第五十五話 「ああ。無理せず、ゆっくり集めてこい。」
目指すはジャイアントスパイダーの鎧。
12月5日 14:30
「じゃあ今からおやっさんの所行ってみるか。」
俺はソファーから腰を上げる。
「うす。とりあえず、どれくらいの値段になるか知ったほうがいいすもんね。」
12月5日 14:42
装備屋 アナグラ
カランカラン
「はい。いらっしゃい。」
「ご無沙汰してます。おやっさん。」
おやっさんは店奥のカウンターで暇そうに帳簿を付けていた。
「お、あんちゃんか。久しぶりだな。そしてそっちの金髪のにいちゃんは初めてだな。」
おやっさんは帳簿を仕舞って、奥のカウンターから出てくる。
「はい。初めましてジャック・ビーンす。」
「おう。初めまして。わしはこの装備屋の店主やってる、コンラット・アンバーだ。皆からはおやっさんと呼ばれている。」
今おやっさんのフルネームを初めて聞いた。
(最初の時に連れてこられた時はまだ西大陸語を覚えて1か月くらいだったからな。気楽におやっさんって呼べって言われたっけ。)
「にいちゃんが噂のあんちゃんの相棒のジャックか。」
「噂?ジャックの事噂になってるんですか?」
「まあな。ラウラからあんちゃんがコンビを結成した事は聞かされていたからな。どんな奴なのか気になってたんだよ。」
(なるほど、情報源はラウラさんか。)
「で、今日はどんな用事だ。」
俺達はアーマーを買おうとしている事を理由と一緒におやっさんに話した。
「なるほどな。手始めにベーテの森を攻略するか。確かに今の装備じゃあ心許ないわな。」
おやっさんは俺達の装備を特にジャックの装備を値踏みする様にじっくり見てから言った。
「フルプレートアーマーの値段ってどれくらいなんですか?」
俺は直球に聞いた。
「うーん。ピンからキリまであるからな。フルで1番安いのでも50金貨かな。」
おやっさんが俺達をアーマーが飾っているコーナーに案内する。
確かに値段はピンキリだった。それでも1番安いのは50金貨する。中古品が隅に置かれていたが、それでも全パーツを揃えるには30金貨くらいかかる。
「ヒロシ、フルプレートはやっぱり諦めるっす。ハーフかライトを買うっす。」
あまりの高額にジャックは心が折れている。
ジャックが言ったハーフとライトは鎧の種類だ。ハーフはハーフプレートメイルの事を指し、胴体や致命傷になる部分のプレートは厚いが、それ以外は革や布で作られている。防御面はフルプレートアーマーより低いが機動性はフルプレートよりは高い。ライトアーマーはハーフプレートメイルよりさらに軽い素材で作られている。防御よりも機動性を重視した装備だ。しかし、前線を支えるジャックにはやはりフルプレートを装備してもらいたい。30金貨ならクエストをさらに増やせば届かない額ではない。
「最初は中古のパーツを1つずつコツコツ集めていくのが普通だわな。それか、自分で素材を持ってくるか。」
俺達が鎧の前で思い悩んでいるとおやっさんがアドバイスをくれた。
「中古のパーツをコツコツか。」
「それとも自分で素材を持ってくるすか。」
俺達はまたも悩んでしまう。悩むのも当然だアーマーは服みたいにコロコロ着替えるわけにはいかない。
「ちなみに素材を持ち寄ったら、どれくらいになります?」
「うーん。素材にもよるが…。あんちゃんの相棒のだし20金貨ぐらいにしとくよ。」
おやっさんの事だ。20金貨でも結構まけてくれたに違いない。
「ジャック、10金貨出せるか。」
「え!10金貨ならなんとかなるっす。」
「よし。残りは俺が出すから素材持って来て作ってもらおう。」
「え!だめっすよ。俺の装備なのにヒロシに10金貨も出してもらうのは悪いっす。」
ジャックは全力で反対する。
「いいんだよ。ジャックがフルプレートで前に出てくれたら、俺も安心して戦えるし。これは俺のためでもあるんだよ。」
俺はジャックを説得した。
「うんうん。これがコンビの良い所だよな。」
なぜか隣でおやっさんが感動している。
「ベーテの森で装備の素材を集めるなら。ジャイアントスパイダーの素材がいいぞ。」
「ジャイアントスパイダーか。情報ありがとうございます。」
ジャイアントスパイダーは確かベーテの森の中部付近で見かける大蜘蛛の魔物だ。
帰り際に俺は投擲用の投げナイフを数本と予備用のダガーを買った。
『ありがとうございました。』
俺達は礼を言ってアナグラを後にした。
「ああ。無理せず、ゆっくり集めてこい。」
鎧の種類は大きく分けて3つにしました。
フルプレートアーマー
ハーフプレートアーマー
ライトアーマー
分かりずらかったらすみません。