第五十二話 『はい。』
第三章開幕。
12月5日 12:00
ベーテの森 入り口付近
「ヒロシ、そっち行ったすよ。」
ジャックが鹿型の魔物を俺の方へ追い込む。
「了解。」
俺は誘導されてきた魔物をダガーで仕留めた。
「ふー。解体と。」
「これで角が出てくれるとありだたいんすけど。」
「そうだな。」
解体が終わるまで俺達は近くにあった岩に腰かけることにした。
季節は冬、シャルル王国は北国なので11月の中旬辺りから雪が積もるようになる。12月になるとさらに雪が50㎝くらい積もり、気温もマイナス10度くらいになる。モコモコのコートで寒さ対策をしなければ外で思う通りに動く事すらできない。モコモコのせいで少し動きが鈍くなるのが欠点だが、寒さで動けなくなるよりはずっといいだろう。
コンビ結成から1か月、俺達は順調にクエストをクリアし続けていた。その甲斐もあって、俺はもうすぐGランクに昇格出来る。今やっているクエストはGランククエストのシャルルジカの角を5本納品するものだ。シャルルジカは温厚な哺乳類魔物で、大きさも地球の鹿と大して変わらない。名前の通りシャルル王国でよく見かける魔物だ。俺達が今着ているモコモココートもシャルルジカの毛皮で出来た物だ。
「あ、チナエ草だ。」
俺が足元の雪をどかすと、チナエ草が生えていた。
「ラッキーじゃないすか。採取するっす。」
「ああ。」
俺はチナエ草を丁寧に採取してリュックに入れた。
ジャックがラッキーと言ったのは今が冬だからだ。さっきも言ったがシャルル王国は冬になると雪がかなり積もる。そうすると、背丈が低いチナエ草が見つけにくくなる。見つけた時は採取して、ギルドに納品している。冬のチナエ草は貴重らしく、高く買い取ってくれる。ちなみに、チナエ草は温度によって、花の色が変わる。秋はピンクで、冬は青い花が咲く。これによって、採取した季節をごまかすことができない。それに気付かずに毎年うそをついて高く売ろうとする新米冒険者が何人かいるらしい。
「解体終わったようだな。」
シャルルジカの解体が終わり、素材が落ちている。
「よしよし、角ドロップしてるっす。」
「ああ、後は皮と肉か。上々だな。んじゃあ帰るか。」
俺は素材をリュックに入れていく。
「うす。」
12月5日 13:00
「お、君達か。毎日頑張っているようだな。」
ブィンドに着いて、南門を検問していたのは、最初に検問してくれた門番さんだった。
「はいヴォルスさん。今日もクエストをこなしてきました。」
俺達は冒険者カードを渡す。
毎日クエストで外に出るので、顔を覚えられた。最近では新人冒険者の俺達を何かと気にかけてくれている。
「そうか。だが、ギルドに報告するまでがクエストだからな。気を抜かないようにな。」
『はい。』
俺達は冒険者カードを受け取り、ギルドに向かった。
この章では戦闘シーンをたくさん書きたいと思います。