第四十六話 「ん、どうした。」
今章クライマックス突入。
11月3日 17:05
「ふー、ギリギリだったすね。」
「ああ、衛兵が知り合いでよかったよ。」
俺達が門に着いた時には衛兵は門を閉じる直前だった。その衛兵が俺が最初に外出する時と同じ衛兵で、俺の事を覚えてくれていたらしく、門でのやり取りもすんなりと終った。多分違う衛兵だったら目の前で閉められてたかもしれない。
俺達はそのままギルドに向かい、素材回収カウンターでホーンラビットの角10本と肉5袋、皮5枚を売却した。今回も素材と報酬を折半し、俺は皮以外をジャックは俺とは逆で皮を売っていた。ちなみにホーンラビットの角の主な使い道は性機能増強のためらしい。ホーンラビットの角は精力剤を作る際の材料になる。
セロで精力剤を買うのは貴族男性が多いらしい。貴族にとって自分の子供は後継者になる。世継ぎを作る事も貴族の大切な仕事のようだ。自分の血を残したいのはどの世界も同じなのかもしれない。
「受付も終わったし、晩飯兼打ち上げ行こうぜ。」
「うす。今日もうちでいいすか。」
ジャックはマザーステイストの事をうちと呼ぶくせがる。
「ああ、いいよ。」
俺とジャックはギルドを出てマザーステイストに向かう。
「ん?」
マザーステイストに向かう途中俺は妙な感覚に襲われ足を止めた。別に体調が悪いとかそういう類のものではない。
「ヒロシ、どうかしたんすか?」
気のせいかもしれない。
「いや、別になんでもない。」
俺は歩き出す。すると誰かの視線を感じる。これは索敵アビリティによるものだな。
「やっぱり。」
俺は小さい声で呟く。
「どうしたんすか?」
ジャックも俺に合わせて小声で話す。
「俺たち誰かに尾行されてるかもしれない。」
「え!」
「静かに、とりあえず自然に動こう。」
俺は人差し指を口に当てる。
「分かったす。」
「このまま歩こう。」
(しかし、いったい誰が何のために俺達を追ってるんだ?目標は俺かそれともジャック?だめだ、情報量が少なすぎて相手の目的が分からない。このままマザーステイストに直で向かうのは危ない気がする。仕方がないこっちから仕掛けてみるか。)
「ジャック、1度裏道を通ろう。」
「了解っす。」
俺達は近くの裏道を通った。人通りの少ない裏道は尾行しにくい。これで、尾行が離れてくれればいいんだが。これでも追ってくるのなら相手の正体くらいは分かるはずだ。
(出来れば去ってもらいたい。)
しかし、相手は構わず尾行を続けて来た。俺はゆっくりと後ろを見る。相手は7人、予想以上に多い。しかも、その中に知ってるやつらが混じっていた。ジャックに絡んでいたチンピラ3人組だ。カツアゲを邪魔されたのが気に障ったのだろうか。
(さてどうしよう。)
俺は安全に回避する方法を考える。
「ヒロシ、やばいっす。」
ジャックが俺の肩を指でついて、前を指さした。
「ん、どうした。」
俺は前方を見る。そこにはバトルアックスを背負った大男が仲間のチンピラとこちらに向かって来ている。俺はやっと気付く、この裏道に誘い込まれていたことに。後ろに7人、前に8人。
(やばいな。このままでは、挟み撃ちだ。)
尾行7人は多い気がする。