第三十八話 「ああ、気を付けて冒険するんだぞ。又なんかあったらいつでも来な。」
少しずつ章の終わりに向けて準備が出来てきています。
カランカラン
「いらっしゃい。ん!何だ、ヒロシのあんちゃんか。」
装備屋アナグラの店主、おやっさんが店奥のカウンターから挨拶している。
「おはようございます。おやっさん何だはないでしょう。一応客なんすから。」
俺も店奥のカウンターに向かう。
「ガハハ、すまんすまん。しかし今日はやけに早いな。」
「ええ。今日は1日休みにしまして。」
「ふーん、そうかい。で、今日は何を探してんだ?」
「武器の手入れ用の砥石とライトアーマーの手入れ道具を。」
俺は腰に装備したダガーをおやっさんに見せた。
「ほう、確かに少し刀こぼれしてるな。ちょっと待ってな。」
そう言っておやっさんはカウンターから出て右側の棚から数品商品を持ってきた。
「とりあえず、これが砥石だ。砥石の使い方は分かるな?」
「はい。」
数回、庭でエースさんが砥石で剣を手入れしている所を見たことがある。
「んで、これがライトアーマーの手入れ用のサンドペーパーと油だ。使い方はタオルに油を数滴垂らして汚れてるところを拭く。少し傷ついたところはサンドペーパーでこする。あまりこすりすぎない事がコツだ。」
装備によって手入れの仕方は変わるが、俺の装備しているライトアーマーや西洋鎧はサンドペーパーと油で手入れするらしい。サンドペーパーは4A用紙くらいの大きさの紙やすりみたいなものだ。表面がざらざらしていて、アーマーの傷をこれで削るらしい。汚れた所は油とタオルで磨けばいい。
(やっぱり、せっかくの装備だし奇麗な状態を維持したい。)
「ありがとうございます。」
「それにしても、まだ、冒険者になって数日なのに刀こぼれするとわな。」
「ええ、ちょっとありまして。」
俺は森でブラックウルフと戦った事をおやっさんに伝えた。おやっさんは最初驚いていたが俺の話をちゃんと聞いてくれた。
「まったく。あんちゃんも無理するなー。怪我がなくてよかったよ。」
「ええ、後もう1つ欲しいものがあるんですけど。」
おやっさんは俺の話をしっかりと聞いてくれるし、多分口も堅いあの事も話してみようかな。
「ん、なんだ?」
「実は...」
俺はおやっさんに森でチンピラに絡まれた事を話し、絡まれた時に逃走用に使える道具はないかと相談した。
「あんちゃんもあいつらに狙われたか。」
「あいつらの事知ってるんですか。あ、後この事はサンダーバードの皆には内緒でお願いします。」
「分かってるよ。まあ、ここらでは有名なチンピラだからな。そいつらは中級冒険者の奴らでな。いつも、下級冒険者をいじめるチンピラだよ。近づかないのが1番いい。でも、もし絡まれそうになったら。…そうだな。ちょっと待ってな。」
おやっさんはそう言って店奥の扉を開き鍛冶工場に入って行った。
数分後おやっさんが鈴サイズの玉を持ってきた。
「おやっさんこれは?」
俺は玉を手に取り観察する。紐に白い球がついている。
「それは、けむり玉だ。落とすんじゃないぞ。衝撃を与えると中に入ってる大量の粉が出てきてあたり1面けむりに覆われる。」
「へー。」
「もしチンピラに絡まれそうになった時使えばいい。魔物との交戦時も目くらまし用に使える。」
「ありがとうございます。じゃあ、砥石を2つとサンドペーパー2枚、油を1本、けむり玉を2つください。」
「あいよ、銀貨2枚と銅貨9枚ね。」
「じゃあ、銀貨3枚で。」
俺は貨幣が入っている袋から銀貨を出し払った。
「お釣りの銅貨1枚。」
俺はお釣りを受け取り袋に入れた。
「それじゃあ、今日はありがとうございました。」
「ああ、気を付けて冒険するんだぞ。又なんかあったらいつでも来な。」
俺は装備屋アナグラを出た。
Youtubeの作業用BGMいい。