもない現実って、有り得ないだろ。
なんで、こんなことになったんだ?
文字どおり、世界が終わって、みんなが消えてしまうなんて。
僕にとって、この世界はひどくつまらないものだった。家族のことは嫌いではないけど、愛してはいなかった。
だけど、滅びろと願ったことはない。消えろと念じたことはない。世界はひどくつまらないけど、僕が生きていかなければいかない場所。みんなのことは愛していないけど、付き合っていかなければならないもの。そう認識していた。
それなのに、こんなことになるなんて。
路上の一点に立ち尽くしたまま、どれくらいの時間が流れたのだろう。
両脚の震えがようやく収まった。そのあいだ、通行人も、通行車両も、まったく目にしなかった。
混乱と動揺は完全には収まっていなかったけど、長い時間一点に佇みつづけて、分かったことが一つある。
この場に留まりつづけても、事態は一向に解決しない。それどころか、心に安心をもたらす情報に接するチャンスすら得られない。
ならば、とるべき行動は一つしかない。僕は移動を開始した。
歩行自体に差し支えはないものの、足に充分な力をこめることが難しく、地面を踏みしめるたびに体が左右に揺れる。飲酒経験はまだないけど、酔っ払うとこんな感じなのかもしれない。
全然楽しくない。苦しいだけだ。不味くて、悪酔いするだけの酒を、僕は飲まされた。
誰でもいい。誰だって構わないから、一秒でも早く、僕を悪夢から解放してくれ。
僕は世界を諦めきれなかった。愛することができない、嫌々ながらも付き合うしかない人々で溢れた、ひどくつまらない世界のままでも構わないから、存続してほしい。そう願わずにはいられなかった。
世界がまだ終わっていない証拠。この地球上で呼吸をしている誰か。それを得るためには、その人と出会うためには、どこへ足を運べばいいだろう?
自宅に戻っても、家族と再会できるとは思えない。「家族が消えた」という事実を再認識させられる恐怖は、一縷の希望にすがりたい気持ちを上回っていた。だから自宅は、行き先の候補から速やかに除外した。
僕は今、去年の今ごろに完成した長い橋を渡っている。渋滞緩和を目的に新造された橋だけど、僕はその直接の恩恵を受けていない。渡るのもこれが初めてだ。
両親の話によると、朝夕の交通量はかなり多いらしいのだけど、現在は一台も通っていない。時間帯を考えれば、高校に登校する学生たちを見かけてもおかしくないはずなのに、自転車も人の姿も視界には映らない。
やはり、世界は終わってしまったのだ。
否応にもそう感じさせる、寂しい風景の中を、僕はたった一人で歩いている。橋の上で風が強いので、余計に寂しい。のみらなず、惨めな気分でもある。「高校に人がいるか否かをたしかめる」という目的を持っていなければ、突然奇声を上げて頭をかきむしり、欄干を乗り越えて川に飛びこんでいたかもしれない。
橋の半ばに差しかかったところで、欄干に体を寄せて川を覗きこんでみる。川床の石の凹凸が見えるほど、水の透明度は高い。しかし、泳いでいる魚は一匹も見つけられない。
まだ朝で水温が冷たいから、岩陰に身を潜めているのだ。そう自分に言い聞かせたけど、虚しさがこみ上げただけだった。欄干から体を引き離し、強くなりはじめた風の中を再び歩き出す。
橋を渡りきり、さらに五分ほど歩くと、僕が籍を置いている県立高校に到着した。
正門のスライド式の門扉は、開いていた。校舎の明かりは灯っていない。敷地内に足を踏み入れた僕は、明らかに緊張していた。普段は朝早く登校することはないし、速やかに帰宅する。人気のない学校を歩くのはこれが初めてだ。
運動部員たちが不在のグラウンドは、静寂と空虚さに支配されている。時間帯を考えれば、いずれかの部活に所属する生徒が朝練をしているはずなのに、誰もいない。
絶望感に押しつぶされて、足が止まりそうになる。それでも懸命に気力を振り絞り、歩きつづける。
校舎の出入口の戸は開いていた。
中に入ろうとして、全身が硬直する。
精神的にも肉体的にも過度の緊張を強いられるような、背筋が冷たくなるような、そんな空気が蔓延しているのが肌に感じられる。身を置く時間が長引けば長引くほど、建物の奥へ進めば進むほど、プレッシャーが高まっていきそうな雰囲気だ。
校舎には決して足を踏み入れてはならない。そう誰かから警告された気がした。
体を百八十度回し、校舎から遠ざかる。異様な雰囲気から離れれば離れるほど呼吸が楽になっていく。
昨日まではなんの変哲もない校舎だった空間が、いつ、どのようにして、どんなふうに変わったのかは分からない。ただ、距離を置くという選択は正しかったと断言できる。
しかし。
校舎が駄目となると、僕はどこへ向かえばいいのだろう? どこへ行けば、世界が終わっていない証拠や、生きている人間に出会えるのだろう?
新旧二棟の校舎のあいだ、なにもない空漠としたスペースの中央で足を止め、沈思黙考する。やがて浮上した選択肢は、
「……体育館」
今春に東北地方で発生した大震災にまつわる記憶が思い出される。学校の体育館が避難所として解放され、多数の市民が肩を寄せ合っている光景を、僕はテレビのニュース番組で何度も見た。
この町は災害に見舞われたのかもしれない。避難指示が出されたけど、なんらかの理由から僕だけが逃げ遅れてしまい、僕以外の住人はみな高校の体育館で身を寄せ合っている。世界が終わったわけでも、人類が滅亡したわけでもないけど、大規模な災害が発生し、多数の死傷者が出るなどして、世界は未曽有の大混乱に陥っている。――混乱している頭が導き出したにしては、現実味がある予想ではないだろうか?
細かな疑問は胸にしまって、真実をたしかめるための行動を起こすべきだ。小さく一つ頷き、来た道を引き返す。
正門を出ると、片側一車線の舗装道路が左右に走っている。横断した先にあるのは、教職員用の駐車場。停まっている車は一台もない。殺風景な空間を奥に向かって進むと、二階建ての体育館に行き着く。建物と同時期に造られたはずなのに、老朽化が激しい階段を上る。響く靴音は、心なしか普段よりも甲高い。
二階の出入口、閉ざされた戸の前まで来た。
中から物音は聞こえてこないし、人の気配も感じられない。ただ、戸は分厚いので、希望はまだ残っている。
誰でもいい。誰だって構わないから、戸を開いた先の空間にいてほしい。ただそれだけで、世界がどうなってしまったのだとしても、僕は生きていける。
取っ手に手をかける。戸が重たいからといって、中途半端に開けて、隙間から見えた光景に失望したくない。「せーの」のかけ声とともに一気に全開にする。それがいい。そうするべきだ。
両手の指先に力をこめる。両脚の震えが完全に鎮静した。息を深く吸いこみ、長く吐き出す。最低限、心が整った。
せー、のっ。
可能な限り素早く、大きく、重厚な戸を開け放つ。
仄暗かった。埃っぽかった。この暗さでは中の様子がよく分からないし、体育館は埃っぽさとは無縁だったはずだ。二重の意味から目を凝らした。
八畳ほどの部屋だ。壁も床も天井も茶色い木でできている。古めかしい箪笥と、小さな木製の本棚が置かれている。床は足の踏み場もないほど物が散らばっていて、雑然としているというよりも、汚い。マンガ雑誌、スナック菓子の空き袋、脱ぎ捨てられた水色のキャミソール。
部屋の中央へと視線を移動させて、息を呑んだ。
敷き布団が敷かれていて、その上に少女が仰向けに横たわっている。一糸まとわぬ姿で、右手のみを腹の上に載せて大の字になる、という姿勢。僕と同い年くらい、だろうか。耳がやっと隠れるくらいの長さの黒髪。安らかな表情と、規則的に上下するボリュームたっぷりの胸から、眠っているのだと分かる。
体育館の戸を開けたら、なんで汚い部屋があるんだ?
この子は、なんでこんなところで寝ているんだ?
この子は、いったい何者なんだ?
いくつものクエスチョンマークが頭の中を埋め尽くしたけど、すぐに泡のように弾けて消えた。そして、こう思った。
ああ、人だ。
閉ざされていた両の瞼がぱっちりと開いた。大きなあくびをしながら、魅惑的な肉体を見せつけるように四肢を伸ばす。全身のかすかな振動に連動し、小刻みに震える豊かな膨らみから、僕は目を離せない。
少女は緩慢な動作で上体を起こす。僕はちょうど彼女の真正面に佇んでいる。目が合った瞬間、微弱な電流が体を駆け抜けた。少女は呆気にとられたように口を半分開けた。二秒か三秒ほど、その表情のまま固まり、薄桃色の唇を動かす。
「あなたは――」
声を聞いた瞬間、僕の体は自動的に動き出していた。
少女に猛然と駆け寄り、抱きついた。
「えっ? えっ? ちょっと……」
人肌の温もりと、柔らかさと、匂いを感じて、僕の両の瞳から熱い液体が溢れ出した。
人間の体温が、肌の感触が、体臭が、こんなにも尊くて、こんなにも愛おしいものだったなんて、今まで知らなかった。
こみ上げてくる感情に、少女の背中へと回した両腕の力を強める。今、頬に感じている柔らかな感触は、胸の膨らみだろう。我を忘れるあまり失念していたけど、彼女は裸だった。
少女は抵抗こそ示さないけど、赤の他人に抱きつかれたのが嬉しいわけでは断じてない。羞恥の念や不快感よりも、困惑が圧倒的に強いせいで、結果的に無抵抗なだけ。そんなことは百も承知だ。
でも、もう少し、もう少しだけ、このままでいたい。
愛おしさのあまり、首を小さく左右に振って、ふくよかな膨らみに頬をこすりつける。何度も、何度も、僕はそうした。
くり返すうちに、髪の毛になにかが触れた。少女が僕の頭を撫でてくれているのだ、と少し遅れて理解する。
頬ずりをするのをやめて、愛撫に身を委ねた。




