第二百四十八話 「…2人とも俺に命を預けられるか」
今月第四話。
ポイズントカゲ亜種(仮)から毒玉が吐き出された。
「エレメントボール!」
魔法の球で毒玉を相殺する。
2人を庇いながら沼地でポイズントカゲとその亜種を倒すのは無理だ。毒で自分の体が段々重くなるのを感じる。毒耐性レベル1で毒の症状は2人よりましだがそれでも完全に無効にできているわけではない。
「ハアハア」
思ったより危険な状況だ。打開策は1つだけ逃げの1手。
ボン
けむり玉を3個ほど前方に投げた。これで亜種の方は視界を遮ったはずだ。
「ジャック、ドロシーまだ生きているか」
「当たり前っす。こんな…ところで…死ねないっす」
「ゴホゴホ…勝手に殺さないでくれる」
ジャックはニヤリと笑っているがかなり顔色が悪い。ドロシーに至っては声を出すのもきつそうだ。
「だよな。だったら、盾と剣、杖も…荷物は出来るだけここに置いてくれ」
「?」
俺は2人の装備と荷物を出来るだけ手放せた。
「グググ」
(クソ、重いな)
両腕にジャックとドロシーを担いだ。
「何を…しているっすか」
「見てわからねぇか…2人を担いでいるんだ」
重装備を脱がすのには時間が掛かるがヘルムだけは外せた。ポイズントカゲ達がじりじりと近づいてきている。
「…ヒロシだけでも…逃げて」
「安心しろ…軽い軽い…グ、2人とも必ず救う」
パーティーメンバーと共に必ず戻るそれがリーダーの役目だ。
「まあ…任せろって…仲間2人くらい担げねぇで…何がリーダーだ!」
水走りで沼地を駆ける。2人を抱えながらだと流石に少し沈み、遅くなってしまう。
ブチブチ
太もも辺りからよくわからない音が出ても、両腕が限界を迎え激痛が走ろうが我慢した。最短距離を走り続けた。
(脚はここで終わってもいい。絶対に3人で帰るんだ)
「どけ、クソ蜥蜴どもが」
ダン、ガン
自分でも不思議だ。限界のはずなのに、まだ道を阻むポイズントカゲどもを蹴り飛ばす余力が残っているとは。これが火事場のバカ力ってやつなのかもしれない。
「ハアハア」
しばらく走ってやっと安全な場所まで移動でき、2人を木のそばに下ろした。
問題はここからだ。どうやってこの状況を打開する。解毒方法を探さないといけない。
2人と自分の回復の為にエクストラポケットから毒消しとポーションを全て出した。
ここから近くの村まではどれだけ急いでも30分はかかる。村でこの毒を解毒できるとは限らない。2人の体力と薬の量から考えてもって1時間か。
「…2人とも俺に命を預けられるか」
生き残る事こそ最優先事項。