外伝9 チンピラ逆鱗に触れる
今日2話目です。
11月3日 17:35
「はあ、はあ。」
俺は必死に走っている。友を救うために。ファミリアサンダーバードの場所は以前ヒロシから聞いて知っていた。
ドンドンドン
ようやくたどり着いた俺は門を力いっぱい叩いた。
(頼む、誰か居てくれ。)
「はい、はーい。誰かしら。」
門が開きゆるふわ金髪の女性が出てきた。
「はあ、はあ。…俺の名はジャック・ビーンと申します。ヒロシさんの友人です。」
俺は息を整え簡潔に自己紹介した。いくら急を要するからと言っても礼を欠いてはいけない。
「ああ。あなたが。ヒロシ君がお世話になってるわね。えっと…ヒロシ君はまだかえ…。」
「すみません。ヒロシを助けてください。」
男が初対面の女性に向かって2言目に発すセリフとしては大分情けないが、今は急を要する。話の途中だが割って入った。
「…分かったわ。ちょっと待ってて。」
俺の必死の顔である程度の事情が分かったのか、金髪女性は急いで奥に戻って行った。
ゾロゾロ
それから、数十秒後に女性は冒険者装備に着替え、仲間達と出てきた。
「お待たせ。ヒロシ君の所まで案内してもらえる?」
「はい!」
俺は道中、もう1度職業と名前だけの簡単な自己紹介を済ませ、今日あったことを説明した。エイラさん達は俺が逃げた事は責めず、黙って聞いてくれた。
「そのバトルアックスを持っていた大男って右手の甲に太陽と雲の刺青が入ってなかった?」
魔導士のラウラさんがチンピラを束ねていたボスの特徴を聞いてきた。
「えっと、多分入ってたと思います。」
俺は思い出しながら答える。
「じゃあ、十中八九そいつはザックスだーな。」
大剣を背負ったエースさんが大男の名前を口にする。
「ならば、あ奴らは今頃たまり場にしているバーにいるだろうな。」
拳闘士のキッドさんが言った。
(知り合いなのだろうか。)
俺はできる限り詳細に話した。裏道に向かっている間、俺はずっとヒロシの無事を祈った。
11月3日 17:45
襲撃にあった場所にはヒロシの姿は無かった。残っていたのはヒロシのものと思われる血痕だけだった。血痕から相当な暴行があった事が伺える。それから、手分けしてヒロシの姿を探した。見つけるのにはそう時間はかからなかった。
ヒロシはボロボロの姿で見つかった。場所は裏道の近くのゴミ置き場。ヒロシはパンツ1丁の姿でゴミ袋の上に捨てられていた。両手両足は折られ、何度も暴行を受けた痕が全身にある。あまりの姿に俺は何も言えなかった。
「ゆっくり下すわよ。」
魔導士ローブを装備したラウラさんがゴミ袋を乗り越えヒロシを抱え、エースさんに慎重に渡している。
「エイラ、ヒロシの容態は?」
石畳の道の上に置かれたヒロシの体をエイラさんが診察している。
「浅いけど息はある。大丈夫助られるわ。」
エイラさんは一通り診察を終えラウラさんの問いに答えた。
「そう。じゃあ、ヒロシは頼むわね。私達はちょっとけじめをつけに行ってくるわ。」
ラウラさんは自分の身長と同じくらいの杖を握り締め。
「そうだーな。」
エースさんはパキパキと指を鳴らし。
「久方ぶりにわしも頭に血が上ったわい。」
キッドさんは両手に装備しているナックルをぶつけ合っている。
そう話している3人の顔はとても恐ろしかった。
後1話か2話外伝が続きます。