第二百三十八話 「さて、今日は二人のファミリアへの加入を盛大に祝さなければな」
今月第二話。
ファミリア サンダーバード 執務室
5月9日 10:30
「最終確認だ。君達は本当にいいのだな」
眉間にしわを寄せ真剣な眼差しでドロシーとリタを見つめるケビンさん。
(一応将来に関わる決断だからな)
「はい」
「デス」
「そうか、分かった。それでは正式にドロシー君とリタ君の両名をファミリアサンダーバードに迎えよう」
パチパチ
俺は執務室の隅で拍手をした。二人とも俺がパーティーに加入させ、ファミリアに誘った。その理由で念のため俺も朝から執務室に呼ばれていた。
ドロシーは元からファミリアサンダーバードに加入しようと考えていたそうだ。ここまで伸びたのはタイミングが合わなかったからだ。
リタも今は冒険者業を休業中だが、落ち着いたらサポーターとしてゼロから再スタートするらしい。Hランクからだから結構苦労するかもしれないが仮にも元Eランク、中級冒険者に上がった経験があるので問題ないだろう。
冒険者がファミリやギルドに所属するのは一般的なことだ。だが、どこに所属するのかは当人のキャリアの一つだと考えられる。将来冒険者から転職、もしくは別のギルドに移るとき等に役立つ。
より名声があり規模の大きいギルドは自然に人気がある。最たる例と言えば五大ギルドだ。短期間でも五大ギルドに所属していればその後のキャリアで大きなアドバンテージになりうる。
(いきなり五大ギルドに入れる者は元からかなり優秀だろうけど)
要は履歴書の職歴みたいなものだ。サンダーバードのように規模の小さいファミリアはあまり有利ならない。だからこそケビンさんは二人に確認を取った。
(俺はこのファミリアを気に入っているし所属している皆を見ても全然弱小とは思えないけどな。逆に少数精鋭と言っていい実力者が集まっていると思う)
「それではギルドへの報告と登録等はこちらで済ませとこう。二人は下がっていいぞ。朝早くからありがとう」
『失礼します(マス)』
「ありがとうございますケビンさん」
ドロシーとリタは一礼してから執務室から出た。ドアを閉めたとたん二人が喜んでいる声が漏れ聞こえた。
「…ヒロシ君はいい仲間に出会ったな」
「そうですか。一人は暴走癖がある魔導士ともう一人は元コソ泥ですよ」
俺は肩をすくめて冗談交じりに言った。
(確かにこの世界に来てから味方としての出会いは悪くないかもしれない)
「仲間は大事にしなさい。彼らはきっとかけがえのない存在になる」
その言葉には重みを感じた。きっとケビンさんも自分の仲間達と助け合いながら強くなってきたのだろう。
「さて、今日は二人のファミリアへの加入を盛大に祝さなければな」
ようやく2人がファミリアに加入。