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現実逃避からの異世界冒険物語  作者: Piro
下級冒険者編
96/385

外伝13 備えあっても憂いあり

久々の外伝です。

12月10日 8:00

ファミリア サンダーバード

「おはようエイラ。」

 ラウラはキッチンに入り、エイラの隣でコフィ(セロでのコーヒーの呼び名)を自分のコップに入れる。

「おはよう、ラウラ。今日もクエスト?」

 エイラは木材で出来たお盆に2人分の朝食を置く。

「ええ。朝ごはんを食べたらギルドに行って、クエストを探すつもり。」

 ラウラはエイラが準備してくれたお盆をテーブルの方へ運ぶ。

「ヒロシはもう出掛けたの?」

「ええ、つい先ほどね。今日はジャック君とレッドボア討伐のクエストをするそうよ。」

「そう…。」

 ラウラはコフィを飲みながら、少し心配そうな顔をした。

「ヒロシ君が心配?」

「な!心配な…いや確かに心配ね。新米の頃、私達もレッドボアの厚い皮に苦戦させられたからなー。」

「クス、そうね。懐かしいわ。」

「ヒロシには危険な時は迷わず逃げるようにと何回も言ってきた。だから、きっと大丈夫。」


12月10日 9:00

冒険者ギルド総括会 ブィンド支部

「お!ラウラも来てたのーか。」

 クエストボードの前で立っているエースがラウラを見つけた。

「ええ。」

「珍しいな。3人が揃うのわ。」

 後ろから野太い声がする。

「キッド、あなたも来てたの。」

「ああ、今日はベーテの森のクエストにした。」

 キッドは1枚の依頼書を手にしている。

「あ、俺もベーテの森のクエスト探してたんだーよ。」

 エースもキッドもヒロシが心配なのだろう。見守るための口実にベーテの森でのクエストを探しているのがその証拠だ。

「クス、皆考える事は同じね。」

 皆やっぱり初めて出来た後輩が心配なのよね。

「せっかく集まったのだから、3人でヒロシ達の様子見がてらベーテの森でクエストしましょ。」

「俺は別にそういうつもりじゃなかったけど、ラウラがそう言うなら行こーか。」

「はいはい。じゃあ、決まり。キッド申し訳ないけど、そのクエストはパーティーでも受けられるか聞いてきてくれる?」

 クエストにはパーティーとソロ用と別れている物もある。パーティー用のクエストがソロ用のより難易度は少し高めに設定されている場合が多い。依頼者の意向やギルドが判断したクエストにはしっかりと記載されているが、今回キッドが受けた依頼書にはそれが無かった。この場合は大抵どちらでも受ける事が出来る。

「仕方ないのう。ちょっと待っとれ。」

 キッドはそう言って受付に向かって行く。

 受付には冒険者の長蛇の列が出来ていた。ラウラとエースはベンチに座りキッドを待つ事にした。


「おい、聞いたか。ベーテの森で冬越し熊(フローズンベア)が出たってよ。」

 列に並んでいる冒険者の話が聞こえる。

「まじか。」

「ああ、知り合いの冒険者が最深部から中部の間で見たって話だ。」

 冬越し熊(フローズンベア)というのは今の時期冬眠しているはずのホワイトバックが眠らず起きている個体の通称だ。常に獲物を探している冬越し熊(フローズンベア)は通常のホワイトバックより数倍凶暴だ。そして1番の問題はいつもは森の最深部を縄張りにしているホワイトバックが冬のせいで減っている獲物を探すため最深部から中部まで移動する事がある事だ。ソロでの討伐クエストのランクもEからDに上がり、Eランクパーティー用の討伐クエストも発注される。Fランク未満の下級冒険者ではクエストを受ける事すら出来なくなる。

「エース。今の話…。」

 話を聞いたラウラは直ぐに隣のエースに聞いた。

「ああ、聞いて―た。だけど、まだ聞いたって話ーだ。被害者はまだ出てなーい。」

「でも…。」

「大丈夫、ヒロシを信じーろ。俺達の後輩だーろ。」

 エースは少し戸惑っているラウラの背中に手を当て安心させる。

「どうかしたのか。」

 その場に受付を終えたキッドが帰ってくる。

脅威というものは突然訪れるもの。

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