第二百四十話 「まあ、そう急ぐな。そろそろ昼飯の時間だ。店が混む前に先に飯を食っちまおう」
今月第一話。
マリナス商店 二階 魔法関連コーナー
「どうでしょうか。どこかお気になる箇所はございますか?」
「う~ん、特にありません。ありがとうございます」
ドロシーが装備を試着している間、俺とジャックは適当に時間を潰していた。装備は事前にいくつか目星をつけていたので選ぶ時間はほとんど掛からなかった。
(あとはドロシーの好みの問題だ。ヴァンレンスから貰った魔法の杖はドロシーと相性が良かったらしい)
鑑定した結果、名前は紅玉の杖で杖の柄部分はカバノキと言われる白い樹皮が特徴な木を使っているらしい。ランクはシルバークラス、先端にある赤い魔法石には炎魔法を強化する付与魔法が刻まれていた。
(売ればなかなかの金額になるものを譲ってくれるとはな)
付与魔法とは別名エンチャント魔法。物質に魔法効果を付与する魔法だ。魔石に魔法を刻み魔法石に加工、武器や防具に特殊な効果を付与することが出来る。
(個人的には奥が深い魔法に感じるが魔導士にはあまり人気がないらしく、使える魔導士が年々減っているらしい。少し地味なのが若者は学ぼうと思わない理由の一つなのかもしれないな)
ちなみに俺が骨戦士から奪った弓にも貫通効果が付与されていた。他にも何かしらの効果が付与された装備があったかもしれない。
「お待たせ~」
ご機嫌のドロシーが試着から戻ってきた。
「おう、どうだった」
「うん、結構いい感じ。でも、仕立てに五日くらいかかるって」
「そうか、だったら終わるまでは周辺で軽めのクエストを見つけよう」
また、遠出になるからな。しっかりと準備をしてからだ。次の目的地はすでに決まっている。
ジャックの故郷、ゴールドラン。ジャックが母親に騎士になったことを報告するためとそろそろシャルル王国以外にも冒険に出たかった。
ジャックは手紙での報告でいいと言っていたがこういうのは直に言った方がいい。
(親とは会える時に会った方がいい。何が起きるかわからないのだから)
「よし、このままギルドに行くっす」
「まあ、そう急ぐな。そろそろ昼飯の時間だ。店が混む前に先に飯を食っちまおう」
どのみちクエストはズーク王国方面のものとブィンド周辺のものをいくつか選ぶだけだ。そこまで時間はかからないだろう。
今年もあと1月。