第二百三十二話 「じゃあ、すぐにロープを下ろすから」
今月第一話。
ブィンド大洞窟 深層
ブィンド大洞窟の奥には宝が眠っている。番人に挑み、財宝を手にせよ。いつしか、冒険者の中で広まった噂。噂は噂でしかないかと思っていたが事実、六体の骨戦士が存在して、宝物は深層の奥に隠されていた。
「…これがブィンド大洞窟に眠る宝か」
「ヒャッホー、これはすごいぜ」
海賊映画などで見るような宝箱には大量の金貨が入っていた。ざっと見積もっても三百枚はある。その外にも本や地図などが入っていた。
「じゃあ、これを俺達九人で山分けだな」
ヴァンレンスの言葉に少し空気がピリついた。ここで誰かが裏切れば金貨を独り占めできる。
「…やめようぜ。連戦で疲れてんだ。それはお互い様だろ」
ジェイは座り込み宝箱の中にある金貨を数え始めた。背中はがら空き、誘っているようには見えない。
「リタ、こういうのはサポーターの仕事じゃねぇのか」
「え、でも…」
リタは申し訳なさそうに宝箱から離れていた。
「はあ~、俺達の事は今回の件で水に流してやる。それにもうチームアップして、一緒に戦った。言わば戦友だ。それともお前は今回もちょろまかすつもりか」
「!そんなこと…もうしません」
リタは涙を流しながら一枚ずつ丁寧に金貨を数えた。
「…これからだぞ」
金貨は合計四百五十枚。一人五十枚で丁度分けられる枚数だった。残りの書物などは当時の地図や図鑑など少し古いものばかりだった。
歴史的財産として価値はあるかもしれないが冒険者にとってはただの紙だ。荷物もかさばるためこの場に置いておくことにした。
(よかった。九で分けられない数だとまた面倒くさいことになりそうだったからな)
「さて、あとはどう上るかだが」
時間をかけて探したが深層から下層に行く道は見つからなかった。
ここは本当に隠された空間だったのだろう。
(しかし、そうなると骨戦士になる前の冒険者達ははどうやってこの空間に入ったのだろうか)
「ロープになるような物はあるか」
お互いロープになりそうな物を持ち出し、結んで長いロープを作った。
「よし、これで一応は大丈夫だろ」
「ドロシー、ヴァンレンスを連れて上に飛んでくれ」
俺は出来たロープをドロシーに渡し、ヴァンレンスを指さした。片腕でロープをよじ登るのはきついだろ。
それに何かあった時のためにもう一人いた方がいい。
(一人ずつ連れて飛ぶのは連戦後のドロシーにはきついだろうしな)
「分かった、任せて」
「おいおい、俺は別に…」
「…今回は甘えさせてもらえ」
ヴァンレンスは断ろうとしていたが相棒のレイルからの助言に渋々ドロシーのホウキにまたがった。
「じゃあ、すぐにロープを下ろすから」
これで長い長い大洞窟での冒険が終わる。
(まだ、帰り道が残っているけどこのメンバーだったらどんな魔物でも倒せそうだ)
帰り道が一番きつい。