第六十三話 「俺の新しいアビリティだ。」
やっぱり異世界の薬はすごい。
12月6日 13:15
「ジャック大丈夫か!」
完全にブラックウルフ達が去った事を確認した俺は後ろで倒れているジャックの傷を見た。ジャックの体には数か所噛み傷があった、特にひどいのは腹部の右側と左の太もも付近だ。
「や、やつらは?」
痛みに悶えながらジャックが口を開く。
「一応追いやった。ちょっと黙ってろ今処置するから。」
俺はリュックからポーションを取り出す。全部で3本、1本は直接ジャックに飲ませる。残りの2本は傷口に直接かける。本当はタオルとかに塗らせてからの方がいいが、今近くにタオルになる様なものはない。
「グウ。」
ポーションのせいで傷口が沁みるのだろう。
「どうだ?」
(頼む、効いてくれ。これでだめだったら、もう手がない。)
「ウウ。少し楽になってきたす。」
「本当か?」
確かに顔色がましになっている。傷口はまだ塞がっていないが、出血は止まった。
「ちょっと待て、今近くの木に運んでやるから。」
俺はジャックを背負って運ぶ。かなり重かったがどうにか移動できた。
「少しここで横になっておけ。」
俺はジャックをゆっくり下す。
「ヒロシは?」
「俺は倒したウサギと狼を解体してくる。心配すんな、すぐ戻ってくるから。」
「よし、こいつで最後かな。」
俺は最後の1体を解体して、ジャックの元に戻る。結果はホーンラビット6匹とブラックウルフボス1体、ブラックウルフ4体だった。ホーンラビットが2匹減っている。おそらく、ブラックウルフが去っていく際咥えていったのだろう。
「傷どうだ?」
ジャックは傷口を見せ、笑顔で親指を立てる。
「もう大丈夫そうだな。」
(もう塞がってる。この世界の薬すごいな流石異世界。)
ちなみに俺が持っていたポーションは1番安いもので、もっと上質な物もある。確か普通、上質、特上とランクみたいのがあった気がする。
「ほら、ヒロシも飲んどくっす。」
ジャックが自分のポーションを手渡してきた。
「ああ。ありがとう。」
(正直言うと、ボスウルフに押し倒された時肩を怪我したらしく、さっきから痛かった。)
「解体したのは良いすけど、あの数じゃあ全部は持って帰れないすね。」
ジャックは解体中の魔物達の死骸を見ながら言った。
「それがそうでもないんだなぁ。これが。」
俺はドヤ顔で言う。
「どういう事すか。」
「ちょっと待ってな。」
俺は立ち上がり、ジャックから少し距離を取る。
(エクストラポケット。)
脳内でアビリティを想像して発動する。
俺の右手付近に黒い渦みたいなのが出現する。大きさは半径10㎝くらい。俺はその渦に右手を突っ込み、朝にケビンさんから貰ったテントを取り出した。
「な!なんすかそれ。」
黒い渦とそこから出てきたテントに驚くジャック。
「俺の新しいアビリティだ。」
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