第二百二十八話 「おい、いつまで寝てるギデオン。ランプも早く戦闘準備しろ」
今月最終話。
魔導士骨戦士の詠唱と共に魔法陣が広がっていく。ゆっくり戦う時間はなさそうだ。不幸中の幸いか魔法陣の光のおかげで周囲は光源が無くてもある程度わかるようにはなった。
「やばい、やばいよ」
「ヒロシ・タナカ続けろ」
「あ、ああ。見ての通りここからは時間との勝負になった。三チームで相手の前、後衛一体ずつを分担する」
狼狽えているジェイをよそに俺とヴァンレンスは作戦を話し合った。
「お前ら何考えてんだ。こんなのもう終わりだよ。早く逃げようぜ」
「おい、グダグダ言ってんじゃねぇ!お前だって状況は読めてんだろ!逃げ場がどこにある!」
ヴァンレンスはジェイの胸ぐらを掴み、睨みつけた。
「…」
ジェイはヴァンレンスの威圧で黙り込んだ。
「…ここからは時間との勝負つっただろ。進めるぞ一番早く前衛を倒したチームが魔導士を止める。後は臨機応変に動くシンプルな作戦だ。さて、どいつを相手にする?先に選んでいいぜ」
「ハ、それはありがたいな。俺達は当然剣士だ。この腕の借りは倍返しにしないとな」
「じゃあ、うちは左の重戦士と狩人を担当しよう」
(狩人の射的が一番邪魔になりそうだ。ジャックの盾なら防げる)
「ちょ、ちょっと待てよ。じゃあ俺達は…」
威圧で黙り込み、呆けていたジェイがようやく息を吹き返した。残りの右側の槍使いを見つめて何かを言いたそうにこちらを見た。
(呆けていても話は聞いていたんだな、こいつ)
「嫌だったら重戦士と交換するか。その場合狩人も相手してもらわないといけないけど」
「う、わかった、やればいいんだろやれば」
「それと三人の三チームって言っていたがまさかサポーターも数に入れているのか」
(こいつ小さいことは気にするな)
「ああ、リタは人数的にヴァンレンスのチームに入ってもらう」
「お前…」
「時間がねぇ。俺達は別に邪魔さえしなければ構わねぇよ」
ジェイの言葉を遮り、ヴァンレンスは岩陰から出てきたリタを見つめる。
「まあ、そう言うな。こいつは結構優秀だぜ」
俺はリタの手を引っ張りヴァンレンスの前まで連れて行った。
「いいか、リタ。出来る事をしろ。冒険者でもサポーターでも自分ができる事を認識している者は優秀だ」
リタの両肩に手を置き目線を合わせて、まっすぐ目を見て話した。
リタは何も言わなかったが強く頷いてくれた。
「…分かった。作戦はこれで全部だな」
ジェイは自分達のパーティーに戻って行った。
「おい、いつまで寝てるギデオン。ランプも早く戦闘準備しろ」
まだ気絶から起きない仲間を蹴り上げ、叩き起こした。
(ああいう奴がしぶとく生き残るんだよな)
イラストも含めたら4話なんで今月は許してください。