第三百三十二話 「失礼、首借りるわよ」
今月第五話。
リザードマンの戦士と合流して三人で固まる。ざっと計算してウルス隊の三分の一は倒したはずだ。
「えっと…」
そういえばリザードマンの名前をまだ聞いてなかった。
「リザールだ。…リザール・サーフェリュだ」
二メートル近い戦士は警戒を緩めず、短い紹介で済ませた。
「俺はヒロシ・タナカ、こっちはドロシーだ」
ここは戦場、長い自己紹介は不要だな。
「前衛を頼めるか」
「ああ」
リザールの鬼気迫る戦いぶりを見てウルス隊の手下達もすぐに仕掛けてはこなかった。
おかげで呼吸を整える時間が出来た。敵は残り二十名弱、ウルスと鎌使いをジャックとモモノスケが相手している間に人数差を少なくしたい。
「分身発動」
アビリティ分身を使って、守りを固める。この間に右腕の装備を外した。
「治癒魔法ターンライト」
ドロシーの両手から淡い光が出て、骨折した右腕を回復してもらった。
「ハアハア」
ドロシーは紅玉の杖を地面に刺して、ふらつく体を支えていた。
「ドロシー!大丈夫か。悪いなこんな状況で治癒魔法を使わせて」
「ハアハア。ううん、まだまだ余裕よ」
強がってはいるがかなり疲労している。これまでの連戦、多対一を潜り抜けてきたドロシーはスタミナ、精神的にも限界を超えていた。これ以上の戦闘継続は難しいだろう。
「ヒロシ」
ドロシーはある事を俺の耳元で囁いた。
「!これ以上…お前の身が危ない」
「大丈夫、維持くらいなら出来るわ!…そのかわり誰一人逃がさないでよ」
「炎上級魔法フレイムサークルウォール」
ドン
俺達を中心に猛炎の円壁が燃え盛る。炎壁の範囲は広く、ウルス隊の囲い外にあったロンブス隊の馬車も含まれていた。
『ヒヒーン』
馬車を引いていたホースのいなく声が聞こえた。
「ギャアーーー」
炎の近くに居た敵が猛炎の熱に襲われていた。炎の高さは二メートル弱だが炎の勢いで近づくことすら許さない。ドロシーの魔法は仲間ごと敵をこの場に封じ込めている。これでドロシーが倒れない限り誰一人この場から逃げる事は出来ず、退路はなくなった。
「ッチ、面倒だな」
「ビビってんすか。俺はワクワクしているっす。これで思う存分決着を付けられる」
「…面白れぇ。お前ら俺がこのドチビを潰す前にさっさとあの女を捕えろ!失敗したら分かってんだろうな!」
ウルスの号令で覚悟が決まったのかウルス隊の目つきが変わった。
「たく、無茶をする」
「言ったでしょ余裕って。でも、言った通りもう動けないから。お願いね」
「ああ、後は任せろ。ありがとう」
ガキン
ドロシーを狙って背後から手下達が襲ってくる。数人は分身で止め、時間差で確実に一人ずつ倒していく。
「ムン」
反対側はリザールが止めてくれている。しかし、右腕が回復してもこうドロシーを狙われては攻撃に転じられないな。
(仕方ない。このままここで耐えて隙を見て削るしかないな)
バシ
「グ、あちー!あちー!」
「失礼、首借りるわよ」
壁側で一人の奴隷狩りが炎に悶えている。よく見れば首元に何か巻き付いて、男はそれを外そうと両手で首を掻きむしっている。さらに炎の壁に引っ張られないように足で踏ん張っている。
次の瞬間、炎の壁を飛び越えて一人の女性が現れた。
乱戦




