第二百二十七話 「仲間ごと…かよ」
今月第二話。
「話し合いをするのはいいがその前に」
シュ
俺は弓兵からの矢を避けた。幸い魔導士の方は魔素を練っている最中なのかまだ魔法を飛ばしてこない。
「少し場を整える必要があるな。ジャック、ドロシー十分いや、五分相手を止められるか」
「分かったわ」
「了解っす」
二人ともすぐさま動く、ドロシーは炎の壁で前衛との距離を保ちジャックはコールで注意を引いた。
弱点ではないがアンデット族は炎属性を苦手とするものが多い。
「さて、話があるんだろヴァンレンス」
「ああ、オオミミズの時といい落下時の時もだが、俺はもう二度お前に助けられている。だから、お前の作戦だったら信じられる」
「…」
(作戦…ね。信用されてもこの状況じゃあ、大したものは用意できるないがな)
「すごくシンプルなものだぞ。誰でも考えられる」
「しょ、勝算は?」
ジェイが恐る恐る聞いてきた。
「てめぇらの腕次第だ」
「ガハハ、十分だ。言え」
「その前に聞かせろ…お前は戦えるのか?」
片腕を失って、俺が渡した造血剤で顔色は多少良くなったが普通はまともに動けないような大怪我だ。
「任せろ、死んでもあの大剣野郎は倒す」
ヴァンレンスは残った左腕で胸を強く叩いてみせた。戦場でアドレナリンが出すぎてハイになっているから麻痺してまだ動けているのだろう。しかし、興奮状態も長くは続かないはずだ。
(それでもいい。ヴァンレンスには少なくても一体は相手してもらわないと厳しい)
「作戦はシンプルだ。即席のチームアップにコンビネーションは邪魔になる。敵も前衛三、後衛三でバランスよく分かれている。幸いなことにこちらも三チーム。三対三対三の三チームに分かれる」
俺はヴァンレンスとジェイに手早く作戦を伝えた。
「三対三対三か」
「各チームが前衛一人、後衛一人を相手する」
「お、おーい。あ、あれ」
ジェイの所にいる魔導士が天井を指さしている。
「な、なんだあれは」
周囲が先ほどより明るくなったと思えば天井には巨大な魔法陣が浮かび上がっていた。色は赤、属性はおそらく炎系統。
おかげで周囲の状況が最低限見えるようにはなった。
(千里眼発動)
(このサイズの魔法陣はやばい。あの魔導士何もしてこないと思ったらこれのために魔素を練っていたのか)
「嘘だろ。この規模…魔導士一人で発動できるものなのか」
恐らく効果範囲は深層全域。いくら閉鎖空間とはいえかなりの広さがあるはずだ。
「なるほど、一人じゃない二人分の魔素だ」
「!そうか、似たようなことついさっき見たな」
魔素は同属性の魔法適正を持ってい者同士なら分け与えられる、ドロシーにジェイの魔導士が与えたように魔導士の隣にいる僧侶が魔素を与えている。
「仲間ごと…かよ」
骨戦士になった以上生前の記憶はないだろう。同族感情はあるかもしれないが仲間意識はないかもしれない。だからこそできる巨大魔法。
(巨大魔法陣に詠唱までしてやがる。これはまともな魔法じゃないな。発動する前に片付ける!)
僧侶は最低でも炎には適性を持っています。通常の炎の魔法を使うことは出来ますが魔素を与えることで敵を葬ることを選択したようです。