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母は買い物袋から食材と家で作ってきたおかず入りのタッパーを出し、冷蔵庫に入れた。
「洗い物から片付けるわね」
母は言葉通りに洗い物を済ませ、次に掃除機をかけた。
それから冷蔵庫の食材で料理を始め、いくつかのおかずを作った。
レンジで温めた白ご飯とおかずをテーブルに並べる。
私はひと言も喋らず、それを食べた。
母はその間にリュックサックから私の着替えを出して、入れ替わりに洗っていない衣服を詰めた。
私が食べ終わった食器を母が洗う。
「あのね」
温かいお茶を入れ、私の前に置いた母は、そう切り出した。
何の話かは分かってる。
最近、その話ばかり。
私が1番避けたいのは、これだ。
「やっぱり、このままじゃ良くないと思うの」
ああ、嫌だ。
胸が痛くなる。
母にやって欲しいことは、もう無い。
早く帰ってよ。
「別に生活を変えろって言ってるんじゃないのよ」
母が続ける。
「ただ…今のままは…やっぱりおかしいでしょ」
お願い、帰って。
「とにかく1度、お医者さんに行きましょう。お母さん、心配で心配で」
ああ!!
こんなことしてたら、文彦が来てしまう!!
まだ母には文彦さんを紹介してない。
面倒な事態になるのは見えてるから。
私は思い切った。
「お母さん、もう帰って!!」
母の顔が曇る。
「ねえ、ちゃんと話しましょう」
「いいから、帰ってよ!! もうすぐ彼氏が来るの!!」
母の口がポカンと開いた。
「彼氏って…お前…」
私は母の腕を掴んで、無理矢理立たせた。
リュックサックを押し付ける。
「傘、忘れずにね!」
玄関に歩かせた母の手に傘を握らせる。
「お願いよ、真剣に聞いて」
母の顔が悲しそうに歪む。
「とにかく今日は帰って!! 話なら、また今度聞くから!!」
「本当? 約束よ」
「うんうん。分かったから!!」
私は母を玄関の外へ押し出した。
ドアを閉める。
ふう。
やっと平和が戻ったわ。
これでゆっくり…いけない!!
文彦さんが来るわ!!
早く準備しないと!!