第六十四話 「まあ、夜は交代で見張ればいいだろう。」
新しいアビリティはエクストラポケット。
12月6日 13:30
「新しいアビリティすか。」
「ああ、昨日習得した。名前はエクストラポケットで異次元空間にものを収納できるアビリティだ。」
12月5日 21:10
(エクストラポケット。俺の予想通りの能力だったら、今の俺達の問題を少し助ける事が出来るかもしれない。)
俺はエクストラポケットを習得する事にした。早速使ってみる事にした。アビリティの使い方は大体習得した時に解る。
(エクストラポケット。)
脳内でアビリティをイメージして発動する。すると、右手付近に黒い渦が現れた。試しに近くにあった紙くずを黒い渦に入れてみる。紙くずは黒い渦の中に消えた。だが、黒い渦の中に紙くずがある事は感覚で分かる。
問題はどれだけ広いかだが、それも感覚で大体分かった。収納できる空間は大きいスーツケースくらいの様だ。もう少し広さが欲しかったが、それはレベルを上げていけば解決するだろう。
俺はジャックにエクストラポケットの説明をした。
「へー。こんなアビリティがあったんすね。能力的に盗賊などのアビリティぽいすけど。忍者でも一覧に現れるんすね。」
「ああ、俺もこのアビリティを見つけた時は驚いたよ。」
まだ、ジャックにはスキル“変り者”の事は伝えてない。今度じっくり時間がある時にでも伝えようかな。
(まさか、俺が元居た世界で遊んでいたゲームにあったアビリティと似たようなものがこの世界にも存在するとは。名称は変わっていたけど。)
「てなわけで、俺の分用のマジックバックは必要なくなった。」
「そうすね。このアビリティがあれば確かに必要なさそうす。」
「そしてこっちがケビンさんに貰ったテントだ。」
「おお!」
ジャックはテントに近づき、組み立てようとする。
「おい、ここで組み立てるのか。」
「もちろんす。あ、組み立てるのは俺1人で大丈夫なんで、ヒロシは解体を終えた魔物の素材回収をお願いするっす。」
「たく、分かったよ。」
ジャックはさっきまでぶっ倒れていた怪我人とは思えないほど、元気よく動いている。
俺はジャックに言われたまま素材回収を始める。解体し終えた素材を片っ端からエクストラポケットに入れていく。
回収した素材はホーンラビット6匹のが角6本、皮12枚、肉6袋。ブラックウルフ(ボス含め)が皮6枚、骨6本、肉6袋だった。ボスの分なのか少し量が多い。ボス単体で特別な素材がドロップするかもと思っていたが、そんな事はなかった。ボスは変異種とかではなく、ただ通常より大きい個体だったらしい。
素材を回収してジャックの元に戻る。ジャックはテントを組み立て終えた所だった。
「どんな感じだ。」
「すごくいいす。中も…なかなかの広さっす。」
ジャックはテントの中に入る。俺もジャックの後からテントの中に入った。テントの中は思った以上に広かった。これだったら、寝返りを打っても大丈夫そうだ。中央に白い魔法石がぶら下がっている。
「これは?」
俺は白い魔法石を触って、ジャックに聞く。
「それは結界魔法の魔法石すね。多分魔素を注げば発動して、結界が出現すると思うすけど。俺は魔素の注ぎ方は知らないす。ヒロシは?」
「俺も知らねえ、多分知ってても俺達じゃあ魔素量が足りないだろう。」
多分ミャオさんとかが使っていたんだろうな。
「まあ、夜は交代で見張ればいいだろう。」
俺達はテントを直して、ベーテの森の入り口付近に歩き始める。テントをエクストラポケットに仕舞ったら、空間がパンパンに埋まった。
さて次の相手はどの魔物にしようかな。