外伝4 悩みあれば満足顔あり
主人公が助けたおっさんはシャルル王国現国王でした。
「陛下。」
ゆっくりとタキシード姿の男性がベンチに座っている黒のローブを着たぽっちゃり中年に近づく。
「ヨウか。見つかってしまったな。」
陛下と呼ばれた中年はバツが悪そうな顔をしている。
「あの青年は?」
ヨウと呼ばれたタキシード姿の男性は先ほどまでベンチに座っていた青年が駆けて行った方に目をやりながら中年に聞いた。
「ああ、彼は通りすがりの冒険者らしい。…やさしい青年だったよ。」
中年も青年が走っていった方を見ながら言った。
「そうですか。」
「まったく。いきなり、お忍びで買い物したいなど勝手が過ぎます。」
ヨウは中年に目を移し困り顔で言う。
「ははは、どうせお前の事だ。護衛を私に付けさせていたのだろう。」
中年はベンチから立ち上がる。ヨウはすかさず中年をさり気なく支える。
「もちろんです。陛下に万が一のことがあってはいけません。」
「王女様のお2方もたまに城から抜けて城下に出かけてるようですし。」
「はっはは。それは私に似たのかもしれんな。」
「笑い事ではありません。お2方に何かあっては困ります。」
ヨウは顔を中年に近づけながら言った。
「わかった、わかった。城に帰ったら私からも注意しよう。」
中年とヨウ、主従関係があるにもかかわらず2人は自然に接している。
当然ヨウは中年に仕えているし執事として振舞っている。しかし、2人の間には彼らにしか分からない信頼関係があった。それは、ヨウが幼少期から中年に仕えているからだろう。
中年とヨウはしばらく歩く。たどり着いたのは人気がない裏通り。そこに馬車がとめられていた。チンピラが盗みそうなものだが、近づけば隠れている見張りがすかさず制圧する。中年は馬車に乗り込みヨウも乗り手として御者席へ乗る。
「それで、収穫はあったんですか。」
ヨウは馬車をあまり揺れず、主が心地よいと思う速度で走らせながら中年に聞く。
「ああ、あったよ。最近の民の暮らしが知れた事は大きいな。報告書より自分で出掛ける方がより良く理解できる。後は我が国のオリンはおいしい事。金貨で買うとおつりが大変な事とかな。あの店主には悪い事をした。我が国の鉄貨や石貨の量を増やした方がいいかもしれんな。」
中年はオリンをほおばり。そして、満足そうに話した。
「それは何よりです。」
満足顔の主を見てヨウは馬車を走らせ続けた。
2人が馬車で向かった場所はブィンドの北にある豪邸。ブィンドの北には貴族や富豪たちが住む高級住宅地がある。その中でも特に立派、豪華な邸宅にはブィンドとその周りの村、集落を治めている貴族が暮らしている。
「いやはっは。久しぶりです。兄上いや陛下。」
豪邸の主、セルジル・シャルル公爵は十数の使用人と共に中年と執事を迎える。
「セルジル。お前も変わりないようで何よりだ。はっは。」
中年、シャルル王国現国王、オボルネ・シャルルも弟の迎えに答えた。
「ヨウも元気だったか。」
セルジルはオボルネの後ろで立っているヨウに聞く。
「はい。セルジル様もご健勝で何よりです。」
ヨウはお辞儀して答えた。
「まだ、会議には早いが始めるか。」
オボルネは豪邸の奥に進みながら言う。
「用意はすでにできていますよ。」
そう言ってセルジルもオボルネに付いていく。その3歩後にヨウが続く。
執事と貴族の会話は思ったより難しいかった。なにか違うなと思うところがあったらぜひコメントください。