外伝10 水を知るものは水に溺れる
2章もあと数話で完結です。
11月3日 18:00
「じゃあ、ヒロシ君の事お願いね、エイラ。」
ラウラさん達はこの場から去り、チンピラ達がいるであろう飲み屋ならず者に向かった。
「ええ、こっちは任せて。」
エイラさんはヒロシの治療に取り掛かる。
「治癒魔法ヒール。」
エイラさんが唱えると両手から白い光の球が出てきて、ヒロシの体に入る。ヒロシの傷が少しずつだが、治っていく。
「よし、応急処置はこれで終わり。後はファミリアで治療しましょう。ジャック君ヒロシ君を運んでくれる?」
ひとしきり治癒魔法をかけ終えると、ラウラさんは額を右手で拭った。
「はい。任せてくださいっす。」
俺はしゃがんだ姿勢を取り、エイラさんがそっとヒロシを俺の背中に運ぶ。
それから俺とエイラさんはファミリアに戻った。
11月3日 18:15
飲み屋 “ならず者”
「がはは。今日は俺様のおごりだ。じゃんじゃん飲め。」
ザックスがビアが入ったジョッキを右手で掲げ叫んだ。
「アニキ、それヒロシの奴から奪った金でしょう。」
ザックスとチンピラ達は奪った金貨で打ち上げをしている。
「がはは。違いねぇ。しかし、あんな素人がこんないいもんを持ってるなんてな。」
ザックスがヒロシから奪った黒のライトアーマーを触りながら言った。
「これ売ったらなかなかの金になりますぜ。」
ライトアーマーをじっくりと見たケンが嬉しそうに言った。
「ああ、明日にでも装備屋に持っていくか。」
肉に齧り付きながらザックスは笑う。
「でも、良かったんですか?ジャックが戻ってくるの待たなくて。」
隣でビアを飲んでいるタイゾウが聞いた。
「ああ、良いんだよ。どうせあいつらから来るだろうからな。」
ザックスはビアを一気に飲み干した。
「マスターおかわり。そしたら来た所を囲んで潰せばいい。」
バタン
「へー。大した自身ね、ザックス。」
飲み屋のスイングドアが開き、ラウラ、エース、キッドが店に入る。
「思ったより早かったな、ラウラ。」
ザックスは驚きもせず、ゆっくりと席から立ち、ラウラたちと対峙する。
「置き土産は気に入ったか。」
ザックスが笑いながら言った。周りのチンピラ達も立ち上がりあざけ笑う。
ラウラ達は何も言わずザックスたちを睨む。
「ここでは店の迷惑になる。表へ出ろ。」
キッドが前に出て、冷静に言った。
7万文字達成。