第二百三十一話 「結局戦利品は弓だけ…か。しょっぱいわね」
今月第四話。
「ア…ガド…ウ」
最後に残った僧侶の骨戦士を倒した時に礼を言われたような気がした。
(そんなわけな…いよな。気のせいか)
これで深層の番人との闘いは終わった。
「ハアハア」
「もう流石にいねぇよな」
連戦に次ぐ連戦で体力も精神もすでに限界を超えている。皆がその場に座り込んでいた。
(頼むからこれ以上何も出てこないでくれ)
「皆さん大丈夫デス?」
ランプに灯をつけたリタが駆け寄ってきた。
「それはこっちのセリフだ。本当によくやった。すごいぞリタ」
事実リタの奇襲が無ければ魔法は発動していただろう。この戦いのMVPは間違いなくリタだ。
「ガハハ、最後はサポーターに助けられたか。悪かった、正直見くびっていたぜ」
気配を消し、戦場を抜け静かに敵の背後を取った。それは類まれなる危機察知能力と軽快に移動する俊敏性と気配遮断術がなせる技だ。まさにリタにしかできない活躍だったわけだ。
エクストラポケットから自作ポーションを取り出し体力を回復した。
周囲の警戒は続けているが近くにはもう敵意ある魔物の気配はない。
各々が回復と休息を取っている中レイルは倒した骨戦士が着ていた装備などを物色していた。
「おい、何しているんだアレ?」
俺は近くに仰向けで倒れているヴァンレンスに問いかけた。
体力自慢のヴァンレンスも怪我と疲れですぐには動けなさそうだ。
「ん、ああ。戦利品を鑑定しているんだろ」
「戦利品ってあれはおそらく…」
よく見るとジェイの所の槍使い、確か名前はギデオンだったか。ギデオンもレイルと同じく装備を漁っていた。
「装備は元冒険者のものだって言いたいのか」
俺は無言で頷いた。戦った骨戦士は生前おそらく冒険者だった。
「ッフ、お前らどれだけいい子ちゃんなんだ。どうせこれまでも死んだ冒険者の装備を律儀にギルドに届けていたんだろ」
「まあ、俺達も知り合いの装備だったら届けたかもしれねぇ。でもな、大抵はその場で処理するか使えるのならそのまま自分の物にする」
「それに今回のは死んでから骨戦士にまでなったものだ。最低でも数十年は前の物だ。こんなのギルドに届けたってギルドも困るぜ。だから、お前らも自分達が倒した相手の装備見て来いよ」
確かに、死んでから骨戦士になるまで数十年、さらに俺達に倒されるまでに数十年。もう持ち主を特定するのは難しいだろう。これを遺品と見るのかそれともドロップアイテムと思うかは人それぞれかもしれないな。
(それなら、使えるものは使わせてもらった方がいいか)
「どうだ、ジャック重戦士の鎧は」
「ダメっす全部錆びて使い物にならないっす」
「そうか」
俺達も自分達が倒した骨戦士の重戦士と弓使いが落とした装備を漁る事にした。
「結局戦利品は弓だけ…か。しょっぱいわね」
使えそうだったのは弓使いが持っていた付与魔法が刻まれた弓のみだった。
(まあ、まだ大物が残っているけどな。何ならそっちが本命だ)
ブィンド大洞窟の連戦終了。