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あの娘はきっとヒロインじゃない  作者: ゴン
第一章 異世界召喚と旅立ち
3/85

003 黒と黒の組み合わせ

話が全然進まない。

こいつら、こんなにしゃべらせるつもりじゃなかったのに…

 あの後、取り敢えずパレードや式典等のイベントに出席しないわけにはいかないという宰相の指示で、お姫様は部屋から退出させられた。


 最後までこちらを気にしていたが、宰相に叱られて兵士に説得され渋々部屋の外に連れていかれていた。


 現状確認のために宰相に問い詰められた姫様が説明していたことを要約すると…




・アルストリア王国の建国の祖は、異世界から呼び出された人間だったという伝承がある。


・今日は年に一度の建国を祝うお祭り"召喚祭"である。


・召喚祭では、王族の女性が形だけの勇者召喚の儀式を王宮で行う慣例がある。


・本当に勇者が召喚されてしまって、みんなびっくり。さあ、どうしよう?




 姫様が部屋を出て行ったのを見送った後、髭をクリクリといじっていた、宰相の男がこちらを向いて話し始める。


「さて勇者様方、私はこのアルストリア王国の宰相、ホレス=ウォルシュ=リットナーと申します。皆様のお名前を伺ってもよろしいですかな?」


 そういって髭の宰相ホレスは、ボサボサ頭のスウェット男に手を向ける。


「俺は、高町仁(たかまちじん)だ」


 簡潔に名前だけを答えた、スウェット男こと高町仁に、ギャルがツッコミを入れる。


「そんだけ? もっとちゃんと自己紹介したほうがいいっしょ!」


「いいんだよ、こいつらがどういう奴らかわかってもないんだ。こっちの情報を多く出すべきじゃない」


 そう言って腕を組んで黙り込む高町仁。

 さっきまで散々無計画に行動していたくせに…


 こいつの服装は上下グレーのスウェット姿だ。

 胸元には炊飯器の絵があり、その下に"eat rice"と書いてある。

 ちょっと意味がわからない。


 足元は裸足だ、裸足でスウェットということは、部屋でゴロゴロしているときにでも召喚されたのだろう。

 髪の毛は目元が隠れるほどに長く伸びていて、髭も濃くはないが伸び放題で放置してある。


「ふ~ん、そういうもんなの? まぁ、アタシは気にしないけど」


 高町仁の発言を無視してギャルは自己紹介を始める。




「アタシの名前はアイカワダイア、相手の"相"と利根川とかの"川"、大きい愛でダイア。相川大愛(あいかわだいあ)、19歳の大学生だよ。今日は合コンがあったからバッチリ準備して出かけたんだけど、家から出てすぐのところで、足元に光る輪っかとか文字とかが、ぶわぁ~って出てきたんだ。それがピカッて光った~と思ったら目の前が真っ白になって……気が付いたらこの部屋にいたって感じ?」


「あ~あ、せっかく医大生との合コンだったのに最悪っしょ。みんなはどんな感じだったの? あ、ちなみ金髪だけど、アタシ日本人だから! ヨロシク~♪」


 そういってランドセルを背負った男の子にウインクをする。

 その顔は別に全然外国人っぽい顔ではない。


 日焼けサロンで焼いたのか、肌はこんがり焼けた、すらりと伸びる細い手足をしており、スタイルが良い。

 女性としては標準くらいの身長だが、ヒールの高いサンダルを履いている様で、高町仁(スウェット男)よりも少し身長が高くなっている。


 髪の毛はアッシュブロンドで毛先をピンクに染めている。

 ウェーブがかかったロングヘアーの前髪を持ち上げて、おでこを出した髪型、ポンパドールだ。


 服装は袖と胸元がシマウマの柄になっている黒いミニのワンピースで、黒のレザーブーツを履いている。

 合コンに行く途中に召喚されたというだけあって、なかなかエロ可愛い感じにまとまっているようだ。




「あ、あの、お…おれは峰岸隆太(みねぎしりゅうた)。12歳、小学5年生だよ」


 そう言ってチラチラと相川大愛に目を向ける隆太。

 あの年頃の男の子に女子大生のギャルはちょっと刺激が強すぎるのだろう。


 峰岸隆太は、小学校の制服と思われる紺色のブレザーと半ズボンを着ており、胸元には黄色い花の形の名札がつけてある。

 それには、"五年三組 みねぎしりゅうた"と書かれている。

 ランドセルはまだ背負ったままだが、黄色い通学帽は脱いで手に持っている。


「おれは、学校の帰り道の交差点で信号待ちしていたんだけど……そこの姉ちゃんの言ってたみたいな光が足元に出てきたんだよ、たぶん魔法陣じゃないかな? ゲームとか漫画でよく出てくるようなやつ、これくらいの大きさの……」


 隆太が両手を広げて大きさを伝えてくる。

 魔法陣は人一人が収まるくらいの大きさだったようだ。


「それがグルグルまわってキラキラって光ったと思ったら、目の前全部が真っ白になって……そんで、そんで……目が見えるようになったと思ったらここにいた」


 そう言い終えると手に持っていた帽子を深く被りなおした。

 話しているうちに現状を把握して怖くなってしまったのだろう、下を見て不安そうにしている。


「大丈夫よ。みんなで協力すれば、きっとなんとかなるから」


 そんな隆太におばあちゃんが近寄って優しく頭を撫でる。



「はじめまして、わたしは山下絹枝(やましたきぬえ)です」


 そう言って被っていた帽子を取り、白髪の頭を下げる。


 白のジャージの上に、黒文字で8と書かれたゼッケンをつけている。

 背筋はピンと伸びていて歳の割には姿勢が良い。

 そしてワインレッドで打面が金色のゲートボールのスティックを持っている。


 背中の半ばまである、長い髪の毛を後ろでひとつに束ねていて、顔立ちはとても優しそうだ。

 どこにでもいるおばあちゃんといった感じで、左目の下にある泣き黒子くらいが特徴だろうか。


「わたしも皆さんと殆ど一緒ね。ゲートボールの試合の合間に会場から少し離れたところで、座って休んでいたら地面がピカッとして……目を開けたらこの部屋だったわ」




 誰も何もわからない。

 そんな状態を確認させられて空気が重くなる。


「おれたち、ちゃんと家に帰れるのかな……ねえ、ここはどこなの?」


 隆太に質問された宰相は顔色も変えずに答える。


「先程も言いましたがここはアルストリア王国。エルヴァ大陸の西南の半島に位置している国です。北東にノルド帝国、北にメーヴ皇国があります。聞き覚えはありますか?」


 隆太はしばらく考えるような素振りをしたが、あきらめたような顔で周りの3人の顔を見る。


「みんな知ってる?」


「あたし地理はダメなんだよねー」

 お手上げといったポーズをとる相川。


「ごめんなさいね、聞いたことがないわ」

 すまなそうにする山下さん。


 一昔前に流行ったドラマの探偵のように、腕を組みながら指をおでこにあてて難しい顔をしていた高町は「やっぱりか……」とつぶやいた後、ゆっくりと話し始める。


「たぶん……だが、現代の地球で帝国を名乗っている国は無かったと思うぞ」


 その答えを聞いて、他の三人は目を見合わせた後、訳が分からないといった感じで視線を高町に戻す。


「帝国っていうのは皇帝が治めている国のことを指すんだが、現代の国家でそういう国は無くなっているんだよ。あえて挙げるならこれに一番近いのは日本だな。外国から見たら天皇は日本の皇帝なんだ。他にはどの国にも皇帝はいない」


 やっぱり異世界召喚ってやつか……予想通りではあったが結構ショックだ。




「つまり……ここは現代の地球ではないってことだろ? 日本、アメリカ、イギリス、中国、ロシア、どれか一つでも聞き覚えがあるか?」


 高町仁が額に指を当てている手を宰相に向けて広げて返事を促す


「いいえ、どれも聞き覚えはありません」

「そうか……やはりな」


 そう答えてから、まわりのみんなを見回してこう言い放った




「とりあえず、自己紹介はこんなところだろう。4人全員日本人みたいだな」




 ……あれ? 俺は?




「さっきアンタ達が言っていたけど、勇者召喚の儀式ってので俺たちはここに連れてこられたんだろ。その責任は取ってもらえるんだよな?」

「ええ、そうですね。しかし、ただいま我が国アルストリアの王宮は、召喚祭で大忙しでございます。色々とおっしゃりたいことございますでしょうが、こちらも年に一度の祭事を中止するわけにはいきません。申し訳ございませんが、しばらくこちらの用意する部屋でお待ちいただけますか?」


 宰相はそう答えてから残っている兵士の一人に部屋の準備と、それぞれ一人ずつに付けるメイドを4人呼ぶように言いつけている




 ちょ…ちょっと、ちょっとまってくれよ……なんで俺を無視するんだよ?


 そう思い焦っていると、宰相と目が合った




「ところで、そこで転がっている男は何者ですか?」


 そう、俺はまだ手足を縛られて、兵士に取り押さえられたままだった


「こいつはサラ様に狼藉を働いた不届きものです! 王族にあんな真似を働いたのです。極刑が妥当だと思います!」


 モーゼスという名前だったか? 生え際がアレな騎士団長がそう主張している。

 そういえば、姫様が出ていく前に俺のこと宰相に説明してなかった気がするな。


 しかし、なんでこいつらは俺をかたくなに処刑しようとしてくるんだ?


「ちょっとまってください! 俺はそこの彼らと同じ日本人です。同じ召喚の儀式でここに呼ばれてきたんですよ!」


 そう言うと、宰相が他の4人に確認をとる


「この男もあなた方と同じ場所からきた"ニホンジン"なのですか?」


 そう聞かれた高町がいぶかし気な表情でこちらを見てくる。


「いや、違うんじゃないか? 俺はてっきりあんたらの国の人間だと思っていたが?」




 ……は? どういうことだ?




「俺達の国、日本は単民族国家で大体は黒い髪に黒い瞳だ。暗い茶色くらいまではいるが、こんな見た目のやつはいないな」



 何を言っているんだ? こいつは



「そうね、外国の方かしら?」



 俺の家は爺ちゃんのそのまた爺ちゃんまでは間違いなく日本人だ。

 今までハーフとすら言われたことなんて……



「違うっしょ。その髪、ビジュアル系バンドのメンバーっしょ! かっこいいじゃん♪」



 ちょ…どうなってるんだ?



「おれも、今までそんな格好の人は見たことないかな~」



 そんな……




「そうですか、とりあえずこの場にいるということは、召喚の儀式が関係しているのかもしれませんが、みなさんと同じ部屋で待機させるわけにもいきませんからね。どうしましょうか……」


 どうやら俺は日本人ではないという判定を受けてしまったようだ。


「おい、ちょっとふざけるなよ! どう見ても日本人だろうが!」


 そう叫ぶと、またもや腕の関節を極められる。


「黙ってろ! 変態野郎が!」


 そしてさらに一発パンチが飛んでくる。


「ぐあっ」


 くそ、なんだこいつら、寄ってたかって俺だけのけ者にしやがって! どうなってんだよ、くそ!

 またもや締め上げられている俺を見て、相川が慌てて近寄ってくる。


「ちょ、やめなって、あのお姫様のサラちゃん? あの娘もその人のこと丁重に扱えって言ってたっしょ!」

「ですがこいつは女性の敵です! きっと強姦魔なのですよ、近寄ってはいけません!」


 兵士は相川に言い聞かせるが、それを無視して俺の目の前にしゃがみ込む相川大愛。


「あんたら、全然姫様の言うこときいてないじゃん! ごめんね~さっきは何かの出し物をこいつらと一緒にやってるんだと思ってたんだよね」


 そう言って持っていたバッグを開けてティッシュを鼻に詰めてくる。

 首の怪我は元々浅かったようで、もう血は止まっていたようだが、怪我の具合を確認してくれている。


「あんた達、お姫様が言ったことを無視しちゃダメだし! わかった?」

「は、っはい! 失礼しました! 以後気を付けます」


 そう言って、急に素直になって言うことを聞き始めた兵士たち。

 どうしたんだと思って見てみると、その視線はしゃがみ込んだ相川のスカートの中にくぎ付けになっている。


 ……こいつら最悪だな。




「よし、とりあえずこんなところっしょ。ほら、綺麗になったじゃん♪」


 そう言って、バッグから化粧用のコンパクトを取り出して俺を映してくる。


「あぁ、ありが…」


 俺は手当のお礼を言おうとしたのだが、コンパクトに映り込んだ自分を見てそれ以上声が出なくなった。


「とりあえずは、おとなしくしてなよ。こいつらもこれ以上バカなことはしないだろうし…ね?」


 そう言って相川は他のみんなの元に戻っていくが、俺はそれに反応を返すことができなくなっていた。


 何も考えられなくなっていた。




「それでは、みなさんはメイドについて行ってください」


 宰相の指示で俺以外のみんなが部屋を出て行くが、俺は何も考えられなかった。

 さっきまで色々と考えていたことがすべて飛んでしまった。


「あなたは、とりあえず地下牢に入っていただきます。サラ様に確認が取れ次第釈放しますので、しばらく待っていなさい」


 召喚された部屋から兵士に担ぎ出されて、地下牢に入れられる間も頭の中は真っ白だった。






 何も考えられなかった。




 姫様のかぼちゃパンツも、


 ハリのある太もものことも、


 全部頭の中から飛んでいってしまった。




 殴られた痛みも、


 兵士への恨みも、


 俺以外の人間からハブられた悲しみも、


 治療をしてくれた時にに見えた相川の履いているパンツの色も、


 前かがみになった胸元からみえたブラの色も、


 バッグの中にみえた「極うす」と書かれた箱があったことも、


 全部全部頭の中から吹き飛んでしまった。






 鏡に映り込んだ俺の顔は、青い髪で緑の瞳をしていた。


 ゲームを始めた学生の頃にメイキングした、あの顔をしていた。


 そう……召喚される直前までやっていたVRMMORPG「ソード&ウィザードリィ」のキャラクターそのものだったのだ。

書いているうちにキャラのしゃべり方とか、性格とか、どんどん変わっていっている気がします。

最初のイメージではこんなキャラじゃなかったのになぁ

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