第七十七話 「ありがとう。」
今日三話目です。
俺はジャックと別れて少し離れた場所に移る。
(よし、これくらい離れれば十分だろう。)
俺は目標のレッドボアから約100m地点で待機する。昨日試して分かったこの弓の射程距離はおよそ150m。今の俺の腕では実戦で安定的に標的に当てれるのは100mがいい所。
(まあ、今回の目標は大きいから外すことは多分ないけど。)
「おりゃあ。」
「ブフォ。」
目標のレッドボアが動き始めた。ジャックの誘導が始まったのだろう。この位置からはレッドボアの巨体が邪魔でジャックの姿は見えないが声は聞こえた。俺も弓を弾く動作に移る。
(まず1本目!)
矢は真っ直ぐに飛んでいき、狙い通りレッドボアの腹付近に命中する。
「よし。」
「!ブブフォ。」
矢が腹に刺さり、さらに暴れるレッドボア。だんだん毛が逆立っていく、色も茶色から赤色に変化。レッドボアが怒っている証拠だ。だが、目の前のジャックに集中しているのか。こっちには気付いていないようだ。
(だったら、もう1発当てさせてもらおう。)
俺は矢筒からもう1本矢を取り、弓に矢を番える。
(よし、思ったより緊張していない。)
俺は集中し、狙いを定め矢を弾いた。矢は真っ直ぐレッドボアのお尻付近に刺さった。
「!!!ブ、ブフォ。」
流石に今度は俺の方を向くレッドボア。俺の姿を捕え、そのままこっちに突っ込んでくる。
「ヒロシ、そっち行ったす。避けるっす。」
ジャックの声が聞こえる。
「了解。」
俺は短く返事して、レッドボアの突進を横に転んで避ける。事前に怒ると素早くなる事を知っていれば、避けられない速さではない。レッドボアは俺のすぐ横を走り抜ける。巨体故にすぐには止まれない。
(よし、こっちに振り向いたら、頭に1発入れてやる。)
俺は態勢を整え、弓を構える。矢を番え、レッドボアが振り向くのを待つ。
「ブフォ、ブフォ。」
レッドボアは俺の方へ振り向いた。
(今だ。)
シュ
放った矢はレッドボアの額部分に命中。
「!ブ、ブフォ。」
レッドボアはその場で倒れた。
「やったすか。」
「まだわからない。慎重に確認しよう。」
まだ毒が全身に回るのには早すぎる。ジャックの剣と俺の矢のダメージで動けなくなったのか。
俺達はゆっくりとレッドボアに近づく。倒れているレッドボアは息はしていた。だが、もう立ち上がれなそうだ。
「ヒロシ。」
ジャックは片手直剣を持ち、俺にアイコンタクトを取る。
「ああ、止めを刺そう。」
「解体完了っす。」
ジャックは片手を上げる。解体時間は30分と出ている。
「ありがとう。」
俺も片手を上げてハイタッチをした。俺達は無事初の大型魔物を討伐し終えた。
良いハロウィーンを。