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現実逃避からの異世界冒険物語  作者: Piro
ジャック・ビーンとコンビ編
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外伝11 終わりよければ全てよし

これで外伝はいったん終わりです。次話は久々の本編になります。

11月3日 18:20

 飲み屋 “ならず者”近くの空き地

 来月家屋建築予定と書かれた木製の看板が立っている空き地にラウラ、エース、キッドの3人とザックス率いるチンピラ勢が対峙する。

「ここなら他の人に迷惑をかけることはないでしょ。」 

 数の上では圧倒的不利なはずのラウラ達はチンピラ達を睨みつける。

「随分余裕だな、ラウラ。」

 ザックスが背中に背負ったバトルアックスを取る。

「それはそうだーろ。チンピラ程度に俺達が負けるわけねかーら。」

 エースが分かりやすい挑発をした。

「囲って潰せ。」

 ザックスが短く手下達に命じる。

 ザックスの1言でチンピラ達が迅速に動く。ラウラ達、3人を囲み、一斉に攻撃を仕掛ける。

「風中級魔法サークルウインド。」

 ラウラが右手で先端に青色の魔法石が埋め込まれた杖を掲げる。ラウラ達を守るように周囲に強風が吹く。

「グア。」

「ウワ。」

 突然の強風に近くのチンピラ数人が吹き飛ぶ。

「俺も派手に暴れるーぜ!」

 エースが全長約200㎝ある大剣を引っ提げて、チンピラ達に突っ込む。

 チンピラ達も各々の武器で応戦するも力負けして斬り潰されていく。

「どっからでもかかってこい!」

 キッドが両手に装備したグローブ型のナックルで構える。

「おらー。」

「うおー。」

 チンピラ達が剣や槍で攻撃も、キッドには傷1つ付かない。キッドはそのままチンピラ達に近づきナックルで1人ずつ殴り飛ばす。

 人数不利をものともしないラウラ、エース、キッドの3人により始まって数分でチンピラ達の半数が戦闘不能になる。


 勝負は直ぐについた。圧倒的実力差によって、チンピラ達は倒された。

「残ったのはあんただけね、ザックス。」

 ラウラが呆然と立ち尽くしているザックスを睨む。

「くそ。くそがー。」

 ザックスがバトルアックスを持って、ラウラに突っ込む。

ガギン

 ラウラとザックスの間にエースが割り込んだ。

「おっと。お前の相手は俺がしてやるーよ。」

 エースの大剣とザックスのバトルアックスが数度ぶつかり合う。

カキン、ガキン、キン

「くそ。くそ。」

 どんどん押されているザックスに比べ余裕の表情を見せるエース。

カキン

 最後はエースが大剣でザックスのバトルアックスをはじき、ザックスは体勢を崩して地面に尻餅をつく。

「はー。はー。なんでだよ、同じ中級冒険者のはずだろうが。なんで。」

 ザックスはこの状況に納得いかず、みっともなく叫ぶ。

 戦況は誰が見ても明らかに一方的だった。

「同じ中級冒険者?確かにCからEランクの冒険者は中級冒険者と呼ばれているけど、実力が同じって意味ではないわ。」

「お前さんがDランクで他はEランクって所か。」

 周りで倒れているチンピラ達を見ながらキッドが言った。

「下級冒険者はあまり実力に差は無いだろうけーど、冒険者で1番人数が多い中級は実力差が激しーい。」

 エースが大剣を背中に直す。

「ランク1つ違ったら大体10レベルは違うでしょうね。」

 ラウラが乱れた髪を直しながら補足する。

「くそったれが。」

「ギルド北風と太陽の若獅子とまで呼ばれたあんたが随分堕ちたわね。今じゃあ、子分率いて新人冒険者からカツアゲなんて。」

「うるせえ。お前らに俺の何が分かるんだよ!」

 ラウラの言葉にザックスが激高する。

「知りたくもないわよ!あんたこそヒロシの何を知っているの。彼があんた達に何をしたのよ!」

 ラウラはザックスを一喝する。

「……。」

 ラウラの言葉にザックスは黙る。

「ガハハハハハ。仕方ねえ。こうなればお前達も道ずれだ。ギルドが決めた禁止事項に冒険者同士の争いごとが含まれていたな。この事をギルドに報告すればどうなるかな。俺達には何も失うものがないが、お前達は違う。一緒に堕ちてもらうぞ、ラウラ。」

 ザックスがラウラ達を指さしながら立ち上がる。

「何言ってるのよ。その項目の下に正当防衛が成り立つ場合はその限りではないって書かれてるでしょ。」

 ラウラが冷静に指摘する。

「な!何が正当防衛だ。そんなこじつけ通じるか。」

 ザックスが叫ぶ。

「うちの後輩を暴行して、大人数で囲んで攻めて来たじゃない。十分正当防衛になるわよ。」

「ああ。15対3だしーな。」

 エースがにやりと笑う。

「ギルドに報告するのは勝手だけど、罰を受けるのはそっちよ。」

 ラウラが続ける。

「くそが。…俺達の負けだ。好きにしろ。」

 ザックスは最後のあがきも通じ無いと分かり諦めて、その場に座り込んだ。

「私達の要求は2つ。1つ目はヒロシ君から奪った物を返してもらう事。もう1つは今後私達とヒロシ、それにジャック君の前に現れない事。」

 ラウラの要求は実質ブィンドからの追放を意味する。

「分かった。要求を呑む。ヒロシから奪った物は飲み屋に置いてる。奪った物は返すが、金はほとんど使ったしまった。」

「だったら、装備を置いていきなさい。それで、許すわ。」

 ラウラが冷酷に言った。

「ック。分かった。だが、この斧で勘弁してくれ。こいつらの装備は見逃してやってほしい。」

 ザックスは地面に頭を当て懇願する。

「うう、アニキ。」

 近くで倒れていたチンピラが呻きながら涙する。

「分かったわ。あんたの斧1つで勘弁してあげる。」

 ラウラが立ち去り、キッドがザックスのバトルアックスを拾う。

「この斧“アナグラ”で買い取って貰いましょ。店主のおやっさんには話を通しといてあげる。買い戻したかったら勝手にしなさい。」

 ラウラが立ち去る前に言った。

「!…ラウラ。」


「ほら何時まで寝てるお前ら行くぞ。」

 ラウラ達が去った後ザックスは子分達を起こす。

 ラウラ達は飲み屋“ならず者”でヒロシの荷物を回収した後、ファミリアに戻った。

結局冷酷になり切れないラウラ。

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