第七十三話 「はい。いろいろありがとうございました。」
最近気付きましたが、サブタイトルに礼を言うの多い。
数分後、ジルさんが店奥から戻ってきた。
「この毒ならレッドボアにも効くだろう。」
ジルさんは毒の入ったビンを手渡してきた。ビンの大きさはジャム瓶くらいだ。中にはいかにも危険物みたいな紫色をした液体が入っている。
「ただし、レッドボアの巨体に効くには時間がかかるだろう。即効性でもっと良いものがあるけど。」
そこでジルさんは言い淀んだ。多分、俺に気を遣っているんだろう。即効性で良いものとなるとそれなりに値段が張る。まだまだ、下級冒険者の俺では買えない。
「いえ、これで大丈夫です。ありがとうございます。それで値段はどれくらいでしょうか。」
「うーん。そうだな。その毒は売り物じゃあないしな。タダって言いたいけど、それじゃあヒロシ君は納得しないよね。」
ジルさんはにこりと笑う。
「はい。」
(当たり前だ。いつも良くして貰っているのに又借りを作るわけにはいかない。)
「分かった。銀貨1枚で譲ろう。それと使った感想とかも聞かせてくれると助かるかな。」
「分かりました。ありがとうございます。」
俺はジルさんに銀貨1枚を払った。
「ところでその毒どうやってレッドボアに盛るつもりだい?」
「矢の矢じりに塗ってから射るつもりです。」
俺は素直に答えた。多分ジルさんは疑問に思うだろうけど。
「うん?ヒロシ君、確か職業忍者だったよね。」
「ええ、忍者です。弓は最近覚えました。」
「…そうか。レッドボア狩り気を付けて。」
ジルさんはあえて深く詮索しないでくれた。
「はい。いろいろありがとうございました。」
俺は礼を言って、薬屋 ボン・サンスを出た。
12月9日 10:30
新しい弓と矢、それに毒も用意が出来た。これで道具の準備は完了した。後は俺の弓の腕次第だ。
今日はこれからベーテの森で練習しようと思う。近くの出店で昼飯用に牛系魔物の肉が挟まれたサンドイッチを5個買って、ベーテの森に向かった。
12月9日 11:30
ベーテの森
俺は比較的安全な入り口付近で昼食を取った。先買った弓と矢が入った矢筒を背負い弓の練習を始める。もちろん、毒はまだ塗っていない。ベーテの森で練習しようと思ったのはここならより実戦的な練習ができるからだ。魔物は奥に行けば行くほど出て来る。
(練習台になる魔物には少し申し訳ないが、セロは弱肉強食の世界。俺が強くなるための糧になってもらう。)
最初に見つけたのはブラックウルフだ。群れではなく単体でいる。俺は茂みから音を出さない様にゆっくりと弓を構える。まずは新しい弓と矢を試してみよう。
ギギギ
力いっぱい弓を弾く、矢はまっすぐに狙ったブラックウルフの頭部に当たった。倒れたブラックウルフに近づき矢を抜き、解体する。
新しい弓は予想以上に使いやすかった、流石おやっさんが選んだ弓だな。
この回本当は先月分です(悲)、昨日投稿するのを忘れていました。すみません。