第二百三十九話 「それじゃあ、まずはドロシーの装備を見に行くか」
今月第四話。
5月9日 18:00
飯屋 マザーステイスト
「では、ファミリアサンダーバードの新たな仲間を祝して…」
『かんぱ~い!』
皆が一斉に持っていたグラスを掲げ、グラスを合わせた。
「なんだヒロシ今日はジュースか~」
「はい、明日は朝から約束があるんで」
今晩の打ち上げはアルコール類ではなくジュースにしてもらった。
何か言われるかと思ったがそんなこともなく。皆で楽しく飲み食いが出来た。
「なんでぃヒロシはビアが苦手だったの~か」
「実はあまり強くなくて…」
丁度いい機会だと思い正直にお酒が弱い事を皆に打ち明けた。
「そんなこと気にしてたの。飲みたくなかったら飲まなくていいんだから」
「その通り打ち上げはみんなで楽しむものよ」
「どうだ、リタ楽しんでいるか」
「モグモグふぁい」
「プ、アハハ。なんだその顔頬張りすぎだろ」
肉をリスのように口いっぱい貯め込み返事をするリタの顔を見て思わず笑ってしまった。
「ゴクリ、すみませんあまりにも美味しかったのでつい…デス」
「嬉しい事を言ってくれるね。これ妹さんにも持って帰ってあげな」
「いいんデスか!ありがとうございマス」
リタの妹、デルは残念ながら今日はファミリアで留守番中だ。
ケビンさん達が用意してくれた薬で病気の進行は抑えられたがまだ外に出られるほどの体力はない。ジルさんが言うには薬品投与での完治には時間が掛かるらしい。
この世界での医学はそこまで高くない。医者の数も治癒魔導士や教会職員に比べて少ない。
一般的に怪我や状態異常は薬か治癒魔法、病や手術を要する大怪我は医者。そして、教会はある程度の怪我、呪いと状態異常を金品などの代価を支払うことで治してくれる。
(病に対しては医者か教会に頼るしかないため、どちらも高額だ。デルちゃんの病気はかなりの難病らしく、まだあまり研究が進んでいないとのことだ)
リタが言うには長期間での薬品投与治療を続けていくらしい。
5月10日 8:00
チュンチュン
「う~ん」
セロに来てから打ち上げの次の日で頭が痛くなく、気持ちも悪くない朝は初めてだ。
(逆に調子がいいくらいだ)
「さて、今日は朝から行く所があるんだった」
俺は金が入ってあるコイン袋と最低限の持ち物だけで外を出た。
集合場所は大通りの広場。
「あ!やっと来た~」
「珍しいっすねヒロシが最後に来るなんて」
「ごめんごめん。危なく寝過ごしかけたぜ」
ドロシーとジャックは先に着いていた。
「それじゃあ、まずはドロシーの装備を見に行くか」
今月はこれが最終投稿となる予定です。