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 母が立ち上がって、私の側に来る。


 両手で私の両肩を掴んだ。


「しっかりしてちょうだい!!」


 母の大声。


 私の胸がチクチク痛んだ。


「ごめんなさい」


 私は素直に謝った。


「お父さんとお母さんには迷惑かけっぱなしだもんね…この部屋も…家事だって…本当にごめんなさい」


 私も涙が出てきた。


 とても苦しい。


 心が痛い。


「それは良いんだよ」


 母の口調が元の優しさに戻った。


「その事を言ってるんじゃないの。それはゆっくり考えれば良いからね」


 母が私の握り合わせた両手に、そっと触れる。


 温かい。


「ありがとう、お母さん。大好きよ」


 自然と言葉が出た。


 微笑んでたお母さんの顔が歪む。


「それよ」とお母さん。


「何?」


「どうして女言葉で喋るの」


「え!?」


 私はビックリした。


 また、お母さんがおかしくなった?


「どうしてって…私、女だもん」


 母の顔が一瞬で険しくなる。


 母の手が、私の手を痛いぐらい強く握る。


「お前は男だよ、文彦」


「は? 私は女だよ。それに文彦は彼氏の名前。私は由梨でしょ」


 お母さんが、また涙をこぼす。


「由梨ちゃんとは…お前が会社を辞めたときに別れたでしょ。しっかりして!! お前は文彦だよ!!」


 わー。


 とうとう、お母さんが本当におかしくなっちゃった。


 私のせいだよね…ごめんね、お母さん。


「他の事はどうでも良いの! お前が自分を誰だか分かってくれれば、後はゆっくり解決していけば良いんだから! どうして…どうして、こんな…由梨さんにフラレたのが、そんなにつらかったのかい?」


 これは重症だわ。


 娘が誰かも分からなくなるなんて。


「ね、お願いだからいっしょに病院へ行きましょう。きっと良くなる。ちゃんと文彦に戻れるから」


 あー。


 もうヤダ。


 苦しくなってきた。


 お母さん、早く帰ってくれないかなー。


 そうだ!!


 そろそろ文彦が来る!!


 私は立ち上がって、お母さんを玄関へ押した。


 お母さんは必死に抵抗して動かない。


 もう!!


「文彦!! ね、お願いだから!!」


 ああ、嫌だ!!


 もう限界よ!!


 私はお母さんを放って、洗面所に走った。


「文彦!!」


 お母さんが叫ぶ。


 洗面所の鏡の前に立つ。


「由梨」


「文彦!! 来てくれたのね!!」


「由梨、愛してるよ」


「ありがとう!! もう何も要らない。あなたさえ居てくれたら」


「文彦はお前だよ!! 由梨さんはもう居ないの!! 元に戻って、文彦!!」


 お母さんの声が後ろから聞こえる。


 ああ、うるさい!!


 もう、無視よ、無視!!


 お母さんは完全におかしくなった。


 私の眼の前には、とてもハンサムな文彦が立ってる。


 私は嬉しくて笑顔になった。


 同じタイミングで、文彦も私に微笑んだ。




 おわり

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


 ホントに大感謝です(T0T)


 怖く終われたと思います←手前味噌(笑)

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