第二十話 「ごほごほ。そうですね。」
やっと装備屋に来ました。これからもう少し買い物回は続きます。
変なおっさんから別れて俺は当初の目的通り装備屋へ向かった。
カランカラン
ドアを開け装備屋アナグラに入る。
「いらっしゃい。お!ヒロシのあんちゃんか。」
装備屋アナグラの店主のおやっさんが店奥のカウンターにいた。顔は髭面のおっさん。肌色は褐色で身長は低いががたいはいい。頭にタオルを巻いてザ職人の見た目だ。種族はドワーフで若い頃は冒険者として各地に行ってたらしい。そのため、冒険者事情にも詳しい。
装備屋アナグラは両脇と中央に装備が置かれている。装備の全てはおやっさんの手作りでこの店はおやっさん一人で切り盛りしている。
「おやっさん。こんにちは。」
俺はカウンターに向かいおやっさんに挨拶した。
「おう、あんちゃん。今日はどうした、おつかいか?」
おやっさんは俺の事をあんちゃんと呼ぶ。
(まあ、坊主とかよりはましか。俺もおやっさんって呼んでるし。)
「いえ。実は今日、冒険者になりまして、これから初クエストをこなしに行くんです。ですから、武器を見に来まして。」
「へー。ついにあんちゃんも冒険者になったか。で、職業は?」
「忍者です。」
「また変わった職業を選んだな。よいしょっと。」
おやっさんは椅子から降りてL字型のカウンターから出てきた。
「獲物は何か好みとかあるか?」
「いえ、あまり。ただ短刀かなとは思ってます。」
「まあ。忍者とかアサシンは短刀やナイフなんかの軽い武器を愛用してるのが多いからな。」
おやっさんはそう言いながら右の棚から何本か持ってきた。
「初心者で扱うならこんなとこか。ランクは全部ブロンズだ。」
この世界、セロの装備にはランクがある。上からゴット、レジェンド、ゴールド、シルバー、ブロンズの5つだ。当然、上のランクの物は耐久性、性能、質が高い。だが、作れる鍛冶師も少なく、使う材料も希少なものが多い。ゴットの装備を作れる鍛冶師は西大陸に10人といないらしい。もちろん、値段もランクが上なほど高い。
今、俺の持ち金は金貨3枚、銀貨10枚、銅貨12枚、鉄貨22枚、石貨21枚。日常品や必需品の為に毎月貰っていたおこずかいを少しずつ貯めていたお金である。正直装備以外にも買わなければいけないものがあるからあまり高い装備は買えないが最低でも武器は必要である。出来ればサブ武器も欲しい。
「値段はどれも銀貨2枚だが、あんちゃんがこれから常連になってくれたら銅貨5枚でいいぜ。ニカッ。」
おやっさんはとびっきりの笑顔で言った。
「おやっさん…。ありがとうございます。」
俺は頭を下げて礼を言った。
「がはは!いいって事よ。」
おやっさんは笑いながら俺の背中を思いっきり叩く。
「で、どれにするんだ。」
「ごほごほ。そうですね。」
俺はむせながらおやっさんが持ってきた3本の短刀を見て悩む。
(この中のどれかが主要武器になるからな。じっくり選ばないと。)
装備は大事。