第六十九話 「仕方ないっす。弓とフォーメーションの練習もしてるっすから。」
もう少しレッドボア戦には時間かかりそうです。
「さてと、話し戻すけどフォーメーションどうする?」
「そういや、フォーメーションの話だったすね。うーん、ヒロシに遠距離があるなら俺が前衛で動き回って、ヒロシに後方支援をしてもらった方がいいすね。」
ジャックは近くにあった木の枝で地面に作戦を描きながら話す。
「今まで通りジャックは前衛、俺が後衛なのは変わらない。だけど、レッドボアと戦う時は俺のダガーじゃあほとんど役には立たないだろう。だから、俺は弓で後方支援をする。これまでより、互いの距離は離れる事になる。」
離れるという事はとっさにフォロー出来ないかもしれない可能性を指す。
「突進の直撃は当たらない様にするっす、避ける練習もした方がいいすね。」
「ああ、焦る必要はない。今日と明日しっかりと練習と準備してから挑もう。やばかったら日にちを伸ばす事も考えなきゃな。」
「うす。」
それから俺達はブラックウルフ数体でフォーメーションの練習をした。
12月7日 16:00
ブィンド
「ふう。やっぱり動く標的は難しいな。」
ブラックウルフ相手の練習はなかなか手間を取った。あの素早さでは矢が全然当たらない。それに、動きながら矢を放つのも難しい。単純に標準もずれるし、不安定な足場から打つのもまだ慣れない。これはもっと弓の練習が必要だな。
「でも、レッドボアはかなり大きいから大丈夫す。」
ジャックが落ち込んでいる俺を励ます。
確かにレッドボアの巨体ならば当たらないって事はないけど、問題はもう1つある。自分で作った弓と矢で通用するかどうかだ。スキルの説明で作ったはいいが素材はそこらで拾った物ばかり、ルイスさんが使う1級品のものではない。
(自分の実力と武器の質、考える事が増えたな。)
俺とジャックはギルド前で解散した。
自室
「やっぱり、俺に遠距離はあってないのかな。」
そもそも矢がレッドボアに刺さるのかも怪しい。ダガーじゃあどうしようもないから弓を選んだが、間違いだったのかもしれない。
「違う、違う。まず俺の腕が問題なんだ。」
俺はネガティブに考えないようにする。矢の問題はおやっさんかルイスさんに聞いてみよう。後は、毒を塗るのも手だな。
俺はいろいろ対策を考える。まだまだ、やれる事は多そうだな。
12月8日 8:00
俺とジャックは南門で待ち合わせをした。
「今日も練習頑張るっす。」
「ああ、それで今日のクエストは確か。」
「シャルルジカっす。今回は肉6袋が目標すね。」
「シャルルジカか。いい練習台になりそうだな。」
(でも、肉を回収しなきゃいけないから、毒は使えないな。)
12月8日 12:00
ベーテの森
「っこの、ちょこまか動くんじゃねえ!」
俺は弓を構え、矢を放つ。矢はシャルルジカの頭上を過ぎる。
「くそ。」
「ヒロシ今っす。」
ガガガ
ジャックがシャルルジカを体で止めている。
「よし。」
俺は再び弓を構え、矢を放った。今度は鹿の胴体にヒットした。
倒れた鹿にジャックが止めを刺す。
「ふう。時間取ったな。」
6体仕留めるのに3時間もかかった。
「仕方ないっす。弓とフォーメーションの練習もしてるっすから。」
おかげでフォーメーションは大分形になってきた。問題は俺の弓だけだ。
8月ももう終わり。