第二百三十話 「離れろリタ!」
今月第二話。
「魔法を使う忍者なんて聞いたことがねぇ。とんでもないキリ札を隠してたな!」
「ッフ、それはお互い様だ。なんだその腕は」
これで前衛二体は倒せた。残りの一体もジェイ達が応戦中だ。作戦通り次の狙いは広範囲魔法を詠唱している魔導士だ。
魔法陣を見るにもうすぐ発動しそうな感じだ。
ギュン
魔導士に向けて走っていた俺に弓使いの矢が風のカーテンを突き抜け襲ってきた。
「嘘でしょ!」
風によってほぼ無力化したと認識していた為油断していた。
(やばい、避けられねぇ)
ザシュ
「ウ」
とっさに急所は外したが左太ももに矢が刺さった。俺は体勢を崩してその場に転がる。
(このままじゃあ。魔法が発動してしまう)
しかし、ここにはもう一人素早さ自慢の奴がいる。
レイル・ランドローバーは一直線に魔導士の方へ走っていた。
ガン
「もう邪魔はさせないっす」
ジャックが弓使いの動きを止めた。これで邪魔はもういないはずだ。魔法発動する前に少しでも魔導士の動きを阻害できれば魔法は止まるはずだ。
カン
「!」
レイルの爪が魔導士に届く前に僧侶の杖に阻まれた。
「な!」
ガンッカカン
巧みな杖捌きに阻まれ、レイルは数歩後退させられる。
(あの僧侶近接戦闘も出来たのか)
後衛職が自分を守るために近接戦闘術を習得していることは珍しくはない。ただし、この場においては最悪だ。
僧侶は魔導士の邪魔にならないよう杖を棒のように回している。攻撃の為ではなく防衛のための技。
死後、骨戦士になった今ではかつての仲間である認識は無いはずなのに魔導士を守るのは敵である俺達を倒すためなのだろう。
(なんて皮肉なんだろうな)
レイルが僧侶に足止めされ、ジェイ達三人はやっと槍使いを倒したところ。ドロシーとジャックは狩人を止めている。ヴァンレンスは連戦と片腕の傷でこれ以上は動けそうにない。
俺の脚じゃあもう追いつかない。何か。誰かいないか。あともう一手あれば足りるんだ。
エクストラポケットから弓と矢を取り出す。射角的に難しいが何もしないよりはいい。
その時、魔導士の背後から迫るものが見えた。
「!」
ザシュ
魔導士の核にひびが入る。激闘の中で誰にも気づかれず、こっそりと着実にその者は敵の背後を狙っていた。
(まったく。確かに出来る事をしろとは言ったがそこまで無茶しろとは言ってねぇぞ)
突然の急所への攻撃に魔導士の詠唱は止まり、魔法は解除された。
頭上に広がっていた魔法陣は消え、再び辺りが闇に包まれる。しかし、ひび割れの紫の核が印となった。
「グガガ」
短刀を突き刺したまま魔導士の背中に引っ付いたリタに向け、ゼロ距離で魔法を放とうとする魔導士。
『させねえ!』
「離れろリタ!」
僧侶の杖を掴み、力任せに真後ろに投げ飛ばしたレイルとやっと魔導士を狙える場所に行き着いた俺。レイルの爪と俺の弓が骨魔導士の核を砕いた。
大筋はここで戦闘終了です。