第六十一話 「させるか!」
次回ボス戦。
ガンキンカン
木刀を横に振り、正面から襲ってくるブラックウルフの横顔を叩き、ひるんだ所を右手のダガーで追撃する。
(よし、もう1撃で倒せる。)
ガル
さらに追撃しようとすると、横から新たなブラックウルフが飛び込んできて、邪魔をする。
(はあ、またか。)
かれこれこういうやり取りが5回ほど続いている。
(いい加減とどめを刺したい。)
1体ずつなら相手をしても、さほど苦戦はしない。俺もジャックもうまく対応していると思う。しかし、黒狼達の巧みなコンビネーションに翻弄されている。ジャックも俺と同様追撃がうまくいっていないようだ。
そして、もう1つ厄介なのが、奥でブラックウルフ達に指示しているボスウルフだ。怪我をしたブラックウルフは一旦引かせ、他のウルフ達にスイッチさせる。数が減れば遠吠えで援軍を呼ぶ。
(どうにかして、ボスを倒さなければ。このままではじり貧だ。)
ボスを倒せれば、この統率の取れた動きも多少は乱れるだろうし、数もこれ以上は増えない。だが、ボスは1番奥に陣取っていて、周りを手下のブラックウルフ達に守らせている。
トン
ジャックの背中に軽く体を預ける。
「ヒロシ。このままじゃあ…」
ジャックもこの状況に焦りを感じている様だ。
「ああ、だが、ボスへの距離が遠い。手下もいるしな。」
「…分かったっす。手下は俺がどうにかするっす。その間にヒロシはボスに突っ込むっす。」
「どうにかするって。手立てあるのか?」
「うす。」
ジャックは深く息を吸う。
「コール!」
ジャックの叫びに周囲にいたブラックウルフが俺を無視してジャックに襲い掛かる。
「ウォール!」
ブラックウルフが襲い掛かると同時にジャックが又叫んだ。
「ジャック!」
何体ものブラックウルフがジャックに噛みついている。
「俺は大丈夫っすから。今の内に早く。」
ジャックは黒狼達の猛攻を意にも介さないように俺の背中を押した。
「分かった。」
俺は足に力を入れ、一気にボスの方へ走る。
ボスの手前に数匹手下のブラックウルフが残っている。相手している時間は無い。俺は懐から投げナイフを取り出し、投げる。
(よし、当たった。)
無事ブラックウルフに命中。投げナイフが刺さったブラックウルフはその場に倒れる。これも、ありがたい。
(投げナイフに微毒を塗っていて、良かった。こんなに効くなら、ダガーの方にも塗れば良かったかな。)
俺はそのままボスとの距離を詰め、目の前で止まる。
今まで奥に居たので、しっかりと姿が見えなかったが、対峙したボスウルフは通常のブラックウルフよりサイズが一回り大きい。毛皮も他の個体よりさらに黒く感じる。
グルルルル
ボスはうなりながら、俺を睨む。
俺も木刀とダガーを力強く握りなおす。
「ウォ!」
遠吠えをしようとする、ボスウルフに素早く突っ込んで、ダガーで1太刀浴びせる。
「させるか!」
(これ以上手下呼ばれてたまるか!)
戦闘シーンを書くのは楽しいけど、難しい。