第二百四十三話 「いい時間だし昼飯にしよう。解体は任せていいか」
今月第三話。
装備を一新したドロシーはこれでもかと魔導士のローブを広げて見せてくる。
(気持ちは分からなくはない。新しい装備を手に入れると早く試したくなる。だが、慣らす時間は必要だ。それは、魔導士の装備でも変わらないだろう)
旅の始めは慎重に、途中で魔物との戦いを何戦か重ねた方がいいだろう。
「うん、いいんじゃないか。似合っているよ」
「エヘヘ、そうでしょ。あたしだものこれくらい当然よ」
ドロシーの装備はホウキ以外一新した。大洞窟でヴァンレンスから貰った紅玉の杖、長さ100㎝くらいの魔法石入りの長杖だ。先日、マリナス商店で試着した魔導士のローブと魔導士のぼうしセットで金貨20枚。どちらもランクはシルバーで魔防が高く、物理防御も高い代物だ。ドロシーはローブ、ぼうしも黒色を選んでいた。魔導士セットは中級冒険者に人気で色も選べるところから女性人気が高いとのこと。
相変わらずぼうしはとんがりだけど。なぜ魔導士、魔法使い特に女性のぼうしはとんがりをイメージするのだろう。
「それは今とんがりが流行しているかららしいわよ」
(ほう、今時の流行か。だったらおやっさんも俺達の装備にその時の流行を取り入れているのだろうか)
「プ」
「何笑っているのよ?」
「いや、何でもない」
つい、髭面のおやっさんがファッション誌片手に装備を作っている姿を想像して吹き出してしまった。きっと、そういう事じゃないのだろうがおやっさんも日々技術を高め、鍛冶師業界の流行を装備に取り入れているのだろう。
5月15日 12:05
ブィンドから西へ1時間にある草原
「ジャック、右側を頼む。ドロシーすまん一匹打ち漏らした」
「了解っす」
「任せて、炎初級魔法ファイヤーボール」
炎の球がレイジブルに当たり、戦闘が終わった。
「よし、いい感じだな」
「そう?ジャックもそうだけど、ヒロシ動き鈍っているんじゃない。結構打ち漏らしあったわよ」
「そうか、アハハごめんごめん」
魔物の打ち漏らしはわざとだ。本番までドロシーには少しでも多く実戦を経験してもらいたい。
ブィンド大洞窟でかなりの戦闘経験は得られたが外ではまた別だ。このことは事前にジャックと相談済みだ。
「いい時間だし昼飯にしよう。解体は任せていいか」
俺はジャックに声をかけ2人に解体を任せた。洞窟ではほとんどリタがやっていたからな。
正月ボケがまだ抜けない。