第二百二十九話 「まったくだ」
今月第一話。
「ヒロシ、もういいの?」
「ああ、二人とも時間稼ぎありがとうな」
炎の壁が消え、六体の骨戦士が現れる。
「作戦は決まったんすよね」
「おう、俺達は目の前にいる重戦士とその後ろの弓使いを相手する事になった」
「…ヒロシ、分かっていると思うけどあの魔法すごくやばいわ」
刻一刻と魔法発動までの時間が迫っている。効果範囲的にもそんなに猶予はなさそうだ。
「ああ、だからこそのチームアップだ。今回は一度で倒す。ジャックは重戦士を俺の準備が整うまで相手してくれ。ドロシーは魔法で弓使いの動きを止めてくれ」
『了解っす(よ)』
(ここが正念場だ。絶対に生きて帰る)
ガン、カン、ドン
「そう簡単には倒れないっすよ!」
恐らく重戦士の方がジャックよりレベルが高いだろう。生前だったら技術で吹っ飛ばされていたかもしれない。ただし、骨戦士になった後はアビリティとスキルは残るが記憶は残らない。
それでもあの重戦士の攻撃を何度も受け止められるジャックの防御力は素直にすごいと思う。
「風魔法ウィンドカーテン」
ドロシーの風魔法で矢を防げば弓使いはほとんど無力化できる。
ゴキゴキ
レイルは怪我の具合を確かめるように少し体を動かしていた。
「レイル、調子は?」
「あばら数本…問題ない」
「ッフ、それはよかった。いつもので行くぞ。あの剣士は絶対に倒す」
ドシ
「痛てて、なんだよジェイ」
「たく、いつまで寝てやがる。〝集中″しろ戦闘だ。ランプも魔法」
「う、うん」
各々のパーティーがそれぞれの戦い方で相手と対峙している。
「よし、ジャック。準備完了だ」
俺の合図でジャックは後ろに飛び、重戦士から距離を置いた。
ダッダン
「痛って~」
「すまねえジャック背中借りたぜ」
ジャックの背中を足場にして高く飛ぶ。
重戦士の上空から
「釣りはいらねぇ、全弾喰らいな!ライトボール連弾」
アンデット族の弱点属性の一つ聖属性。それは光属性の派生属性の一つだ。故に光魔法にも多少ながら聖属性が付与されている。上級になるとかなり浄化効果高い光魔法もあるらしい。
それはかなり少量だが初級魔法のライトボールにも付いている。
(少なくても連発すれば蓄積されるはずだ)
練りに練った魔素を光魔法に使い、頭上から重装備諸共ライトボールを放っていく。白球が重戦士を浄化していくのが見える。着地してからもライトボールを止めず、連弾を続けた。
「グ、ジャアー」
骨重戦士は装備を残し、灰となっていく。
「ハアハア」
(よし、このまま魔導士を倒せば魔法は止められるはずだ)
「不格好!」
横目に巨大な拳に吹き飛ばれる大剣使いが見えた。
(巨人の腕並みにでかいじゃねえか)
「これで止めだ」
レイルはそのヴァンレンスの巨大な左腕を伝い走り、そのまま立ち上がった剣士の核を砕いた。
「今出たか、クリティカルヒット。お前本当に運ねぇな」
「まったくだ」
レイル・ランドローバーの種族であるジャガーマンの特性にクリティカルヒットがある。効果は低確率で数倍のダメージが出る攻撃が入る。いつどのタイミングで出るかはランダムらしい。
骨戦士との戦闘はもう少し続きます。