第二百四十九話 「雑魚に興味はねぇ。あるのはお前だけだ」
今月第五話。
(考えろ、考えろ。ここの決断で全てが決まる)
近くの村までは急いでも30分。村に教会があるかもわからない。運が良ければ解毒の魔法を使える魔導士もしくは薬剤師がいるかもしれないが不確定だ。教会があるウエストエンドまでは2人の体力が持たない。2人の体力と薬の量を計算して2人の体力が持つのは約1時間。
ポイズントカゲ亜種(仮)の毒に感染し、解毒方法を探す時間まで考える。
「ヒ…ロシ?」
不安そうな顔をするな2人が心配するだろ。
バン
両手で頬を叩き、不安そうな顔を隠した。
「何…してるんすか」
「ハハハ、安心しろ。絶対助けるから」
無理やりでも笑顔を浮かべた。
俺はこんな状況でジルさんの教えを思い出していた。
「魔物の中には自身の毒を中和する器官を持つものもいる。大抵の場合はそれが毒消しの素材の1つだ」
沼地までここから最速で10分。往復で20分として10分で大蜥蜴を倒し解体、薬を生成ここに戻ってくる。ギリギリだな。
これは完全に賭けだ。2人の命と自分の実力を天秤にかけ、さらに運任せときている。
それでも、俺はこの方法しかないと考えた。他人任せよりはずっといい。
苦しみに悶えながら毒消しとポーションを飲んでいる仲間を見つめる。
「2人とも俺に命を預けられるか」
全くクソみたいな性格だ。自分が嫌になる。自分の責任逃れのために命の選択を2人に任せようとしているのだ。
「ハアハア何言っているのよ。最初…から預けているわよ」
「…同じくっす。どんな結果になろうと…」
『あたし達は恨まないわ(っす)』
(逆に鼓舞される側になるとはな。参ったぜ)
腹は決まった後は実行するのみだ。
「分かった。少しここで待っていてくれ」
沼地まで最短距離で駆ける。途中でアビリティ一覧を開き、自身の毒耐性のレベルをもう一段階上げた。
毒状態は続いているがそれは体内にまだ毒が残っているからだ。その証拠に症状がこれ以上悪化することはなかった。毒耐性レベル1での症状を踏まえても毒耐性レベル2であいつの毒は効かなくなる。後はあいつをどう倒すかだな。
幸いなことにポイズントカゲ亜種はすぐに見つかった。まだ、俺達が遭遇した沼地の近くに居た。
「全くどこまでも運頼みだな」
シュドス
ポイズントカゲ亜種の背に矢を放つ。矢は背中に刺さったが大したダメージにはならなかった。それでもあいつの注意は引けたようだ。
「シャ~、シュ~」
亜種はすぐにこちらに振り向き威嚇する。手下の蜥蜴達も一斉に威嚇してきた。
「雑魚に興味はねぇ。あるのはお前だけだ」
近くのポイズントカゲには構わず一直線に亜種に向かった。
ポイズントカゲ亜種戦開始