第七十話 「…走りながら弓を引く事を普通であるかの様に…か。」
主人公は天才ではないので、もう少し練習させてやってください。
12月8日 13:00
昼飯を食べ終え、俺達は別々に練習をしていた。
パン、パス
当然、俺は弓の練習をしている。止まっている目標なら簡単に当たるようになってきたが、実戦では動く標的を移動しながら狙わなければいけない。試しに走りながら弓を引いてみる。
シュ
矢は狙ってた所よりだいぶ離れた場所に飛んで行ってしまった。
「クソ!」
これではとてもじゃないがレッドボアに挑めない。
この後も俺は弓の練習を続けた。
12月8日 16:00
ブィンド
「やっぱり、全然だったわ。ごめん。」
俺は今日の練習結果をジャックに話した。
「…そうっすか。仕方ないっす、新しい武器と戦い方なんすから。少しずつ慣れていくしかないっす。なんなら、クエスト変えてみるってのもいいんじゃないすか。」
ジャックは少し残念そうに提案した。
「ジャック…。ありがとう、でもクエストは変えない。俺にもう1日くれ、手段を考える。」
俺はまっすぐジャックの目を見ながら言った。
「分かったす。俺も自分で出来る事考えてみるっす。」
12月8日 17:10
ガチャ
俺はジャックと別れファミリアに帰った。ダイニングキッチンから騒ぎ声が聞こえてくる。
「あ、ヒロシ君おかえり。今ヒロシ君の分持ってくるわね。」
皆は晩飯を食べ終え、各々好きな所で寛いでいた。エイラさんがキッチンの方から俺の分のご飯を持ってきた。
「ありがとうございます。いただきます。」
今日の晩御飯は照り焼きチキンだ。
「ヒロシ、弓の調子はどうだ?」
ルイスさんが隣に座り、聞いてきた。
「いやー、やっぱり難しいですね。止まっている相手なら当てれるようになりましたけど、動く標的になると途端に難しくなります。」
「ははは、ヒロシはせっかちだな。俺は止まっている目標に数日で当てれるだけですごいと思うけどな。」
ちなみにルイスさんにはスキルの事を少しだけ説明をした。中途半端な説明だったがルイスさんは何も聞かず弓の事を教えてくれた。多分、サンダーバードの皆は俺がスキルを持っている事に薄々気付いている。それでも、俺には何も聞かずにいてくれている。
「そうですか。でも、どうすれば移動しながら、動く標的を当てれる様になりますか。」
俺は素直に聞いた。俺も短時間でルイスさんクラスまでになれるとは思っていない。でも、せめて少しでもコツみたいなのがあるならば知りたいその一心だった。
「ヒロシ、君は焦りすぎだ。…だけど、焦る理由があるんだろう。そうだな助言するなら、走りながら弓を引く事を普通であるかの様に引いてみな。俺が言えるのはこれくらいだ。」
ルイスさんは俺の背中を軽く叩いて、立ち去った。
「…走りながら弓を引く事を普通であるかの様に…か。」
俺はルイスさんが去った後でルイスさんが言った事を考えてみる。
ついに10万文字達成。