第二百二十五話 「ガハハ、これはいい。大剣使いと同等のが何体もいるってか」
今月第五話。
「な!ウアアー」
深層の大空間にヴァンレンスの野太い悲鳴が響いた。片腕が切り飛ばされたのだ、我慢出来る痛みではない。
(それよりも今は…)
動く骨は痛みでその場に蹲っているヴァンレンスに止めを刺そうと大剣を振り下ろそうとしていた。
突然の状況で誰一人動けていない。
(クソ、間に合え、電光石火!)
俺はボーン兵の弱点である左胸部分にある紫色の核を狙う。
ヴァンレンスに大剣が届く前に仕留める。
ガキン
「!」
核に届く前に大剣で防がれた。
(嘘だろ、あの一瞬で防御に移ったのかよ。いや、だったらこのまま押し切る)
双剣に力を籠め、全力で斬り飛ばした。大剣のボーン兵を五、六メートル離した。
「ハア、ハア」
真横に居るヴァンレンスの様子を見る。出血を抑えるので精一杯のようだ。
(ここで魔素の事は気にしていられないな)
「ドロシー、治癒魔法をかけてやれ」
「え、ええ」
「ハア、いや、…いい。ポーションなら…持ってる」
ヴァンレンスは手を出して、ドロシーを止め腰にある鞄からポーションを取り出し一気に飲み干した。
「ウ、ハア、ハア」
傷口がみるみる治っていく。これは相当上等なポーションを使ったな。
ポーションは傷を治してくれるが失った血までは取り戻してくれない。その証拠にヴァンレンスの顔色は青白く、今にでも貧血で倒れそうだった。
「ほらよ」
俺はエクストラポケットから造血剤を取り出し、ヴァンレンスに渡した。
ちなみに造血剤は薬を作っている時に偶々できた代物だ。
「…なんだこれは」
「造血剤だ。お前に今ぶっ倒れられるわけにはいかないからな。それでも飲んどけ」
「な、なんだよさっきのは…あいつただのボーン兵じゃないのか!」
やっと状況に頭が追いついたのか。ジェイが大声で叫んだ。
「ああ、あれは…」
「骨戦士だ」
俺が言い切る前にヴァンレンスが答えを言った。
骨戦士はボーン兵が長年彷徨い続け、レベルを上げた魔物だ。見た目の変化はほとんどないがボーン兵の上位種であり、強さも格段に上がっている。討伐ランクもボーン兵がEであるのに対し、骨戦士はDランクに位置する。
ランクではオオミミズと同等だが個人的には装備を身にまとった骨戦士の方が戦いにくい。
「ッチ、ぞろぞろと出て来たぞ」
暗闇の奥から装備を身に纏った骨戦士が次々と現れた。
「ガハハ、これはいい。大剣使いと同等のが何体もいるってか」
次は骨戦士との戦闘。