第五十六話 「だけど、サポーターか。雇うにしても金かかるし、俺達みたいな新米についてくれる物好きもいないだろうな。」
何事もお金は必要になる。
12月5日 15:00
道具屋 マリナス商店
装備屋 アナグラを後にした俺達は次にマリナス商店を訪れた。
カランカラン
「いらっしゃいませ。」
店に入るとすぐさま恰幅のいい男性が店奥から出て来た。
「あ!マリナスさんお久しぶりです。」
出て来たスーツ姿の男性はマリナス商店のオーナー、マリナス・カリエッジさんだった。
「あら。これはタナカ様ではありませんか。お久しゅうございます。」
以前来た時は確か店番の人しかいなかったんだよな。
「そしてこちらは?」
マリナスさんは俺の隣にいるジャックに目を移す。
「冒険者仲間のジャックです。」
俺はジャックを紹介する。
「初めましてっす。」
「こちらこそ初めまして。マリナス商会のマリナス・カリエッジです。今後ともよろしくお願いします。」
マリナスさんとジャックが握手する。
マリナスさんはこの店以外にもいろいろと事業を起こしている。それら全ての総称がマリナス商会らしい。
(確かこの店も正しくはマリナス商店ブィンド支部だったっけ。本店はシャルル王国の王都にあるって聞いたな。)
「それで今日は何かお探しですか。」
「あー。今日は野宿用のもろもろを買いに来ました。」
ここに来たのは野宿用のテントや寝袋などを買うためだ。
「なるほど、なるほど。でしたらこちらになります。」
マリナスさんが案内する。
12月5日 16:00
「ふう。」
1時間後俺達はマリナス商店を出て、中央広場にあるベンチで一息ついていた。
「ふう。まさかあんなにいろいろ必要になるとは思わなかったす。」
「まあな。少し省いてもなかなかの量だったな。」
マリナスさんは懇切丁寧に1品ずつ説明してくれた。俺達の予算がそこまで無い事を気遣ってくれて、最低限度の物を紹介してくれた。それでも、俺達には手が届かなかった。あんなに優しく説明させたままでは帰れなかったからベーテの森に出るであろう魔物が載っている魔物図鑑Ⅰを買った。
「考えが甘かったな。」
俺がポツリと呟いた。
「そうっす。又考え直さないと。」
俺は買った魔物図鑑Ⅰをパラパラと読みながら、何が必要か考える。
「とりあえず。新しいカバンだな。」
「そうっす。マジックバックは必須す。」
俺達が抱える問題は値段だけではなかった。荷物の量も問題だ。野宿に必要な用品は1人分でも結構な量になる。今のリュックでは入りきらない。ジャックが言った通りマジックバックは今後絶対に必要になる。しかし、1つでも高額なのに、2つ必要になると今の俺達ではどうしようもない。
「まあ。だからサポーターっているんすよね。」
いろいろ考えた後にジャックが言った。
サポーターとは簡単に言えば荷物運び屋だ。冒険者ではあるが戦闘行為はせず、サポートだけをする。主な役割は荷物運びと素材回収だ。戦闘冒険者の後につき、戦闘終了後の解体とその素材を回収する。サポーターは雇うことも出来る。ギルドに行けば紹介してくれるだろう。
「だけど、サポーターか。雇うにしても金かかるし、俺達みたいな新米についてくれる物好きもいないだろうな。」
今日は1晩考えてまた明日話し合う事になり、ジャックとはここで解散した。
戦闘シーンはもう少し後になりそうです。